2015年6月8日月曜日

いなべえは行方不明・・・(マニアック)

 三重県庁の職員が滋賀県多賀町内の山林に放獣したオスのツキノワグマ(通称 いなべえ)は、このブログを書いている時点でまだ発見されていません。 
 5月27日に多賀町内で女性を襲ったクマといなべえが同一であるかはハッキリしませんが、三重県庁は6月5日、いなべ市や岐阜県などとも協議し、地域住民の不安を解消するためにも殺処分を行う必要があるという結論に達したとのこと。地元の猟友会なども捜索に協力しており、早晩、いなべえは発見され射殺されることになるでしょう。
 6月4日には兵庫県西宮市にある環境保護団体「日本熊森協会」が三重県庁を訪れ殺処分をやめるよう要望していますし、県内でも一部の首長が県の判断は安易であるとして批判的な意見を述べています。
 これらの意見はもっともな面があるとは思います。思いますが、実際にクマによって負傷した人がおり、この犯人が ~三重県の不手際とはいえ~ いなべえではないかと疑われたこと、真犯人がどうであろうと、世間から合理的に疑われるような事態を出来したことこそが、現代の日本社会では大変な失態と認識されます。そうである以上、現状を丸く収めるには殺処分しか方法はなく、やむを得ないのではないでしょうか。(人間側の無茶苦茶な理屈ではありますが。)

 わしは思うのですが、自然保護団体の方は動物の命を守れと主張されますが ~もちろん、これは正論で間違ってはいないのですが~、それではどうすれば利害関係者や、もっといえば「世間」が納得するかという具体的な解決策は提示しません。解決する主体はあくまで「行政」(=地方自治体)であって、関係者はそれぞれの要求を訴えるだけです。

 県や市町村といった地方自治体はこれから将来の住民のさまざまな生活課題や利害と関わり、良好な関係を続けていく必要がある以上、まずはこの良好な関係維持を最優先にして解決策を選択するしかありません。
 けが人が出たとか、畑が荒らされたなどという生命や財産の侵害は、最もあってはならないことであって、このような不安に直面している人々がいる以上、行政としては殺処分して納得してもらうしかないのです。
 誤解を招かないように補足しますが、被害を受けた方や不安を感じた方々がいなべえを殺してしまえと要求しているとか願っていると言っているわけではありません。この人々も殺めていいなどとは思っていないでしょうが、これ以上クマが徘徊し、不安が続くことは望んでいないということです。クマが生きている限り、どのような立場の誰にとっても不安は消えないのですから、すべての利害関係者が合意できる方法は殺処分しかないのです。

 このような判断が迫られる行政担当者の責任は実に重たいものだと思います。地方自治体の仕事には、祭りやイベントの手伝いだのといったどうでもいいものや、特産品の販売とか観光PRのように別に行政がする必然性はないもの(民間で十分に代替可能なもの)もたくさんあります。
 一方で、貴重な野生動物の保護と住民の安全・安心の保全という、この場合は二律背反する問題を解決するのは行政以外にできませんし、このような仕事こそが本来の行政の任務であるはずです。
 難しい問題に適確な解決策を提示できるように、自治体職員は普段から法的思考の研鑽を積み、自治体の仕事のやり方、予算、条例や規則やマニュアルや、なども整えておかなくてはいけません。

 最近、ややもすると、産業振興や観光振興で「カリスマ公務員」だの「スーパー公務員」だのがマスコミに取り上げられますが、これは自治体の業務が無用に肥大化していることの証左でもあります。住民にとって本当のカリスマ公務員は、今回のように利害が対立する課題をマンドリングスルーしながら解決に導いていく職員なのです。
 このような職員は「地上の星」で、なかなか注目を浴びないのですが、環境、福祉、教育、土木などといった住民間の利害が対立しやすい所属において、ホンモノの職員がどれだけいるかが県庁や市役所といった自治体組織の層の厚さであり、真の実力であるということができます。
 

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