2015年3月4日水曜日

産業支援機関なんていらない

 ある老舗料亭の女将のブログが、地域産業支援業界でちょっとした話題になっています。
 岐阜県大垣市にある老舗料亭の女将が、公益財団法人岐阜県産業経済支援センターと思われる「岐阜県の公的な中小企業支援機関」を訪問して経営相談した顛末がつづられているのです。
 女将はかねてから料亭での外国人客向けの新規事業を構想しており、それ広める方策を相談したのですが、岐阜県センターの担当者からの回答は「補助金を申請してはどうか」という的外れなものでした。「私はお金がほしくてここに来たのではありません。」と席を立ったとのことで、ブログの最後は、
 事業主としては確かにお金も助成していただきたい。でも本音は毎月の売り上げを上げたいのです。いままだ、地方ではアベノミクスの恩恵は感じられません。助成のお金が飛び交うだけでこれで世の中良くなるのでしょうか。なんて、少し考えてみました。
 と締めくくられています。
 このような、公的中小企業支援機関による誤った対応、まずい対応は、表面に出てこないだけで、実は相当数あると思います。しかし、中小企業はどうしても県や県の外郭団体といった「権力」に対しては、後々のことも考えて、低姿勢にならざるを得ません。いわば泣き寝入りが多い中で、経営者として非常に率直で、勇気がある問題提起だと思います。
 このような真摯な問いかけに対して、関係者が皆で前向きに議論し、より良い解決策を考えないと、物事は前に進まないでしょう。(ブログへのリンクはこちらです)



 わしが思うに、この問題の根本は、岐阜県の外郭団体としての公益財団法人岐阜県産業経済支援センターのあり方です。このような外郭団体は岐阜県だけでなく全国47のすべての都道府県にあって、どこもほぼ似たような組織構成、似たような業務を行っているので、これは非常に根が深い問題なのです。

 商工業者でも、各都道府県に外郭団体(公的中小企業支援機関)があることは知らない人がたくさんいます。ましてや一般の住民にはほとんど知られていないでしょう。
 これらの機関は、多くが昭和40年代に、中小企業に向けた「設備の貸し付け」(リースですね)「資金の貸し付け」そして「下請け仕事の斡旋」を行うために設立されたものです。
 この当時は中小企業は経済的な弱者と定義されており、資金力や信用力も不十分だったので、リース会社や銀行に代わって公的機関が業務を行うべきとされたのです。
 もちろん、その当時から各市町村には商工会議所や商工会はあったのですが、これらは記帳の指導や労務管理、少額資金貸付(マル経融資)といった経営支援が中心で、リースや設備投資の資金貸し付けといった仕事は、全県域を広域的にカバーするため、県が外郭団体を設立したのです。

 その後、中小企業に対してはさまざまな支援制度が強化されてきました。銀行の融資も以前と比べてずっと借りやすくなったと言われていますし、民間のリース会社も充実してきました。本来なら、これらの環境変化によって、公的機関はその役割を終えるのが順当でした。
 しかしその一方で、中小企業の経営課題が専門化、高度化、複雑化していきます。たとえばIT技術が広まってきても、一商工会議所ではなかなか普及や活用まで指導ができません。そのような役割は、運営基盤が強い(全県レベルの)公的機関が行うべきだ、という議論になり、実際に国(経済産業省)も、公的機関に補助金を出し、公的機関のスキームを使って普及させるような手法をよく取るようになります。
 ほかにもベンチャー支援とか創業支援、知財活用、地域資源活用ビジネスの普及、中小企業の海外進出支援などなど、その時々の国の中小企業施策(ブームというべきでしょう)は、公的機関を通じて具体的な支援が行われるようになります。

 わしの推測ですが、料亭の女将が経営相談した、その対応者も、「よろず支援拠点」事業という、中小企業からのさまざまな相談にワンストップで対応する趣旨の事業が国から公的機関に委託されているのですが、その事業の一環で行っているものだと思います。(この、よろず支援拠点という事業が、なんとも摩訶不思議な事業なので、以前その不自然さをこのブログにも書きました。)

 このよろず支援拠点は、国から運営費をもらっているので、国からは成果も厳しく求められています。ただ、中小企業支援の「成果」はなかなかすぐには出てくるものではないので、どうしても目先のアウトプット指標、つまり、「中小企業からの相談件数」とか「補助金申請の支援件数」などを設定しがちになります。
 これもわしの推測ですが、岐阜県センターの担当者は、料亭女将の相談を受けて、あっ、これは補助金に申請させたら成果が稼げる、と心の中で思ったのでしょう。これは立場を変えてみると無理からぬことです。
 
 しかし、一番の問題は、やはり公的機関という組織は、もうとっくに賞味期限が切れているということです。
 県や市町村から出損を受けて設立され、運営予算も県や国の補助金と受託事業費で成り立っている。
 しかも理事長など幹部職員はほとんどが県庁からの天下りなので、どうしても、モノ、カネ、ヒト、情報を握られている県庁を向いて仕事をせざるを得ない。公的機関とは、このような制度的な限界があるのです。
 岐阜がどうだかは不分明ですが、多くの県の公的機関は、中小企業からの相談に対応する担当職員すら自前ではありません。経営課題が高度化しているので、外部の民間コンサルタントや士業などの専門家、実務経験豊富な企業OBなどを嘱託で雇って、彼らを相談員やアドバイザーにしているのです。
 そもそも、公的機関以外に民間でも優秀なコンサルタント業は増えてきており、いくら国や県が「よろず支援拠点」のようなお金を交付しても、これはもう公的機関の延命でしかありません。

 一番いいのは、歴史的な役割を終えつつある公的機関は解散することです。天下りポストが減る県庁OB以外に特に困る人がいるとも思えません。
 言うまでもなく、昨今の国や地方自治体の最大の問題は、財政難と公債費(借金)残高の激増です。客観的に見て財政破綻寸前ですし、自治体では金利上昇などで実際に破たんするところもこれから増えてくるでしょう。
 行政改革は急務であって、その意味で、一番無駄といえる、「民間サービスで代替できる外郭団体」は早急に廃止すべきです。
 

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

一度、事実を確認しに現場へお越しください。