2015年8月2日日曜日

海女のアイドルグループにイヤな気がする理由

 鳥羽市が「昭和の海女アイドル」なるものを募集しています。同市ホームページによれば、昭和の海女アイドルとは鳥羽の魅力を全国にPRすることを目的に結成され、平成28年3月31日までを期限として活動するユニット。プロデューサーには鳥羽市出身の演歌歌手鳥羽一郎さんが就任します。
 選ばれたメンバーは、レコーディングとプロモーションビデオ撮影を経て、大手有名レコード会社よりCDデビューをするほか、CD発売後は東京で開催されるイベントに鳥羽一郎プロデューサーと一緒に出演をします。
 応募資格は、「鳥羽市内で海女として活躍されている方(年齢は不問)」、「オーディションやレコーディングなど一連の活動に参加できる方」、「心身ともに健康で、楽しくPR活動できる方」となっており、8月14日が締め切りとなっています。
 鳥羽市には現在も約500名の海女がいるそうです。潜水してアワビなどを採取するという原始的な漁業であり、技術が必要なうえに体力的にもきつい仕事のため、今では通常の漁業者と同様にほとんど後継者がおらず就労者(海女)は急速に減少しています。このため、鳥羽市などの行政や関係機関は、ユネスコの無形文化遺産に登録しようという動きさえ起こっています。

 このブログでは何度も書いているように、わしはもともと鳥羽市出身なので、鳥羽市の主力産業は観光業であって、多くの市民が宿泊業や飲食業、運輸業やクリーニングといった観光関連産業に従事していることを知っています。伊勢志摩サミットの開催を控えて、今が絶好のプロモーションのチャンスと考えることも理解はできますが、それと同時に、わしは何とも名状しがたい違和感というか、もっと言えば知名度向上のためにはなりふり構わぬ「品のなさ」を感じてしまうのが正直なところです。(わしが知る限り、鳥羽市民の意見も賛否両論あるようです。)

イヤな気がする理由 その1
 海女が鳥羽市も含む志摩地域の伝統漁法、伝統文化であるのは自明のことです。同時に、水産資源保護など様々な理由があって生産性が低い漁法であるため、これだけで生計を立てることは難しく、伝統的な漁村共同体や大家族制が弱まっている現代では就労者の減少(=高齢化)も致し方ないことで、これを行政が支援して振興していこうとすること(と言うか「保護」していこうとすること)も意味はあることです。
 しかし、海女だけが参加対象となる、しかもまったく海女漁と関係がない「アイドルグループ」を結成するなど、要するに海女を見世物にした話題作りでしかないのではないでしょうか?
 もっとも、海女が(鳥羽・志摩地域では)女性だけが従事できる職種であったことや、磯着や潜水メガネなど独特のコスチュームなこともあって、古くから海女は「観光資源」であり、観光客にショーとして海女漁の実演が披露されてきたことは事実です。なので、当人たちも割り切っているかもしれませんし、部外者があれこれ言うことでもないかもしれません。
 しかし、「アイドルグループ」はやや悪乗りが過ぎる気がしてなりません。

イヤな気がする理由 その2
 今回の昭和の海女アイドル公募については三重県内の各紙が報じていますが、やはりいつもながらと言うべきか、この事業には費用がいくらかかり、その財源はどこから出るのか、はほとんど報じられていません。
 鳥羽市の事業なので税金が使われ、レコーディングやイベントも開催されるというのですから、それ相当の ~おそらく数百万から数千万円の~ 費用は掛かることでしょう。
 あくまでわしの推測ですが、当初心配された通りほとんど国(政府)による地方へのバラマキの様相を呈してきた、地方創生交付金がこの事業の財源ではないかと思います。
 地方創生交付金は、地方での消費喚起やこれに直接効果を有する生活支援策とか、地方での「しごとづくり」などに活用できるものです。ある意味、これらの目的のためで、一定の要件を満たせば、自治体が比較的自由に使うことができます。多くの地方自治体が財政難にあえぐ中、干天の慈雨のような政府の温情です。
 ところが、いざふたを開けると、全国の自治体による使途は似たり寄ったりの内容や過去から行ってきた振興策の焼き直しがほとんどです。最もわかりやすい例として全国の市町村が発行している「プレミアム商品券」のように、果たしてどれくらいの経済効果があるか不明ではあるものの、財源はただ(交付金)であるし、隣の市町村もやっているので自分達だけがやらないわけにもいかないという「チキンレースの論理」でまたたく間に全国に広がってしまいました。
 政府が期待しているような、その自治体独自の施策内容であって着実に効果が挙げられそうな事業があまり見当たらないのが実際のところです。
 仮にこの海女アイドルが地方創生交付金事業だとしたら、これはやはりムダ遣いの疑念が振り払えない典型だと思います。打ち上げ花火としての効果はないとは言えませんが、持続可能な制度ではないからです。

イヤな気がする理由 その3
 わし的にはこの理由が最も大きいのですが、この昭和の海女アイドル事業は、効果測定が非常に難しく、かつ、おそらく鳥羽市も国も、事業後の効果測定は行わないであろうということです。
 もちろん、テレビや新聞雑誌に取り上げられたPR効果は測定できるでしょうが、今後継続して取り組んでいくべき、海女就業者の増加や、鳥羽市の人口維持、市民所得維持にどういう効果があったかを測定することは至難の業です。おそらくグループのメンバーに選ばれた海女さんたちの思い出づくり以上の意味はないでしょう。市役所として、市民の生活を向上させるような、もっと他の仕事は本当にないのでしょうか。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

海女漁の実演は海女の技術がないとできないですが、アイドルに海女の技術は不要だと思うので海女さんがアイドルをやる意義がさっぱりです。
ステージに水槽を置いて実演をするわけでもないでしょうに。

半鷲(はんわし) さんのコメント...
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