2015年7月1日水曜日

掬すべきところなしとせず

 自民党の若手議員が開いた勉強会で、現在審議中の安保関連法案に関するマスコミの報道に対して、圧力をかけるべきだとの発言が出席議員や講師の作家 百田直樹氏から相次いだことが大きな問題となっています。政府は自民党青年局長の代議士を更迭することで幕引きを図っていますが、野党側は徹底追及の姿勢であり、今しばらく膠着状態が続きそうです。
 実はわし、前の週末、ほとんど新聞を読んでおらず、今日あらためて土曜日、日曜日の中日新聞を読んでいたのですが、6月27日の朝刊1面に「自民党若手勉強会 発言要旨」というかなり大きな記事が出ていました。
中日新聞 2015年6月27日 朝刊より
 沖縄県の2つの地方紙を潰さないといけない、などと過激な発言(本人は冗談だったと言っているようですが)をしたとされる百田氏は、意外にもというか、慎重な言い回しをしています。

議員A)マスコミを懲らしめるには、広告料収入をなくせばいい。われわれ政治家、まして安倍首相は言えないことだ。文化人、あるいは民間の方々がマスコミに広告料を払うなんてとんでもないと経団連に働きかけてほしい。
議員B)広告料収入とテレビの提供スポンサーにならないということがマスコミには一番こたえるだろう。
百田氏)本当に難しい。広告を止めると一般企業も困るところがある。僕は新聞の影響は本当はすごくないと思っている。それよりもテレビ。広告料ではなく、地上波の既得権をなくしてもらいたい。自由競争なしに五十年も六十年も続いている。自由競争にすれば、テレビ局の状況はかなり変わる。ここを総務省にしっかりやってほしい。

 このやりとりの後に、別の議員から沖縄のメディアの特殊な状況うんぬんの質問が出て、例の「2紙は潰さないといけない」という発言が出てくるわけですが、百田氏は広告をなくすと、自社のPRをしたい企業にもデメリットがあるので、限界があることを認めています。
 そして、新聞はマスメディアとしての影響力は小さく、影響が大きいのはテレビなので、むしろ「テレビ局が持っている(地上波の)既得権」をなくすよう、総務省は自由競争を促進する政策をとるべきと提案しているのです。

 これは非常に重要な視点です。
 確かに、テレビ局は総務省から放送免許が交付されており、本来は国民全員の財産であり、しかも有限な「電波」というツールを、非常に安い使用料で独占的・排他的に使っています。
 電波の使用料に適正価格というものは考えにくいので、諸外国ではオークションを行って、最も高い使用料を提示した者に電波の使用権が与えられることが多いようです。
 しかし、日本では、かの田中角栄氏が放送法を改正させ、各系列の地方放送局は一県一局に制限する、つまりは新規参入抑制策を行いました。
 これによって、政府は放送局(テレビ局)を事実上支配下に置き、仮に不都合な事象が出来すれば放送免許を剥奪すると牽制する(脅かす?)ことができます。
 その対価として、テレビ局は安い使用料で電波を使え、企業からは高価なコマーシャル代を徴収して、その差額で莫大な利益を得ています。しかも新規参入はないので、まさに安定した殿様商売を続けられるのです。

 百田氏は、このような政府とテレビ局の関係を問題視します。むしろテレビ放送業界に新規参入を促進すれば、偏向した報道は淘汰され、広く視聴者(マーケット)の意向が反映された、おそらくは百田氏のイメージする中庸な立場からの番組が放映されるようになることでしょう。

 しかも、テレビ局のキー局は、TBSなら毎日新聞、テレビ朝日なら朝日新聞、フジテレビなら産経新聞、日本テレビなら読売新聞、テレビ東京なら日本経済新聞、というふうに大手新聞社の系列会社です。テレビ局に自由競争の波が押し寄せるようになれば、親会社の新聞社も大きな影響を受けるはずです。

 つまり、企業に圧力をかけて広告を掲載させないことよりも、政府が本来行うべき経済政策、すなわち自由主義経済である以上、規制産業、保護産業は必要最小限にして、企業の切磋琢磨によって経済厚生を高めていくような競争政策を進めることで、偏った、そして操られた世論はバランスが取れたものになるのです。

 これには一理あるのではないでしょうか。

 マスコミは役所の中に立派な「記者クラブ」という一室が与えられ、記者は言わばタダでニュースの種を手に入れることができます。
 記者クラブ制度が一種の馴れ合いなのは、田中康夫氏が長野県知事だった時代に厳しく指弾し、記者クラブを長野県庁から廃止したこともありました。

 しかし、マスコミの影響力はやはり非常に大きいので、国、地方とも多くの役所には今でも ~もちろん三重県庁にも~ 記者クラブがあって 、「是々非々の関係」が続いています。
 そのせいかどうか、百田氏の「地上波の既得権をなくせ」発言は、マスコミ報道では沖縄2紙を潰せ発言よりも扱いがずっと小さく、ほとんど報道されてないようにも思います。このこともまた、日本のマスコミの現状に対して、わしなりの不信感を感じる理由でもあります。

(追記)
 ブロガーで経済学者の池田信夫氏が、6月28日付けのブログですでにこのことを指摘しています。さすがです。(アゴラ 百田尚樹氏の批判した電波利権 リンクはこちら

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