2015年8月11日火曜日

世界初!三重県が人工伊勢えびを自然放流へ

 三重県水産研究所が8月11日、同研究所内で平成26年4月に人工的に孵化(ふか)させて飼育していた稚エビ25匹(体長8~12cm)を志摩市沿岸の海底に試験放流しました。今後、生息状況などを調査し、約一年後に捕獲して生存率も調べるそうです。

 伊勢えびが三重県を代表する特産品であり、漁獲量も約240トン/年と千葉県と並んで有数の漁場であることは広く知られています。
 しかし、県立の漁業・養殖技術の研究所である三重県水産研究所が、伊勢えびの人工孵化と飼育技術において日本で最も先進的な研究成果を誇っていることは全国的にもほとんど知られていません。
 三重県にしては極めて珍しい、世界初の快挙ともいうべき人工伊勢えびの放流のニュースも、地元のメディア以外ではほとんど取り上げられていません。 

 三重県水産研究所の前身であった三重県水産試験場では、何と昭和5年から「いせえび孵化飼育ニ関スル研究」なる記録が残っているそうで、爾来、太平洋戦争による中断期間などはあったものの、現在まで連綿と伊勢えびの人工養殖に関する研究が重ねられています。


 読売新聞(YOMIURI ONLINE)の記事によれば、三重県水産研究所では昭和63年に世界で初めて、人工孵化した幼生(フィロゾーマ)を稚エビまで飼育することに成功しました。

三重県水産研究所HPより
 しかしこのフィロゾーマは ~写真を見ると何だか宇宙生物のようにグロテスクですが~ 飼育環境下では病気にかかりやすく、約1000匹のフィロゾーマのうち稚エビになるのは1匹だけというほど生残率が低かったため、この向上が懸案となっていました。

 今から5年ほど前、海水を回流させて自然の状態に近づける円形の水槽を導入。2年前には、水槽の側面を黒い板で囲い、外部からの光を制限することで、海中に近い安定した飼育環境を作り出しました。
 その結果、現在は稚エビまでの生残率が6割に向上し、天然の伊勢えびなら卵から孵化して稚エビになるまでに約1年かるところ、飼育期間も8か月ほどに短縮することに成功しました。

 放流試験に関しては、今後、稚エビの生息状況や密集度などを調べ、1年ほどで漁獲可能な約150グラムにまで成長することから、何匹捕獲できるかを調査するとのこと。
 同研究所の松田浩一主幹研究員は、「試験放流による調査結果を稚エビが居付く漁場づくりなどに役立てたい。稚エビの安定供給に向け、今後も人工飼料の開発や水槽の改善を重ね、さらなる飼育技術の向上に努めたい。」と話しているとのことです。(8月8日付け リンクはこちら

 わしはよく思うのですが、水産業は長期衰退傾向で、行政による振興策が不可欠だと言われ、実際にさまざまな施策が莫大な税金を投じて行われています。しかし、魚介のブランド化や販路開拓、後継者の育成などは所詮は枝葉の話であり、漁業という有限な水産資源を採取したり養殖したりする産業においては、基本的には水産資源の適正管理と養殖技術の確立や高度化、密漁の取り締まりといった施策こそが行政の役割であり、行政による産業支援はこのような分野の事業に集中し、深化させるべきだと思います。

 伊勢えびのように価格も高く、したがって漁業者にとって付加価値の高い水産資源の育成は、まさに三重県外の他の漁場と差別化できる大きな要因です。ぜひ今回の世界初の放流試験の成功を祈りたいと思います。

■三重県水産研究所  http://www.mpstpc.pref.mie.lg.jp/SUI/index.shtm

Mie Prefectural Fisheries Research Institute,Japan,began the discharge test of Ise-shrimp(spiny lobster) from August 10. These 25 of the Ise-shrimp are artificially hatched, grew into juvenile shrimp. This farming technology only this Institute have all over the world.

0 件のコメント: