2015年7月20日月曜日

熾烈な学生獲得競争・・・

朝刊の折り込みチラシを何気なく見ていたら、追手門学院なる大学の「無料バスツアー」の広告が入っていました。

 三重県では正直、あまりなじみがありませんが、追手門学院大学は大阪府茨木市にあり、経済学部など6つの学部と、4つの研究科からなる大学院を持つ総合大学です。教員は非常勤も含め335人、学生数は約6400人とのことなので、そこそこ規模も大きい大学です。三重県内には現在7つの4年制大学がありますが、最大規模を持つ三重大学(国立)でさえ学生数は6千人足らずなので、もし追手門大学が三重県にあれば県内で最大の大学になっているはずです。

 しかし、おそらく大阪府内には数十校近くの大学があるでしょうから、いかに多くの人口を抱えている関西圏であっても、これから先の若年人口減少を見据えると、大学サイドとしては一人でも多くの学生を近隣府県から獲得したいということなのでしょう。
 追手門学院大学のこのチラシの内容は、7月と8月に開催されるオープンキャンパスに参加する高校生のために往復無料のバスを運行するというもの。三重県分のバスは、大阪に近い伊賀地区だけでなく、伊勢市を出発して途中、松阪市と名張市に寄り、奈良市を経て大学に行くルートになっています。


 四日市市など北勢地域や津市などの中勢地域をルートから外してあるのは、三重県の北中部は名古屋文化圏で進学者の大多数は愛知県の大学に進むため、当初からPR対象外とみなしているのではないでしょうか。
 しかし、驚くべきは、この往復無料バスは三重県だけではなく、広島、岡山、愛媛、香川、徳島、石川、福井、滋賀、そして和歌山の各県の高校生も対象としており、全部で6ルートも運行していることです。
 広島や愛媛から大阪に進学とは、当然にマンションなどに一人住まいとなりますし、物心両面でハードルは高そうに思いますが、しかしそれでも大学側としては、相当に本気でこの方面からの学生獲得を考えているということでしょう。

 ひるがえって、三重県内の大学を見てみると、ハッキリ言ってここまでアグレッシブに学生獲得の活動に取り組んでいるところはないのではないでしょうか。
 三重県庁のホームページにもあるように、三重県の大学、短大といった高等教育機関が抱えている問題の一つは、三重県内の高校卒業生が三重県内の大学に進学する数、いわゆる「県内進学率」が全国的に見ても非常に低いということです。 
 平成25年に大学に進学した約8300人の進路を見ると、三重県内の大学などに進学しているのは1600人。わずか19%に過ぎません。
 残りの6700人ほどは県外に進学しており、中でも愛知県の大学への進学者が、その約半数を占めています。
 この理由は明白で、圧倒的に進学先として多い、経済学部、商学部、経営学部、法学部、外国語学部といった人文科学系、社会科学系の学部が三重県内の大学にはほとんどないからです。
 
 この理由は、三重県には産業構造を、行政や企業、高等教育機関が連携してデザインするという機能が存在しなかったからです。言い換えると、高等教育機関がたくさんある名古屋圏と関西圏で、三重県の産業に必要な人材育成は十分可能であったわけです。

 しかし、ここに来て、三重県に限らず全国的に若年人口の減少が「消滅可能性都市」などとセンセーショナルにクローズアップされ、人口を再生産するために必要な若年者をみすみす県外に流出させるのは好ましくなく、地域内に囲い込んで定住させ、子どもを作らせよう、という政策的な必要性に注目が集まってきたのです。

 今後、三重県では ~三重県に限らず、全国の地方にある県では~ いかに高卒者を自県の大学に進学させ、あわよくば隣の県からも進学者を呼び寄せ、さらに大学卒業後は自県の企業に就職させるか ~地方においてはほとんどの企業は中小企業~ という問題が至上命題となり、そのために多額の予算が投入されることになるでしょう。
 これについては、立場によってさまざまな意見があり、賛意も、もちろん批判もあるでしょうし、それぞれごもっともなのですが、しかし、全国の各県で競争になってきた以上、三重県だけがそれをやらないわけにはいかないのです。

 しかし、忘れてはならないのは、この問題の主役はあくまで大学であり、学生(進学者)であるということです。学生を獲得するために、自校の魅力を高め、それをアピールすることはまず第一歩で、そもそもこの時点で三重県内の大学は、少なくとも追手門学院大学に一歩も二歩も遅れているのではないか、と感じざるを得ません。

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