2015年5月27日水曜日

隣の空き家が・・・わしの体験

 実家に住む親から、「長らく無人となっているお隣の家が、我が家にもたれかかってきて怖い。」という愚痴をよく聞くようになったのは10年ほど前のことでした。
 わしの実家は旧市街地の商店街にあり、戦災や天災をくぐり抜けた古い小さな木造家屋が密集している一帯です。
 お隣の家も高齢の夫婦が商売をされていましたが、ご主人が亡くなり、奥さんは子供さんの家で同居することとなって、それから数年来、空き家の状態でした。
 住む人がいなくなると家はいっぺんに痛み出すとはよく聞くことですが、たしかに見た目にも傾きがひどくなり、一部の瓦が落ちたり、壁板もはがれて壁土がむき出しになっている箇所も目立ってきていました。
 地震になれば間違いなくわしの実家に崩れ落ちてくるでしょう。台風の大風でも倒れ掛かってくる可能性があります。もはや一刻も猶予はならないということで、持ち主と交渉することになりました。

 ちょうど昨日(5月26日)から、長年放置されて老朽化し、倒壊などの恐れがある空き家の持ち主に対して、市町村が撤去などを指導できる、「空き家対策特別措置法」が施行されることとなりました。本当に、隣家がこのような状態になると大変です。
 わしの経験を参考までにご紹介します。


 わしの場合、まず最初に立ちはだかった問題は、この家の本当の所有者がはっきりとわからなかったことです。
 この家は借家で、ご夫婦は大家さんから借りていたというのは聞いたことがあったのですが、その大家が誰かなどと考えたこともありませんでした。
 法務局に行って不動産登記簿を取りましたが、30年以上前に名義が今の所有者に変わったことが分かっただけで、その人がどこに住んでいるのか、そもそも今現在もその人が真正な所有者のままなのかもかわりません。

 念のため市役所に相談してみました。プライバシーに関することなので、固定資産税の課税名義上の所有者は教えられないし、おたくが困っていることはわかるが、市が所有者に連絡することもできないとの返事。これは守秘義務の点から仕方がないと思いました。

 無料法律相談会を使って弁護士にも相談してみました。しかし、合法的に所有者を探すことはできるが、弁護士への着手金と調査費用に最低でも十数万円必要で、取り壊しの交渉などに進めばさらに費用が必要になるとのこと。経済的負担を考えると、正直、かなり意欲が薄れてしまいました。

 そんな時、偶然に実家の近所の人から、現在の所有者は、もともとの所有者の親戚にあたる人で、県内はある市に住んでいる、と教えてもらったと親から連絡がありました。ご近所のコミュニティというか、情報ネットワークはすごいものです。これでだいぶ助かりました。

 ただし、その方がいったいどういう人なのかまではわかりません。おそるおそる電話してみると、幸いなことにしっかりした常識のある方で、現状をよく理解していただいており、こちらからの善処のお願いに対しても、お金がかかることなので即答はできないが、これ以上ご迷惑を掛けるわけにもいかないので早急に対応します、と約束していただきました。

 それから2~3週間後、わしに連絡があり、「結局、この家は壊すことにしたので、解体工事の業者と一緒にご挨拶に伺いたい。」とのこと。
 先方は、うちの親のことをよく知っていて、昔、この家に遊びに来た時に子供の時のわしの顔も見たことがある気がする、と言われ、一気に緊張感が解けました。

 最初におそるおそる電話してから2か月あまりで、とうとう隣家は解体されました。
 不思議なもので、長年見慣れていた隣家が壊されていくのは少々さびしい気もしてきます。しかし、狭い敷地の中で重機をまるで手足のように操作して、要領よくどんどん家を解体していく業者の職人技には感嘆せざるを得ませんでした。

 倒壊を心配した隣家はばらばらとなり、瓦、タイル、金属部分、柱や梁や板、に分類されてトラックで運ばれていきました。
 案外に狭く思える敷地が、我が家の隣にぽつんと生まれました。

 まずは一安心ですが、これは田舎の住宅密集地で、なんだかんだ言って近所付き合いが濃密であったから手がかりが得られたケースだと思います。大家さんが完全な不在地主で、こちらの事情などまったく知らないし関心もない人であれば、交渉はもっと難航したでしょう。
 もっといえば、おそらくは100万円以上はかかっていると思われる解体費用を負担できる経済力が大家さんにあったこともわしらには幸運なことでした。空き家問題で揉めるのは、解体や修繕の費用が出せない所有者が多いからです。
 この意味では、市町村が介在する「空き家法」は、困っている隣人への一定の味方にはなるでしょうが、最終的には金銭問題となるので、あくまでも限界があることは知っておくべきと思います。
 
 余談ながら、ほっと一息ついたのもつかの間。もたれかかられていたわしの実家は、屋根や壁の傷みがひどく ~もともとこっちの家も古かったのが、隣家とくっついていて目立たなかっただけ~、結局壁面の張り替えやら屋根の修理やらが必要だとわかったのです。結果として、それなりの出費になりました。
 まあ、こんなことが顛末です。

■はんわしの評論家気取り  古民家フェチ (2010年3月2日)
  

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