2015年7月14日火曜日

近大ナマズと「新産業創造」

近畿大学HPより
 ここ数日、三重県も夏の暑さが本格化してきた感じです。
 この時期に食べたくなるのはウナギのかば焼きですが、近年の価格高騰や、種としてのニホンウナギが絶滅危惧種に指定されたこともあって、わしら庶民にはなかなか手が届かない高級食材となっています。
 仕方なく牛丼チェーンの激安うな丼の広告に釣られて入店したら、出されたのは何だか想像を絶したウナギのかば焼きで、やはり世の中にうまい話などないという教訓を再認識してしまったりします。

 しかし、ここに吉報が舞い込んできました。
 マグロの完全養殖(卵から成魚にまで育て、その成魚からまた卵を得る)技術を確立し、量産にも着手している近畿大学が、今度は「ウナギ味のナマズ」の養殖に成功したというのです。
 7月13日には報道関係者向けの試食会が大阪で開かれ、かば焼きになった近大ナマズは「風味、食感ともほぼウナギ」とのお墨付きを得られたとのことで、近畿大では養殖会社を立ち上げ、 今後1年程度で約10万匹の生産を目指す方針だそうです。
 問題なのは、それではウナギに勝るとも劣らないナマズのかば焼き丼のコストは、すなわち価格はいくらくらいになるのか?ということです。
 もし値段もウナギ並みの高値だとすれば、結局は一般庶民にまでそれほど普及しないであろうからです。


 近畿大学のホームページによると、7月24日の今年の土用の丑の日に東京と大阪の、近大直営の料理店 近畿大学水産研究所 で限定販売される「うなぎ味のナマズ御重」は税込2200円。
 どれくらいの量のかば焼きが載っているのかはわかりませんが、もしこの写真くらいのグレードだとすると、これはやはり値段もウナギ並みであるような気がします。
 これはあくまでも、まだ現段階では試作品というか、養殖技術革新の途中であるがゆえのコスト高ということなのでしょう。
 将来的にはニホンウナギの半分以下の価格で提供することを目指して研究を続けているとのことで、大量養殖技術の確立と並行して、実際にナマズを食べるたくさんの消費者をどう開拓していくか、つまり、新しい市場をどう作り上げていくかにかかっています。

 イノベーションが難しいのはまさにこの点です。
 技術革新と同時に、新しい商品提供の方法や、新しい市場を作り上げなくては、新しいモノやサービスは普及せず、「技術で勝って、事業で負ける」ことになってしまうからです。
 仮にナマズがウナギに取って代わるようになれば、新しい養殖場の建設や、餌の開発、ナマズの成魚の流通、といった新産業が誕生することになります。これは消費者の便益を向上させると同時に、地域に新たな雇用を生み出すでしょう。新技術はそれだけではイノベーションにならず、ビジネスとなってはじめて価値のあるものになるのです。

 一方で、世にないものを新たに生み出し、大きな事業に育てることは至難の業です。かば焼きの例で言えば、サンマのかば焼きで丼を作る、といった、イノベーション(革新)とは呼びえない、改良、改善された商品が、斬新さが少ないゆえに安心して受け入れられる定番アイテムになることも多々見られます。ビジネス面で見れば、リスクの高いイノベーションよりも経営戦略として正しいと言えるわけです。

 わしが興味深く思うのは、この近大ナマズのように、ほぼほぼ完成しつつある技術革新が現れた時に、従来の今あるウナギ屋さんたちがどのような戦略をとるのか、ということです。
 新し物好きで、リスクもいとわない起業家精神旺盛なウナギ屋さんは、きっとこのナマズに賭けるでしょう。一気に転換しないにせよ、徐々にウナギからナマズへの比重を高めていくでしょう。
 しかし、大多数のウナギ屋さんは、今までやってきた自分のビジネススタイルや生産技術を変えようとはしないでしょう。今さら変えられないというのが近いかもしれません。
 多くの消費者がウナギを支持し続けるのか、それとも次第にナマズに傾倒していくのか。これは、回転寿司が初めて現れた時、町の寿司屋さんの多くはキワモノとしてライバル視していなかったことを思い起こさせます。様子見しているうちに、パラダイムシフトが起こって、消費者はナマズに流れていくかもしれません。(おそらく、価格の問題が要因として最も影響するでしょう。)

 ウナギの産地とか、ウナギが名物と言う土地は、日本各地にあります。三重県では津市が、人口一人あたりのウナギの消費量が多いとか、かば焼き屋の店舗数が多いとかの統計を持っているわけですが、津市のウナギ屋さんは近大ナマズをどう評価するのでしょうか。
 そして、進んで近大と組んで転換していく業者、日和っている業者、ウナギを守り続ける業者、にどれくらい分化していくのでしょうか。
 地域の新産業を作る、地域で雇用を作る、というのは、いかに経営者たちのリスク覚悟の挑戦に負っているか、そういった起業家精神の強い人たちが、その地域にどれだけたくさんいるのかに、要するに、かかっているということなのです。

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