2015年7月26日日曜日

東芝への集団訴訟はネットで簡単に参加できそう

 第三者委員会の報告書により、経営トップを含めた組織的関与があり、見かけ上の利益のかさ上げをする目的で意図的に行われたものがある、と指摘された東芝の粉飾決算(不適切会計)問題ですが、アメリカの法律事務所であるローゼン・ローファームが、予想された通り、と言うか、投資家らに対して集団訴訟への参加を呼びかけています。

 東芝の不正会計は先先代の西田社長時代の7年間前から行われ、1562億円もの規模に達しています。ローゼンのホームページによると、原告となり得るのは、2012年の5月8日から、東芝が今年3月期の業績予想を取り下げる前の5月7日以前の間に株式を購入した投資家で、訴訟への参加を希望する人はホームページ上の"Join This Class Action"(この訴訟に参加する)を「クリック」し、必要な情報を入力してローゼンに提出することで手続きが完了します。
 東芝はアメリカでは株式上場をしていませんが、株を裏付けとした預託証券(ADR)はアメリカ国内で広く流通しており、今回のローゼンによる集団訴訟も、「米国内で取引されているADRを購入した投資家が対象」となっているとのことです。

 ちなみに集団訴訟とは、クラスアクションと呼ばれる民事訴訟の一つで、アメリカ独特の(日本には同じような訴訟の仕組みはない)ものです。

 たとえば、ある消費者がデジタルカメラを購入し、何か(結婚式の様子とか)を撮影したとします。しかしカメラの不具合によってうまく写っていなかったような場合、日本なら消費者がメーカーや電器店にクレームを言い、修理なり交換なりをしてもらうところですが、アメリカではこうした事態が発生すれば、デジカメを購入した人が企業を訴えることができます。

 しかも、一人では請求する金額が小さくて、訴訟にかかる費用のほうが企業からの賠償額より大きいようなケースなら、一人で訴えるのではなく、そのデジカメを購入して同じような症状に悩んでいる人たちが集団で訴えることができるのです。(アサミ経営法律事務所のホームページより引用)
 最近も
・米国でニコンのデジタルカメラを購入した消費者が製品の欠陥と不当表示を訴え、同社に損害賠償などを求める集団訴訟を提起した事例(日本経済新聞平成26年3月10日(月)朝刊より)
・米国でトヨタの車を購入した消費者らがエンジン関連の欠陥を訴え、同社に損害賠償などを求める集団訴訟を提起した事例(日本経済新聞平成26年4月28日(月)朝刊より)
 などがあり、エアバックの動作不具合が問題となっているタカタも、同じようにアメリカで集団訴訟を起こされています。
 今回の東芝のケースは製品の欠陥や不具合ではないので、ADRを購入した投資家が、東芝の粉飾決算に騙されて本来投資すべきでない債券を買ってしまった、もしくは株価が下落したことで期待利益を失った、という点で東芝を訴えるということになるのでしょう。

 日刊ゲンダイの記事によれば
 ある意味、集団訴訟は米国の弁護士にとって“おいしいビジネス”。法律事務所は、和解金や賠償金の約10%を弁護料として受け取ることができ、東芝ほど名の通った企業なら、必然的に(集団訴訟への)参加者も多くなり、請求額も大きくなる。彼らにとっては垂涎の的でしょう。
 との有識者のコメントが載っています(リンクはこちら)。
 多くの場合、集団訴訟は被告企業が損害賠償を支払うことで原告と和解することが多いので、東芝が一連の粉飾決算対応として特別損失として計上する700億円は、アメリカでの集団訴訟への和解金として使われてしまう可能性があるとのことです。

 一方で、ダイヤモンドの記事によると、近年はアメリカの裁判所も集団訴訟に対して原告側に対するハードルを上げる傾向がみられるとのことです。原告適格認定の適正化や、原告側の弁護士費用(法律事務所が受け取る10%の手数料)の適正化などが見られるそうで、この点は東芝に有利かもしれませんが、まったく予断は許さない状況です。(リンクはこちら

 わしが興味深かったのは、ちらっと見てみたローゼンのホームページです。
 この Join A Class Action というコーナー(?)には、3Dプリンター製造大手の3Dシステムズ、通信大手のAOLなど、数十社の企業がリストアップされており、それぞれ業績見通し算出の不適正や、会計処理の不適正などの理由でローゼンが集団訴訟を提起しており、それに訴訟参加する投資家や消費者を広く呼びかけているのです。

 申し込みは上述のように、オンライン上で済ませることができます。氏名住所などの記入、いつ、いくらで株を買ったか、現在どのような利害関係があるか、のような質問に記入していくと、最後にパソコンのマウスを使って署名する欄があって、ここにサインして提出すれば手続き完了です。事前に資料さえ準備しておけば、おそらく小一時間で入力することができるでしょう。

 集団訴訟は、大企業の横暴や不正を是正し、再発を抑制する効果を持つ面があるのは確かですが、企業の不祥事に乗じて、漁夫の利を得ようとするような動機の不純さも感じるのが正直なところですが、しかしなるほど法律事務所もここまで「サービス」に徹していれば、訴訟が一つのビジネスになるのだなあと、妙に感心した次第です。

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