2015年5月31日日曜日

サルどこネットって何?

 三重県が不名誉と言えば不名誉な出来事で全国区になってしまいました。三重県庁が、捕獲したツキノワグマを隣県の滋賀県内に放したという件です。

 三重県ホームページなどによると、この出来事の顛末は以下のようなものです。
1)平成27年5月17日、三重県いなべ市北勢町内でイノシシ捕獲用の箱檻に体長約1.4メートルのオスのツキノワグマがかかった。
2)ツキノワグマは三重県自然環境保全条例に基づく三重県指定希少野生動植物種であったため、県職員2名とNPO法人 サルどこネット の2名の計4人は同日午後6時半ごろ、三重県の野生動物保護等緊急対応マニュアルに従って、発信器を装着し、滋賀県との県境付近に放獣した。
3)放獣する適地を三重県内で探していたが、林道が行き止まりになり、日が暮れそうになってきたため、滋賀県内(多賀町)であることを認識しつつ県境付近で放したもの。
4)5月27日早朝、滋賀県多賀町樋田地内で88歳の女性がクマに襲われ、顔の骨を折る重傷を負った。午前9時頃、滋賀県庁から三重県庁に情報提供があったことから、これが三重県が放したクマであった可能性があることが浮上した。(実際には同一のクマかどうかは不明)
5)放獣した際、三重県庁は滋賀県庁や多賀町役場にその旨を連絡していなかった。これは三重県野生動物保護等緊急対応マニュアルに連絡に関する手順が特に定められていなかったため。
5)5月28日午後、滋賀県庁を訪れた三重県庁の農林水産部長は、滋賀県庁の琵琶湖環境部長に謝罪した。

6)このクマについて三重県庁は28日夜、発信器の電波から、多賀町から東に約19キロ離れた岐阜県海津市内の山中にいるのを確認したと発表した。滋賀県の担当者は「クマは行動範囲が広く、女性を襲ったクマが海津にいても矛盾はない」としている。一方、短期間で遠くに移動しており同一かどうかに疑問を呈する専門家もいる。

 現時点で、三重県庁と地元市役所、猟友会などの関係者がクマの捜索を続けています。現時点ではまだ見つかっていませんが、報道によると発見次第、射殺する方針であるとのことです。

 この件、いろいろ疑問が湧いてきます。
 しかし、わしは巷間言われている、「なぜ滋賀県側で放したのか?」とか、「なぜ放したことを滋賀県庁に連絡しなかったのか?」についてはあまり不審には思いません
 理由は簡単で、どこで放そうと山はつながっており、クマは自分でどこにでも歩いていくことです(当たり前だ!)。
 県境がどうのこうのは人間の都合であり、三重県内で放すのはいいが滋賀県内ではダメ、などというのはそれこそ杓子定規の「お役所仕事」でしょう。

 もうひとつ、連絡しなかった理由も簡単で、業務マニュアルになかったからです。これをマニュアル依存だとか、思考停止だとかとやかく言うのは簡単ですが、日々次々起こる出来事を、何にしろ「さばかないと」いけない現場の農林事務所は忙しいのです。だからこそ、現場と本庁は連絡を密にしておき、現場の職員には一定のゆとりとか余裕を与えないといけないのです。これは役所だとか企業だとかの別はない、組織の「マネジメント」の問題です。

(余談ですが、三重県職員が滋賀県に放したことを指して「あり得ない対応」などと言ったヒトがいますが、では滋賀県に連絡して拒否されたら、このヒトどうするつもりなのでしょう? )

 まあ、これらはさておき、わしが不思議だった(というか、よくわからなかった)のは、5月17日に三重県がクマを放したときに県職員と一緒にいた、サルどこネット なるNPOがいったい何者なのかということです。

 法的に考えると、クマの放獣は条例に基づく行為であって、公権力の行使に当たります。通常、事実行為にはNPOが参画することはあり得るでしょうが、公権力行使の場にどういう権原でNPOがいたのか。野生動物の管理の業務を県が委託していたとか、そのような関係だったのでしょうか。

 NPO法人サルどこネットは、ホームページによると、サルやイノシシ・シカによる被害が増加するばかりの状況で、被害対策への期待が増していることから、サルの位置調査を中心に現状を把握し、情報提供をおこないながら、被害を受けている住民とともに解決策を見つけていくことを使命として結成されたNPOだとのことです。

 具体的には、野生鳥獣被害対策に関する調査研究、野生鳥獣に関する科学的情報の収集と提供、調査技術開発及び情報発信・共有技術の検討、環境保全や人身被害対策に係る事業などを行い、野生鳥獣により生活環境に影響を受けたり、農林水産業等に被害を被る住民などの利益の増進に寄与しているとのことです。

 これは非常に有意義な活動だと思います。最近は、市街地にもサルやイノシシが出没し、農地や花壇などが荒らされることは、特に伊勢市や鳥羽市のような三重県南部の地域ではよく聞きます。
 住民による予防や駆除には限界があり、一方で、市役所や県事務所でも対応には限りがあるでしょう。野生動物や環境保護に知見がある民間セクターが、獣害の解決に積極的に関与するのは心強いことですし、その役割は今後もますます大きくなっていくでしょう。

 この件に話を戻せば、被害に遭われた多賀町の方はお気の毒ですが、何にしても放獣したクマが犯人かどうかはまだわかりません。
 三重県庁も、滋賀県庁には謝罪はしたものの、被害女性への謝罪や賠償支払いは留保しているそうですが、感情的にはともかく、これは仕方がないことだと思います。

 危惧するのは、この騒動によって、面倒なことになるくらいならクマを見つけたら殺処分してしまおうという空気が蔓延したり、逆に、野生動物の一挙手一投足まで完全に行政が監督し、管理せよ。人を襲う被害が出たら、無過失責任で行政が賠償せよ、などというような極論が出てくることです。
 最も根本的な問題は、クマなどを取り巻く自然環境の変化(悪化)であって、これに抜本的に手を付けない限り、今後も似たような問題は繰り返されるでしょう。

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