2015年8月25日火曜日

ケーズ開店で尾鷲に家電戦争が勃発か?

ケースデンキHPより
 尾鷲市内を縦断する幹線道路、国道42号沿いに8月27日、大型家電量販店のケーズデンキ尾鷲店がオープンします。
 ケーズデンキとしては三重県で15店舗目となる尾鷲店は、面積約2000平方メートルとのことで家電量販店としては中規模です。
 しかし尾鷲のことをよく知る人にとっては、地理的条件により閉鎖された商圏のイメージが強い尾鷲市内に、すでにこの店から1kmほど離れた場所に家電量販店であるエディオン尾鷲店があるにもかかわらず、なぜ同じような大型店が出店してくるのか、不思議に感じることでしょう。

 尾鷲市の商圏については、経済産業省が毎年作成している「中小企業白書」の2011年版に取り上げられたことがあります。
 人口10万人以下の都市雇用圏(はんわし注:経済圏とか、商圏と読み替えて差し支えありません)が全国に39あるうち、小売業の従業者数が50人以下である事業所の販売割合が最も高い地域が尾鷲市と紀北町から成る「尾鷲都市雇用圏」であることを解説したものです。
 小規模な商店などの販売額が高い理由として白書は、平地が少ない尾鷲都市雇用圏の都市構造や交通インフラ、そして、人口が分散しているために大規模店舗が出店しにくく、結果的に従業者数50人以下の事業所の販売割合が高い、ことを挙げています。(くわしくは、はんわしの評論家気取り 2011年版中小企業白書に「尾鷲市」が 2011年7月8日 をご覧ください。)
 しかし、今ここへ来て、尾鷲市に2店めの家電量販店がオープンします。白書の分析した前提である都市雇用圏、すなわち尾鷲市の経済圏、商圏が、ここ1~2年で大きく変わっていると見るべきでしょう。


 その理由は言うまでもなく、平成26年に尾鷲北ICまで全通した高速道路「紀勢自動車道」によるものです。
 多くの関係者は、高速道路開通に関して、四日市や鈴鹿といった三重県北部の都市や、愛知県、岐阜県などからのアクセス利便性が向上したことを強く意識しがちです。しかし国土交通省紀勢国道事務所の調査などが指摘するように、高速道路と一体運用されている自動車専用道路「熊野尾鷲道路」が尾鷲(尾鷲南IC)から以南の、熊野市や新宮市などとのアクセスを劇的に向上させたことも決して見逃せません。
 すなわち、従来は急カーブと峠道が連続する国道42号矢ノ川峠を隔たれていた尾鷲市と熊野市が、熊野尾鷲道路ではほぼ直線道路で、わずか20分ほどの所要時間に短縮されました。
 このことは、観光客やビジネス客が相対的に多い北からの高速道路よりも、同じ東紀州(三重県南部の、尾鷲市、熊野市、紀北町、御浜町、紀宝町の2市3町からなる地域)の生活圏に属する熊野市や御浜町、紀宝町、さらに和歌山県新宮市の住民が、買い物やちょっとしたドライブに尾鷲までやって来る機会を開拓したと捉えるべきでしょう。

 尾鷲商圏の人口は4万人足らずに過ぎませんが、熊野市以南の移動時間が1時間程度の人口を含めると一気にあと7万人近く増加します。買い物客は、買い物をする際に品物や値段を比較しやすい、商業機能が集積している場所を望むので、家電店が2つあることは顧客を誘引するうえでの強みになります。
 実際に、高速道路開通以降、尾鷲市にはすき家(牛丼店)、ファミリーマート(コンビニ)、コメダ(喫茶)などのフランチャイズ店が続々と誕生しており、商業環境は大きく変わりつつあります。
 画一的ではあるものの、一定レベル以上の品揃えや接客ができるフランチャイズ店は、地元民には新鮮であり、観光客には安心感があります。

 このような状況の中、ナショナルチェーンに対抗できないローカル資本の店が淘汰されることは目に見えています。生き残るためには、経営者による経営革新の取り組みに期待するよりありません。大型店がやって来るほど尾鷲の商圏は拡大しているのですから、やりようによっては新たな顧客開拓も可能性はあるはずです。

 ただ、ここまではあくまでわしの推論です。
 ここから先、重要になるのは、本当に商圏は拡大しているのか、どれくらい拡大しているのか、広域化した尾鷲商圏の中で不足している業種は何で、自店はどの部分で差別化ができるのか、といった現状把握と現状分析、そして戦略作りです。
 このためには客観的で正確なデータが必要になります。確かな証拠を基に考えなければ、それはあくまで当て推量だからです。

 過去には三重県庁が、県内の各商圏で3年に1度の商圏調査(買い物傾向調査)を行っていましたが、行革で廃止され、今は行政機関が定期的に行っている都市圏の商圏調査はありません。
 もし仮に県や市が商工振興を本気で行うのであれば、商圏調査を早急に行う必要があるのではないでしょうか。このような実態調査こそ、民間ではできない行政機関にしかできないことであり、言い換えれば、真の地域振興のために行政がやるべきことなのです。

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