2015年7月18日土曜日

新国立競技場はトヨタ方式で立て直せ

 注目されていた新国立競技場の建設問題は、7月17日に安倍首相が現行計画の白紙撤回を発表したことで新たなフェーズを迎えることになりました。当初は1300億円に抑えるとしていた建設費は、迷走のあげく2500億円にも膨らみ、しかもそれに至る経緯が非常に不透明。
 関係者のだれも責任を取らない姿勢に見えたこの状況は、国民の大きな批判を浴びることとなり、当初は計画案の見直しに消極的だった政府も、世論に押されて政治決断せざるを得ない事態に至ったのです。
 東京オリンピックを誘致した際に、ザハ・ハディッド氏なる建築家のデザインによるスタジアム整備が国際公約されており、それを白紙にすることで日本への信頼が失われるのではないかとか、今さら撤回しても違約金などで多額の費用がかかるとか、現実問題として今からやり直していてはオリンピックまでに建設が間に合わない、など多くの危惧が寄せられているのは確かにそうでしょうが、かと言って、以前わしもこのブログに書いた 「超」入門 失敗の本質 で指摘されているような、あまりにも日本人的な愚かな失敗を再び三たび繰り返すほうが、まさに国恥、国辱に値するものであることは国民のコンセンサスではないでしょうか。
 
 わしが思うのは、まさに日本型無責任意思決定の典型例とも言える、政府と、日本スポーツ振興センターとやらの独立行政法人(一種の外郭団体と言っていい)がもたれ合って物事を進めるのは、もしまたこれからもこのスキームが改められないとするのであれば、またまた同じような失敗を繰り返してしまうのではないかということです。

 なぜならこの両者にコスト意識も責任感もないことは何ら変わらないからです。これを防ぐには、独立行政法人ではなく、民間企業が主体となり、コスト意識を持って設計、建設、運営に当たるしかありません。
 その非常に参考になる例が、みんな忘れてしまったかもしれないけど、平成17年に愛知県常滑沖に建設された中部国際空港(セントレア)です。
 中部国際空港の建設までの経緯は、東京には成田があり、大阪には関空ができた。だったら名古屋にも立派な空港が欲しい!という名古屋三男坊理論によるものです。関空と同様、海を埋め立てて作られることになり、建設費も膨大な額となることが予想されていました。
 関空は建設と運営のために第三セクター(関西国際空港株式会社)が作られましたが、ここは会社とは名ばかりで運輸省による天下り役員が跋扈し、社員も地元財界や行政からの寄せ集めの無責任体制となり、建設費は当初の予想を大幅に超える1兆5千億円にものぼったと言われました。
(もっとも、地盤が想定以上に軟弱だったとか、漁業補償が膨らんだとか、騒音対策のために必要以上に陸地から離して建設された、等の事情もあったようですが。)

 中部国際空港はその数年後に工事に着手されましたが、当初から関空の轍は踏まないことが強く意識されていました。建設、運営を行う中部国際空港株式会社は官僚の天下りを極力少なくし、社長以下の幹部職員のほとんどがトヨタ自動車からの出向でした。
 建設費の上昇を抑えることと、運営経費を節減することが至上命題であったため、いわゆるトヨタ生産方式とよばれる厳しいコスト管理を徹底し、不要不急な施設は作らない方針を貫きました。
 その結果、当初計画の総事業費は7680億円であったところ、6434億円で完成したのです。何と16%も経費を節減したのでした。一度計画を立てたら事業は止まらない、一度予算額を決めたら全額使い切る、という行政や独立行政法人の発想とは真逆だったのです。
(このあたり、経済評論家の財部誠一さんのレポートにくわしく記載されています。リンクはこちら

 もちろん、良い話ばかりではありません。行ってみると感じますが、中部国際空港は関空や成田に比べると質素、機能優先で、華やかさがありません。アクセスも意外に不便です。
 しかし、こういった問題は枝葉の話で、民間の知恵をうまく使えば、充分な機能は保持しつつ、コストは削減するという夢のような話も可能になることがある、という良い事例ではないでしょうか。

 不思議なことですが、トヨタがちやほやされるのはあくまでも自動車メーカーとして、もっと言えば儲かっている会社としてであって、コスト削減とか作業効率向上のノウハウも大変優れているのに、それが日本国内ではまり評価されていないような ~というか、そもそも知られていないような~ 気がすることです。
 効率が悪く生産性が低い日本の商業や―サービス業、なかんずく行政のような分野には、もっと製造業の知恵やノウハウを取り入れていくべきです。その先駆として新国立競技場も「トヨタ方式」で仕切り直してはどうでしょうか?

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