2015年3月10日火曜日

産学官連携のケーキ保存容器「Sweets Box」

松阪市ホームページより
 松阪市に本社がある三重化学工業(株)など民間企業3社と、兵庫県西宮市にある大手前大学、そして松阪市役所の5者が、産学官連携プロジェクトで開発した新商品 Sweets Box(スイーツボックス) の試作品が完成し、このたび発表の記者会見がありました。

 夕刊三重によると、このSweets Boxはケーキなどのスイーツを持ち運ぶための専用容器。洋菓子店でスイーツを購入した際の持ち帰り用には、現在は紙箱が多く使われています。しかし、保冷・保存時間や鮮度維持に限りがあるため、大手前大学でスイーツの開発や文化などの「スイーツ学」なる研究をしているという松井博司教授が製品を考案したものです。
 ケーキ用保冷剤製造大手の三重化学工業と、タイガー魔法瓶(株)、さらにビジネスプロデュースやコーディネートなどを手掛けるザ・ディバイン・プロポーション(株)が連携し、試作を行っていたとのことです。
 Sweets Boxは、八角柱を横にしたような形をしており、高さは約20cm、長さは約26cmで、重さは約1.8kg。正直言って、相当にゴツく大きなサイズと言えそうです。ちなみにスイーツは6個程度を収納することができます。


 肝心の保冷性能ですが、タイガー魔法瓶の真空二重ステンレス構造の技術を基本に、三重化学工業が開発した特殊な配合により通常よりも低温になる専用保冷剤を使用。10℃以下を10時間保てるとのことで、スイーツを自宅に持ち帰った後も、冷蔵庫に移し替えることなく室内にしばらく置いておくことが可能だそうです。
 現在は使い捨てである紙箱の使用量が減少することで環境面でのメリットがあるほか、スイーツ店側の負担軽減も期待できることから、Sweets Boxは洋菓子店をメインの顧客に想定しており、店舗がお客さんから補償金を預かって貸し出す「デポジット制」を考えているとのことです。

 確かに紙箱の無駄は省けると思いますが、Sweets Boxは重量や大きさの点からも、業界で言うところの「通い箱」、つまりヘビーユーザーが定期的・日常的にケーキを買う時に、自分で持って行ってお店で入れてもらうとか、お店に自分専用のSweets Boxをキープしておくとかの反復継続的な用途が中心になるようです。
 このようなお客が本当にいるのか?が気にかかります。

 わしも商売柄、いわゆる「産学官連携」で共同開発された商品を数多く目にしてきました。各自が自分の強みを持ち寄って、単独ではなし得ないような商品作りに取り組んでいく、というストーリーは良いのですが、しっかりとプロジェクトを把握し、マネジメントできるリーダーがいないと、連携することの弱点、すなわち、皆が部分最適しか考えない、コストを計算しない、商品化のアイデアまで持っていない、という、つまりは「だれも責任を取らない」という事態も起こりがちです。
 産(企業)と学(大学)と官(行政)、この3つは基本的に、存在理念も行動原理もまるで違っています。典型的なのは時間感覚の違いで、企業にとってはまさしく「時は金なり」で、ビジネスチャンスを見逃さず商品をリリースしていくことは大原則です。これに対して大学は、企業の商品開発よりも学術的な研究を行っているため短期間での成果はもともと重視していないし、テスト期間や夏休みや入試や、といった学内行事もあって、企業が望むスピード感で動いてくれない場合がままあります。行政に至っては予算や事業は単年度主義であり、12か月で完結するサイクルです。人事異動も頻繁なので、連携体に馴染んだころには担当者が交代することもしばしば。コスト意識はまったくないので、これまた企業とは相当に違っている存在です。

 このような産学官なので、Sweets Boxのように試作品が完成したこと自体、関係者、特にプロジェクトマネジメントをしているリーダーにはご苦労があったものと拝察します。しかし、ここまでは苦労すれば到達できるのです。
 本当の問題はここからで、Sweets Boxが性能的にもコスト的にも洋菓子店や消費者のニーズに応えられ、市場で使われるようになるか、製品のさらなるブラッシュアップと、ビジネスモデル(収益が上がる仕組み)構築が求められることになります。

 Sweets Boxの実用化に向けては、5~6月ごろにかけてモニター調査を行い、個人向けのより小さな商品を用意するなど、ラインナップや機能、デザイン面などで改善を図っていくとのことです。ぜひ首尾よく製品化されるよう、期待したいと思います。
 それにしても、産学官連携のうち、官の松阪市は何の役割を果たしたのだろう・・・・・?

 余談ですが、冒頭の写真を引用させてもらった松阪市役所ホームページの「幸せ発見日記(写真館)」ですが、
 市長は、「これを持って、ピクニックに出かけようと思わせる商品。今後、さらにブラッシュアップされた完成品が楽しみ」と述べられました。
 などと身内であるはずの市長に敬語を使っています。これ、ヘンですよ!

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