2015年6月13日土曜日

サミット開催で県が喜んでいるのはなぜ?

 開催決定から一週間、この間、伊勢志摩サミット開催に関する三重県や鈴木知事の報道が洪水のように流されており、わしも含めて多くの県民は、いわゆる「サミット効果」のすさまじさを実感しているのではないでしょうか。
 三重県がサミットを誘致した主な理由は世界的な知名度向上による伊勢神宮を中心とした日本精神の発信と、観光地としてのグレードアップにあるようなので、一定程度はその効果は果たしたとさえ言っていいのかもしれません。

 しかし、よく考えてみると先進国首脳会議そのものは国(政府)の重要な行事であって、主な差配は外務省などが行うのでしょうから、じゃあいったい、県や志摩市はサミットにどう関わるのか、サミットにおいてどんな役割を果たすのか、がわかりにくいところではあります。

 そう思っていたら今朝(6月13日付け)の中日新聞に、県はサミット期間中の開催行事として、各国首脳の配偶者らが県内各地を訪れる「配偶者プログラム」を実施する予定であることを明らかにしたとのことです。
 現在のところ、伊勢志摩地域だけでなく、明和町にある「いつきのみや体験館」や、ものづくりの最先端技術の現場など可能な限り県内各地を回ってもらえるよう国に提案していくとのことです。
 なるほど、県の役割は、道路の整備とか県警による警備とかは当然の業務として、そのほかは、このようなオプションツアーのコンダクター的なものになるのでしょう。


 しかし、たまたま見つけたニューズウィーク日本版のサイトの、外交評論家の冷泉彰彦氏による連載コラムで 伊勢志摩サミット、首脳のパートナーの「外交」に何を求めるか という非常に示唆に富む指摘をされていたので紹介しておきます。

 冷泉さんは、平成20年の洞爺湖サミットで、当時の福田首相夫人が主宰した「夫人外交」(パートナー外交)が、十二単の着付け鑑賞とか、豪華な茶会という内容で、たいへんな悪評を買ったこと。また、平成22年の横浜APECでは、当時の菅首相夫人による「坐禅体験」や「ハイテク丹後ちりめんファッション」などが「ズレ」た企画になっていたこと。を指摘します。
 平成28年の伊勢志摩サミットでも、県や地元市から「海女を売り込め」とか「首脳夫人には真珠を」などという動きが出ているのを、「人口減経済の中で地域の経済活性化につながればという地元の祈るような気持ちは分かる」としたうえで、次のような重要な視点を提示します。

1)日本の海女文化は、自然との共生を志向した独特の漁業形態として、海外に対して胸を張って誇るべき文化である。しかし世界的に見れば、女性だけの職業として潜水作業を行わせ、それを場合によっては見世物にするというのは、メインストリームの文化というカテゴリからは外れると考える。

2)真珠については、国際社会では「日本の真珠は高品質で贅沢」という印象がある。現在の国際社会では格差の問題は極めて重要。首脳外交も、首脳パートナーの外交も、その問題に対して意識的であるべきで、そのような世相の中で、「真珠の紹介」イベントを大々的に行うのは適当ではないと考える。

3)そうではなくて、伊勢志摩エリアであれば、昭和34年の伊勢湾台風から、平成23年の12号台風にいたる自然災害の経験に基づく防災・減災の取り組み実績の紹介とか、過疎高齢化の中でのコミュニティ活性化の取り組み、外国人労働者の問題(はんわし注:伊勢志摩の漁業や水産加工業には多くの外国人実習生が従事しています。)など、G7各国に共通の課題において様々な社会的メッセージを発信することが可能だと思う。

 わしは、この冷泉さんの意見、なるほどと思います。

 先般の、水族館の世界団体が、和歌山県太地町での追込み漁で捕獲したイルカの入手を非難する決定なんかも、ハッキリ言って多くの日本人には理解不能な手前勝手なめちゃくちゃな話ですが、しかし、このような偏った価値観、偏った文化論でも正論としてまかり通ってしまうのが外交問題の難しいところではないでしょうか。
 海女も同様で(わしは海女に偏見も何もないけれども)、女性に過酷な労働を強いてきた前近代的な風習、とか誤解されてしまわないか、非常に危ない線の上に立っているカルチャーではないかと思っています。

 3のように、三重県には台風や高潮、地震などと闘ってきた先人の歴史があります。もっと言えば、里山や里海を守り、公害を克服してきた経験も持っています。これらのほうが、「歓待」ムードが満点で下心も透けて見える配偶者プログラムよりも、よほど先進諸国の課題解決に貢献しますし、各国首脳の配偶者たちも関心が高いであろうことは間違いありません。世の中は変わってしまっているのです。

 話を冒頭に戻しますが、三重県が提案する「配偶者プログラム」の内容を最終的に誰が決定するのかはわかりません。しかし、外交の経験が豊富なはずの外務省でさえ、冷泉さんの関連記事によると、「仕事は男(夫たる大統領や首相)がやるもので、妻は家庭に」という価値観でプログラムの立案をしているそうですから、ましてやほとんど外交経験がない県の官僚が「社会的メッセージの発信」にまで発想が飛躍することは極めて難しい ~仮に提案しても、まわりがこぞって潰してしまうでしょう~ と考えざるをえません。
 そうすると、やはり、海女とか真珠とかの「そこそこ」の内容を、万全のクオリティで実施するプログラムになるのでしょう。日本的といえば日本的であって、日本の平均値である三重県にふさわしいと言えばそうなのですが。

■ブリンストン発 日本/アメリカ新時代 by 冷泉彰彦
 伊勢志摩サミット、首脳のパートナーの「外交」に何を求めるか(2015年06月10日)

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