2015年6月22日月曜日

タダでできる頭の体操

 三重県が、「三重県まち・ひと・しごと創生総合戦略(仮称)中間案」に対する県民からの意見募集、いわゆるパブリックコメントを行っています。

 「地方創生」とか「まち・ひと・しごと」というコトバは、昨年からマスコミでも頻繁に報道されるようになっており、ほとんどの方は耳にされたことがあるとおもいます。
 政府は、少子高齢化に起因する将来の人口減少に歯止めをかけるとともに、東京圏への人口集中を是正し、それぞれの地域(地方)で住みよい環境を確保することによって、将来にわたって活力のある日本社会を維持することを目的に、昨年11月「まち・ひと・しごと創生法」を制定しました。
 この法律はまず、結婚、出産、育児の環境整備とか、仕事と生活の調和(ワークライフバランス)への環境整備など、まち・ひと・しごと創生のための7つの基本理念を定めています。

 次に、首相を本部長とするまち・ひと・しごと創生本部は、7つの基本理念を具現化するための「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を閣議決定して、政府の共通戦略に位置付けます。
 これを受けて、各地域地域で地方自治体が地域実情に応じた施策を推進するために、「都道府県まち・ひと・しごと創生総合戦略」や「市町村まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定する努力義務を負うことになっています。
 今回パブリックコメントが行われる三重県の「まち・ひと・しごと創生総合戦略中間案」も、このような流れで作業が進んでいるわけです。
 まちおこし、地域振興、地域活性化などに関心がある方は、ぜひ「頭の体操」がわりに目を通してみてください。きっといろいろな「気づき」が ~良くも悪くも~ 得られること請け合いです。


 この戦略中間案では、2060年には約120万人まで人口が減少し、老年人口比率も38%になろうと予測される三重県の、人口減少を一定程度くいとめるためにを「希望がかない、選ばれる三重」というスローガンを「三重県が目指す姿」として掲げます。
 具体的には、
1)自然減対策と社会減対策を両輪とし、結婚したいときに結婚でき、子どもを産みたい人が産みたいときに安心して子どもを産み育てることができ、すべての子どもが、障がいの有無や生まれ育った家庭環境にかかわらず、豊かに育つことができる社会
2)県民一人ひとりの「学びたい」「働きたい」「暮らし(続け)たい」といったそれぞれの希望がかなうことで、みんなが集う、豊かさを実感できる活気あふれる社会
 を実現し、「県内外のさまざまな人から選ばれ、協創の連鎖により人々の絆が深まり、心豊かに暮らすことができる三重」とするとのことです。何とも壮大で、野心的とさえ言える目標です。

 実際に、この目標を達成するために、今後5年間で取り組むとされる県の事業は多岐にわたっています。対策は、自然減対策と社会減対策にまず大別され、それぞれの下にさらに細かいテーマが設けられ、事業が全部で150近くも羅列されています。なるほど、これだけでも、まち・ひと・しごと創生というのがボリューム的にも大変な仕事であることが理解できます。

 しかし、細かい仕事の一つ一つ見ていくと不思議なことにも気が付きます。自然減対策における、児童虐待の防止、子どもの貧困対策、若者の結婚支援、不妊者への治療の支援、子育て支援などの事業。もちろんこれらの支援は重要なものには違いありませんが、事業の一つ一つは今までもその重要性が訴えられ、県による支援そのものは事業として営々と続けられてきているものが多いのです。
 これらの事業には少なくない予算が投じられ、少なくない県職員のマンパワーが割かれています。しかし、仮に今までの成果が不十分であったから三重県でも人口の自然減が止まらないのだとすれば、つまり施策と現状に因果関係があるのであれば、なぜ、成果が生まれなかったのかという検証が最初に行われなくてはいけません。

 これは当たり前の話で、今までやってきたことの、方向性がそもそも間違っているのか、方向性はいいが方法論が間違っているのか、方法が不十分だとすれば、それは予算が少ないのか、マンパワーが不十分なのか、ステークホルダーの理解や協力が不十分なのか、法制度に不備があるのか、など様々な分析が可能ですし、そういった分析をしなければ、今後どう対処していくべきかもわからないはずです。
 ところが、この戦略中間案には、そのような分析がほとんどありません。まるで子供の貧困問題が突然現れてきたかのような、結婚を望んでもできない若者たちが突然増えてきたような、そんな脈絡のなさが随所に出てきます。

 この脈絡のなさは、「社会減対策」になると一層顕著で、これはもう既存の過疎対策や商工振興策、勤労者対策の単なるリストアップにしかすぎません。施策のカタログのようにつらつら書き連ねられた中には、「第27回全国菓子大博覧会・三重実行委員会の取組への参画」とか「沖縄国際物流ハブ機能を活用した取組の検討」とか「農地や農林水産業施設などの生産基盤の整備」とかの の、風が吹けば桶屋が儲かる式の、「まち・ひと・しごと創生」と直接的にどう関係するのかがよくわからない ~関係していそうなものは、じゃあ今までどんな成果があったのか、どんな課題があったのかの分析がない~ 事業もかなり見あたります。

 まあ、正直に言えば、三重県の「まち・ひと・しごと創生総合戦略中間案」も、法律によって策定努力が求められ、この戦略がないと今後国からの予算も配分されないという事情があるので、今すでにやっている事業もとにかく大急ぎで掻き集めてホッチキスで一冊に留めた、ということなのでしょう。これは一概に悪いことでなく、県が(市町村も)財政上、国に依存しているのは間違いないので、予算を得るためにはともかく「戦略」を作らざるを得ないのです。

 そこはそれ、大人の事情として、しかし、より良い戦略にしていくには、これらの課題に関心を持っている、あるいはすでに実践に携わっている県民の皆さんが意見を出し、知恵を出してブラッシュアップしていく必要はあります。
 関心がある部分だけでもいいので、一度ぜひ目を通していただき、コメントしていただいてはどうでしょうか。
 繰り返しますが、まち・ひと・しごと創生は壮大な仕事です。行政だけではできませんし、行政だけに任せるべきでもありません。とにかく、県民の無関心が一番ダメなのです。

■三重県公式ウエブサイト  「三重県人口ビジョン(仮称)」中間案及び「三重県まち・ひと・しごと創生総合戦略(仮称)」中間案に対するご意見を募集します(平成27年6月18日) リンクはこちら



0 件のコメント: