2015年3月16日月曜日

高速道路開通で東紀州のスポーツ交流人口が増加

 紀南新聞 onlineが、高速道路紀勢自動車道とそれに接続する自動車専用道路「熊野尾鷲道路」の開通によって、スポーツ交流人口が増加したと報じています。(3月15日付け。リンクはこちら
 紀勢自動車道は、ちょうど今から一年前に当たる平成26年3月20日に、最後の工事区間であった紀伊長島ICと海山ICの間が開通しました。これによって東紀州地域(三重県南部の、尾鷲市、熊野市、紀北町、御浜町、紀宝町の2市3町からなる地域)の自動車交通の利便性は一挙に向上することになったのです。

 たとえば、三重県最南の市である熊野市は、高規格道路(高速道路+自動車専用道路の意味)がなかったころの自動車利用による「3時間圏域」は、せいぜい亀山市あたりまででした。
 しかし、開通後は3時間圏域は一気に愛知県西部(西尾張)のほぼ全域、滋賀県の南部のほぼ全域にまで広がり、観光交流客誘客の広域化や物流の高速化が大きく期待できる状況になったのです。
 高規格道路の具体的な効果については、国土交通省紀勢国道事務所と、三重県、東紀州の2市3町、そしてNEXCO中日本で構成する「東紀州地域高速道路整備効果検討会」なる組織が定期的に経過報告をリリースしていますが、紀南新聞が伝えている直近の3月3日の公表分は、スポーツ交流による地域活性化・地域間連携、鮮魚の輸送時間の短縮化、地域住民のライフスタイル変化の3項目について、顕著なプラス効果が出ていることを検証しています。



 この報告をまとめると次のようになります。
1.スポーツ交流による地域活性化・地域間連携
・高速道路の延伸に伴い、移動時間が大幅に短縮したこともあり、熊野市のスポーツ交流宿泊者数は大きく増加。
・全国の高校野球の強豪校を招いて開催されている「練習試合 in熊野」では、地域間連携により開催時の宿泊者数、参加校が約8割増加。
2.都市部でより新鮮な魚を提供
・所要時間の短縮により鮮魚の仕入れの時間が変化し、都市部の店でより鮮度の高い魚を提供。
3.地域住民のライフスタイルの変化
・高速道路の開通により約5割の住民が「生活に変化があった」「外出する回数が増加した」と回答。
・実感している効果の程度として約7割が「予想よりも効果があった」と回答。

 このうち、2番目の鮮魚の輸送時間の短縮は、まあ、もっともストレートな整備効果なので納得なのですが、最初のスポーツ交流と、3番目のライフスタイルの変化には注目してみたいと思います。

東紀州地域高速道路整備効果検討会資料より
 熊野市のスポーツ交流とは、熊野市が、年平均気温が17℃という温暖な気候を利用して、大学や高校の運動部の合宿を誘致していることを指します。
 人口2万人足らずの熊野市には、市役所に「観光スポーツ交流課」というセクションがあるほか、収容人員6500人の硬式野球場「熊野スタジアム」や、テニスコート、多目的芝生広場、トレーニングセンターなどを擁する山崎運動公園などの施設が整えられています。

 特にソフトボールについては30年以上もキャンプや合宿が行われてきており、ソフトの世界では熊野市は一種の聖地となっています。

 もちろんソフトボールの他にも、野球、サッカー、ラグビー、テニス、バレーボールなど多様な合宿を受け入れており、市内の民宿やホテルなどの宿泊業者、弁当業者なども交えて、いわば官民挙げてスポーツ交流を支援する体制ができており、熊野市のスポーツ合宿による宿泊者数は年間2万人以上にものぼります。

 さて、今回の東紀州地域高速道路整備効果検討会の報告によれば、熊野市では毎年11月に全国の高校野球の強豪校を招いて「練習試合in熊野」を開催しており、平成24年には9校が参加、586名が宿泊しました。
 しかし高規格道路の開通で交通アクセスが向上したことに加え、隣接する尾鷲市への移動時間も大幅に短縮したことから尾鷲市内にある野球場も使用することができるようになり、開催規模を拡大することができたことから、平成26年には参加16校、宿泊者1086人と、2年前に比べて8割増加しました。
 これは非常に大きな効果であり、想定の範囲内だったかどうかはともかく、たいへん喜ばしいことかと思います。

 3つ目の地域住民への影響も興味深いものです。
 国土交通省紀勢国道事務所が、東紀州2市3町の住民にWEB調査を行ったところ、高速道路開通後実感している効果として
・山道を走ることがなくなり、運転が楽になった。
・中部圏、関西圏、津市、松阪市等への時間が短縮し、行く回数が増加した。
・周辺の市町村(紀北町、尾鷲市、熊野市、御浜町、紀宝町)への時間が短縮し、行く回数が増加した。
 などの回答が上位を占めています。
 そして、実感している効果の程度については、「予想よりもとても効果があった」が40%、「予想よりもやや効果があった」が30%で、全体の7割が整備効果について肯定的な評価をしています。

 そもそも、高規格道路の主目的は、全国平均よりも降雨量が多い地域であり、急峻な峠道も多い国道が通行止めになることも多く、救急搬送や災害時などに不都合が生じることを解消することでした。
 もちろん、物流の効率化による産業活性化も大きな目的ではあるのですが、ある種、副次的な整備目的であった「運転のしやすさ」などは、高齢化が進んでいる地域性もあって、かなり多くの住民が肯定的に捉えているのだと考えられます。

 しかし、このことが手放しで喜べないのは、地域住民の移動利便性が向上するということは、それを逆手にとって、住民が他の地域に就職、就業しやすくなり、結果的に転出してしまうのに結びつきかねないことです。
 これは、わしのように東紀州に単身赴任していた者にとっても同じで、もしもわしがいたころに高規格道路が今のように整備されていたら、片道1時間30分で通勤することが可能だったわけで、東紀州にアパートを借り、家具や生活道具を買いそろえて、という単身赴任の二重生活はおそらく選択しなかったかもしれません。
 幸か不幸か、今までの東紀州は、交通事情が悪かったゆえに官庁や大企業では単身赴任や家族赴任が避けられず、これらニューカマーによる消費が現地経済に寄与していた面は少なくありません。
 それがなくなれば、人口の流動化も含めた、いわゆる「ストロー現象」が顕在化することになります。この点は留意が必要で、魅力ある地域づくりと、地元での産業や就労先の創造のための努力は引き続き重要であると思います。

■国土交通省紀勢国道事務所  http://www.cbr.mlit.go.jp/kisei/

■熊野市観光協会 スポーツ特集  
 http://kumanoshi-kankoukyoukai.info/sports/index.html#kumanoshi

0 件のコメント: