2015年3月6日金曜日

公務員を結婚させれば出生率は上がるが

 「すごい!鳥取市」婚活サポートセンター が、男性の参加者を公務員に限定した婚活イベントを3月に企画したものの、外部からの批判が相次いだことを受けて中止を決定したことが大きく報じられています。


 「すごい!鳥取市」婚活サポートセンターは、鳥取市が民間企業と共同で運営している組織で、47都道府県の県庁所在地で一番人口が少ない鳥取市が、人口減少・少子化・移住定住(促進)などの課題を抱える市のため、そして、市に住む人のしあわせな未来のため、行政・民間・市民を巻き込んで マジメに楽しく男女の出会いの場を提供する目的とのこと。キャッチフレーズは「鳥取市の本気の婚活プロジェクト」だそうです。

 ところで、この「すごい」というのは、どうやら鳥取市が「おらがまちはこんなにスゴイんだぞ!」と自称しているキャッチコピーのようです。しかし逆説的なギャグにもなっていないこのあたりのセンスの痛さが、どうもこの鳥取市の決して明るくない先行きを暗示させるものがあるのですが、これはともかく。



 問題となった婚活イベントは、登録した会員(当然ながら独身の男女)が対象の有料制で、男性のみ参加資格が「公務員」に限定されているというもの。
 当初は男女各20人の参加を予定していましたが、女性側の参加希望が殺到し、過去最多の79人もの応募があったとのこと。男性は、県庁職員や市役所職員、教員、警察官、消防士などが応募していたそうです。
 「すごい!鳥取市」婚活サポートセンターの担当課で、約500万円の運営費も補助している鳥取市企画調整課は、「企画の段階で批判も想定したが、安定を望む女性会員の声を受けて開催に踏み切った。」と説明しており、今後も公務員に限らず看護師や保育士など、職業を限定したイベントの開催を検討しているとのことです。(平成27年3月5日付け 産経WEST より)

 このように参加者をセグメントした婚活パーティーは、民間のマッチングサービス事業者なら常識であると言ってよいでしょう。医師限定、弁護士限定、年収1千万円以上の経営者限定、など、ハードルを設定したイベントはいたるところで実施されています。公務員に限定することもおかしくはありませんし、探せばそのようなイベントもきっと見つかるでしょう。
 市役所も言うように、そもそもこの企画は女性会員の声を実現したもので、安定した職業の伴侶へのニーズが高いのは、良い悪いは別として事実なので、本気の会員サービスを標榜する以上、この企画は必然とも言えたわけです。

 鳥取市に限らず、なぜ全国の地方都市や町村が、急にこぞって婚活だの子育て支援だのを言い出したかといえば、例の「消滅可能性市町村」のキャンペーンが大きいわけですが、それによると、このような仮説(ストーリー)が成り立つからです。

1)出生率は下がっており、しかも出産適齢女性の人口も減っているので、日本の少子化が進んでいる。(これは事実)

2)しかしつぶさに見ると、結婚している女性の出産数はそれほど大きく減っていない。出生数を下げているのは結婚しない、したがって全く出産しない女性の割合が高まっている理由が大きい。(これも事実)

3)なので、結婚する女性を(もちろん相手の男性も)増やせば、婚姻中の出産数はさほど変わっていないので、出生数の減少にはある程度歯止めがかかるはずである。

4)若い男女が結婚しない理由はいくつかあるが、一つは地方には安定した、給料が高い仕事が少なく、経済的に結婚が難しいことがある。なので、都会から企業を誘致して働く場所を確保しなくてはいけない。

5)さらに、女性も社会進出を進めて女性にもバリバリ働いてもらうことで、世帯(夫婦)としての総所得を上げなくてはいけない。

6)この場合、託児施設の整備などのハード面、育児休暇の促進などのソフト面の両方からの子育て環境の整備が行政にとって急務となる。

7)また、最近は仕事が忙しくて独身男女が出会う機会も少ないので、行政は婚活も支援すべきである。

 というようなものかと思います。
 現実問題として、地方都市には大企業も少なく、安定した職業は、公務員、金融機関、JAなどが中心で、他にはその地方で名門とか大手といわれる、建設会社や製材会社、製造業などがごく少数あるくらいです。
 女性としては、世間の建前や掛け声はともかく、まだまだ専業主婦の願望も強く、できれば安定した職業の伴侶を得たいと考えるのは合理的な判断です。伴侶選びの大きなポイントが安定性だとすれば、今回の婚活パーティーは実際に結婚に至る可能性を高め、ひいては少子化を食い止める一助になった可能性がきわめて大きかったものと思われます。

 外部から批判とか妬みの声があったとしても、結果的に「すごい!鳥取市」婚活サポートセンターは、その大きな社会的使命を実現する機会を一つ失ったと考えざるを得ません。

 もっとも、以上の議論は理詰めの議論で、「すごい!鳥取市」婚活サポートセンターも一種の「役所」である以上、住民の声を無視して事業を押し通すことは得策ではなかったでしょう。わしにはその判断もやむを得ないものがあったと思います。
 仮に正論で押し通したとしても、声が大きい住民をバックにしたマスコミや市議会議員が、重箱の隅をつつくような後ろ向きな議論を吹っかけ、それに釈明せざるを得ない市役所やセンターは、膨大な時間と労力を不毛なやりとりに費やすことになることも明白だからです。

 よく、行政を批判する(というか、叱咤激励というべきでしょうか)タイプの人が、「行政はいつまでも公平・公正ではいけない。メリハリをつけて、支援すべきはしっかり支援し、すべきでないことは一切やらない集中と選択が大事である。」などと言います。
 しかしこれは行政を企業を同一視する妄論で、選挙で選ばれたトップを戴き(そんな会社が世の中にあるでしょうか?)、言いっぱなしで責任を取らないが権限だけはものすごく大きい「議会」があり、住民の税金や(国の)交付税と補助金で成り立ち、住民やマスコミから常に監視されている行政が、公平公正を止めて本当に選択と集中などを行えば、地域は大混乱に陥るのは明らかです。

 行政のやることには限界がある(正確には「制約」がある)、ということをまず理解するのは、地域活性化を考える上で欠かせない大前提です。
 行政が公平公正を捨てたら、住民の多くは行政に協力しなくなるでしょう。同調圧力の強い地方都市ではこのことは宿命で、仮に少子化が減速することが明白でも、公務員に偏った婚活は世論が許さないのです。
 くどいようですが、このことをよく理解しておかないと、地方創生だのなんだのとおカネをばら撒いても、何の成果も生まれないでしょう。 

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