2015年5月26日火曜日

伊勢参宮客の変化

 先日、伊勢市産業支援センターで開かれた経営者向けの情報交換会「K&Kカフェ」に行ってきました。
 メイン講師はこの4月新たに赴任された同センターの沢村センター長。沢村さんは伊勢商工会議所で中小企業の経営支援に従事してこられたのですが、同時に、ほかならぬ伊勢商工会議所にとって最重要なミッションとも言える、伊勢神宮式年遷宮の奉賛行事にも長年従事されてきた経歴をお持ちです。
 その経験を踏まえて色々なお話をされたのですが、なかなか興味深い内容だったのでメモしておきます。

 沢村センター長のお話しのメインは「平成25年に斎行された第62回式年遷宮は、7世紀以来連綿と受け継がれてきた式年遷宮行事の中でもいくつかの大きな変化が顕著になった遷宮であったのではないか」という話題提供でした。
 その土台となる指摘の一つは、実に賑やかに、伊勢の町衆(神領民と自称しています)がまさに総出で従事した、お木曳やお白石持ちといった民俗行事が、実は今回(第62回)は、長い伊勢の伝統の中でも特異なものであったという点です。


 民俗行事(式年遷宮の中でも、伊勢在住民が参加するお木曳などの行事)は、今でこそ神領民の特権のように扱われています。しかし、古代から近世にかけては領民としての租税負担に代わる肉体労働奉仕であり、使役だったというのが本質です。
 明治時代になり国家神道となると政府が国家予算を用いて行っており、現在のように完全に町衆や、企業や市民の寄付金によって「民営」で実施されるようになったのは、昭和28年の第59回式年遷宮からに過ぎません。
 古来から変わらぬ姿を伝えているイメージが強い民俗行事は、民営(戦後方式)の行事となって、第59回、第60回(昭和48年)、第61回(平成5年)と回を追うごとに現代風に変化するスピードは早くなっているそうです。沢村さんは、これを「(平成25年の)第62回式年遷宮は戦後方式の集大成だった。」と表現されていました。
 次回、18年後の第63回式年遷宮は市民人口の減少などによって、今回の行事ともまた、まったく違ったものになるであろう、というのが沢村さんの見立てです。

 この話だけでも、わし的にはけっこうおもしろかったのですが、ほかにもいろいろなお話をしてくれました。かいつまんで書きます。

1)かつては、式年遷宮の翌年は「おかげ年」と言われ、遷宮年よりご利益があるとして、ほぼ同じくらいの参詣者を集めていた。しかし今回は、遷宮年の平成25年に1420万人という史上最高の参詣者数となったが翌26年は1087万人となり23%近くもの大幅減となった。これは大方の関係者も予想できなかったことで、情報のリアルタイム化が一因と思われる。

2)一方で、伊勢神宮の参拝客は伝統的に中高年者が多かったが、近年は若い人が非常に増えてきていることが顕著。ネットやSNSの普及、そして「スピリチュアルブーム」が原因と思われる。これは良し悪しで、若い人はネットで得た非常にニッチな知識や新しい情報を知っている。ある意味、地元の人より詳しい。その一方で、境内にあるお祓い用の目印にすぎない石に手をかざして「パワーをもらう」といったような地元に人にとっては愚かしい不可解な行動もとる。

3)ここで伊勢市民が考えなくてはならないのは、地元では、観光客が伊勢に来るのは伊勢神宮があるから、と漠然と思っている。しかし、若者はそれとは別に、スピリチュアル体験やご利益があるからパワースポットとしての伊勢神宮にやって来る行動パターンであること。価値観とか、街に対するイメージは地元が決めるのではなく、外の人が決める。伊勢の人も、ここに気づかなくてはいけない。

 そして、本論とも言える「おもてなし」の話に入って行きます。古来から多くの参詣客を迎え入れる歴史があった伊勢では、住民に「おもてなしのDNA」がある、などとまことしやかに語られます。これは本当でしょうか?
 もちろん、そんなDNAは実在しません。あくまで「たとえ」だとしても、おもてなしというのは定義が難しいもので、時代によって、物質的な豊かさと言った生活水準によって、大きく変わります。
 今までのおもてなしと、これからのおもてなしが一緒でいいのか、別のものであるべきか、それともおもてなしの概念そのものが広がっていくものなのか?
 この結論は沢村さんのお話しの一番のポイントなので、ネタバレを防ぐためにここではあえて書きません。しかし、やはり式年遷宮に長年携わっておられる方は、着眼点や考察が深く、鋭いなあとあらためて思いました。

 わしが帰宅する途中で歩く外宮参道(JR・近鉄伊勢市駅から伊勢神宮・外宮までの数百メートルの商店街)も、夜はめっきり客足が少なくなってきました。遷宮の前の静かな参道に戻りつつあります。
 予想以上の参詣客数の落ち込みで、商店主、経営者のみなさんも戦略の練り直しやプロモーションの強化が求められているようです。
 余談ですが、これまた古くから(少なくとも、わしが高校生だった頃から)外宮参道にあった居酒屋さんが閉店するとの張り紙がありました。
 これが客数の揺り戻しと関係しているのかどうかはわかりませんが、間違いなく寂しい光景ではあります。
 

0 件のコメント: