2015年9月9日水曜日

もうかる農林水産業のためのビックデータ・IoTセミナー

 三重県主催により、「もうかる農林水産業の実現に向けたビックデータ・IoT活用セミナー」が開催されるようです。富士通の関連会社が講師を務める、非常に興味深い内容なのでメモしておきます。
 農林水産業がはたして儲かる産業と本当に呼びうるのかどうかは疑問な面がなくはありません。しかし、いわば見果てぬ夢だった「儲かる農林水産業」が、ビッグデータやIoTといったICT(情報通信技術)によって実現できる可能性がわずかでも高まってきたのは事実でしょう。
 マーケティング、商品の開発、生産、流通、を一貫して把握し、コントロールする「バリューチェーン」という考え方は、製造業などでは常識で、中小企業にもかなり浸透しています。
 しかし農業や水産業にはこの概念そのものが浸透していません。バリューチェーンの確立にICTは強力な支援になりますし、すでに富士通にはイオンとタイアップした成功事例もあるようなので、このセミナーでもその内容が取り上げられるかもしれません。


 ただし、問題もあります。
 まずICT活用に共通の問題です。ビッグデータ、クラウドコンピューティング、IoTなどといった華々しいキーワードは踊りますが、経営者(や農林水産業者)に対して、ICTを活用したら具体的にどのように課題が改善し、最終的にどのようなメリットが生まれるのかがなかなか説得力を持って説明されません。
 ベンダーはシステムの話しかしませんし、では中小企業や農林水産業者で誰がパソコンをオペレーションするのか、そして肝心な、どれくらいのコストがかかるのか、などもよくわからないままです。
 さらに、農林水産業特有の問題もあります。これらは小規模な個人経営が多く、マーケティング、生産、流通が分業制なので、そもそも川上から川下までのビジネス全体を把握している人が誰もいません。
 従って、ICT活用ができる余地があるのは ~データ解析で明らかになった課題を解決するという能力も含めて~ 三重県のような行政が好きな個々の農家、漁家ではなく、農業ブームに乗って新規参入してくるような、大規模投資が可能な資力を持つ農業企業(アグリ企業)が中心になるものと考えざるを得ません。

 農業、水産業、林業といった産業が「儲かる産業」になるためには、販売価格が生産コストを上回り、しかもそうした生産が持続できること、が(当たり前ですが)必須条件です。このためには一定の労働投入に対して生産価値を増やす営み、つまり生産性向上の取り組みが不可欠になります。
 製造業や流通業、サービス業などでは企業の競争はこの生産性の競争が主戦場になっているので、生産性が低い企業は退場し、つまり廃業したり倒産したりして市場から淘汰されて、生産性が高い企業が成長する、そして、さらに高い生産性を目指す企業が新規参入してくる、という市場競争の存在がそもそもの大前提になっています。
 言わば優勝劣敗の原則なので、農林水産業を儲かる産業にするには、この市場原理に農林水産業も従わざるを得ないことになります。(というか、市場競争に勝たなければ、そもそも儲からないわけですから。)

 行政が旗を振るこの手の「儲かる農林水産業セミナー」なんかは、実はこの基本的な哲学とかスタンスがよく見えない ~あるいは、ぐらついている~ ので、ツールとしてのICTを普及させても、では、その先に農林水産業がどうなるかが見えないのです。 

 しかしまあ、いずれにしても三重県内ではおそらく初の大変貴重なセミナーなので、関心がある方は参加されてはいかがでしょうか。


■三重県公式ウエブサイト 


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