2015年5月12日火曜日

旅館経営者向け「旅館経営学」無料ネット講座

 時事通信社の「官庁速報」によると、国土交通省観光庁が全国の旅館経営者を対象に、経営改善に向けた無料のオンライン講座を配信します。
 生産性向上や労務管理などに関する実践的な指導で業者を支援し、地域の活性化につなげるのが狙いで、5月26日から配信が開始されます。(5月11日付け)

観光庁 オンライン講座「旅館経営教室」HP より
2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を控えて、宿泊施設の開業は増加しており、設備が洋式で接客がマニュアル化されているホテルの件数は、10年前に比べて13%増えました。しかし、設備が和式で家業として経営されている旅館の数は25%も減少しています。多くはマニュアルもないため、細かい接客のノウハウを旅館経営者が継承していくことに困難も生じているそうです。


 このため国交省では、これまでも地方大学と連携して、集合教育による無料講座を開いてきました。ただ、経営者自身も旅館スタッフとして働いていることが多く、参加することが難しいケースもあるため、今回インターネットによるオンデマンド型の講座を配信することになりました。

 大学の講義をネットで無料配信するシステムであるgaccoをプラットフォームとして、「サービス生産管理」と「現場スタッフの労務管理とパフォーマンス評価」を各100分、1コマ10分程度の講座を計20コマ配信します。

 gaccoの受講登録は必要ですが、受講料は無料であり、講師はサービス産業生産性向上についての研究の第一人者である、サービス産業革新推進機構 内藤耕代表理事が行います。
 講座はスマートフォンなどでも視聴可能で、受講生同士がディスカッションできる掲示板も設けられ、経験や悩みを相談し合うことができます。 規定の修了条件(60%以上)をクリアすると修了証も授与されます。

 宿泊業、特に旅館は典型的な労働集約型産業であり、設備投資や技術進歩によって生産性を大きく向上させることには限界があります。そもそも人対人の関係で付加価値が生れるので、生産性を向上させるためには、すなわち同じ労働投入で利益を拡大させるには、マンパワーの資質を向上させる以外に基本的な対策がありません。
 もちろん、大学や専門学校には現在も観光学やホテルマン養成コースなどの専攻はありますが、宿泊業全体の従事者から見ると専門教育を履修している人の比率はわずかであり、多くはOJTでノウハウを得ているものと思われます。
 その意味で、旅館業の労働実態に合わせてオンデマンド教育を行うのは大変有意義なことです。この講座は受講者の目標が5000人ですが、5月8日午前時点ですでに約1400人の応募があったとのことで、三重県内でもぜひ多くの旅館業の経営者、従業員の方が受講していたければいいと思います。

 ここからは余談。観光業が「成長産業」だというのはずいぶん以前から言われてきたことです。今またオリンピックだのインバウンド(外国人観光客)増加などで再燃してきましたが、このように行政が煽るブームは基本的に警戒したほうがいいでしょう。またしばらく時がたてば、行政が言う「新しい成長産業」は別の何かに替わってしまい、「今までの成長産業」は捨て去られるからです。
 しかしまあ、観光が注目を浴びているのは事実です。このような事態になると、各省庁が勝ち馬に乗ろうとしてさまざま参入してきます。旅館業は伝統的に厚生労働省が所轄していますが、これに「観光」の側面が加わると国交省(観光庁)が、産業振興の側面が加わると経済産業省(中小企業庁)が闖入してきて、お互いが縄張りを拡張しようとするので収拾がつかなくなります。
 もちろん、今回のオンライン講座などは間違いなくニュートラルに有用なので、各省庁が垣根を超えどんどんPRすればいいのですが、積極的にPRしているのは観光庁のみで、ほかは傍観です。このような縦割り行政は根本的な日本の問題だと感じさせられます。

■はんわしの評論家気取り サービス産業生産性向上セミナーに参加(2012年9月6日)


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