2015年6月2日火曜日

意外にも津市が一番だった

 国土交通省中部運輸局が、国土交通省観光庁の宿泊旅行統計調査(平成26年分速報値)をもとに、中部運輸局管内(静岡、愛知、岐阜、三重、福井)の市町村別の外国人延べ宿泊者数を「宿泊旅行統計 外国人延べ宿泊者数自治体ランキング」として公表しました。
 最近の円安傾向は、食糧やエネルギーを輸入に頼る日本にとっては国民生活上望ましくないことなのですが、その一方で輸出産業や外国人観光客を受け入れる関連産業にとってはプラスとなります。数年前から国、地方を挙げて外国人観光客の誘致を進めていたこともあって、昨年は外国人観光客が過去最高の1341万人となったのは記憶に新しいところです。

 では、三重県には実際にどれくらいの人が来ているのかですが、外国人宿泊客数は16万人(正確には「人泊」という単位です。)に過ぎません。愛知県の149万人はもちろん、岐阜県(66万人)、静岡県(80万人)に比べても圧倒的に少なくなっています。
 増加率を見ても、中部地域の外国人宿泊者数全体は平成25年に比べて約37%増加しているのに対し、三重県の増加率は23%にとどまっており、東海地域での存在感は非常に限られている言わざるを得ません。

 興味深いのは、個別具体的な観光地や観光資源を連想しやすい市町村別の数字です。
 中部管内の外国人延べ宿泊者数は、名古屋市が77万人と一番多く、10万人以上の都市は他に、高山市、浜松市、常滑市、豊橋市となっています。外国人延べ宿泊者数の増加数では、高山市が17万人増と一番多く、10万人以上増加した都市は、他に名古屋市、浜松市となっています。
 残念ながらやはり三重県内の市町はランクインしていないのですが、県内29市町の中で最も外国人が宿泊したのは意外にも、というと失礼かもしれませんが、津市でした。


 意外にもと言ったのは、やはり三重県で観光客を呼べそうな観光地というと、伊勢志摩、鈴鹿サーキット、長島温泉、湯の山温泉などが連想され、最近の忍者ブームで伊賀も多いかもしれないな、という程度の認識だったからです。

 しかし、グラフを見ると一目瞭然。志摩市がすぐ後を追ってきてはいますが、47,253人の津市が堂々の第一です。
 3位の四日市市はビジネス客が多いためでしょうか。4位の鈴鹿市も自動車関連のビジネス客とサーキット関係かと想像されます。
 伊賀市、鳥羽市は、まあ観光でしょう。
 7位桑名市、8位亀山市は明確な理由が思い当たりません。桑名市は長島温泉の関係、亀山市はうがった見方をすれば鈴鹿や四日市のビジネス客が流れてきているのでしょうか。
 
 また、増加数のグラフを見ると、これまた面白いことに、熊野市、多気町、紀北町などが上位に入っています。いずれも1000人程度の増加なので絶対数は多くはないのですが、しかしもし戦略的に観光振興策に取り組んだ結果がこう結びついているのだとしたら、今後が期待できるのではないかと思います。

 それにしても、なぜ津市にこれほど外国人宿泊者が多いのでしょうか。そのヒントは、国別の構成比率にあります。他の中部4県と比較すると、三重県は韓国人の宿泊者が多く、比率が19%をも占めているという際立った特徴があります。
 一部の新聞によれば、津市は中部国際空港セントレアと連絡船で直結しており、韓国のお客さんが津市内に多くあるゴルフ場で、週末などに泊付きで手軽にゴルフを楽しんでいく需要が大きいのだそうです。なるほど。

 これは示唆に富む話だと思います。
 世間では、疲弊する地域経済の振興や地域産業活性化の有効手段として「地域資源の活用」が唱えられています。
 この場合の地域資源とは、その土地で取れる農林水産物、その土地に根差した伝統産業、その土地にある名勝や温泉などの観光資源が代表的なものです。国も自治体も、「まちの宝探し」などと称して、どんな田舎町、どんなにすたれた土地でも、他に誇れる眠っている資源があるはずだ、と声高に言い、補助金を出したりして住民や経営者に、地域資源を活用した商品(製品やサービス)づくりを働きかけます。
 これはもちろん成り立つ場合もあるのですが、実際に「何もない」地域もあるし、宝はあってもそれはあくまで原石で、磨くための費用やマンパワーが膨大すぎてビジネス的にペイが難しい場合ももちろんあります。このような場合は地域資源活用というドグマに縛られていては行き詰ってしまいます。
 地域資源とは上記のようなものばかりでなく、津市のように「ゴルフ場」がたくさんあるとか、飛行場からのアクセスが良い、でもいいわけです。行政や地域住民主導の地域おこしでは、案外このような視点は見落としがちです。むしろ旅行業者のような企業のほうが、ツアーへの仕立て方のような「商品化」は上手なのでしょう。
 往々にして、革新はこのように予期しないところから始まります。このことは留意しておくべきと思います。

■中部運輸局   宿泊旅行統計 外国人延べ宿泊者数自治体ランキング(PDF)

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