2015年10月14日水曜日

伊賀市と名張市を取り違えたわけ

 三重県(庁)は、10月5日から発売を開始した「2016年版三重県民手帳」の資料編「三重県の市町紹介」の地図上において、名張市と伊賀市の表記を逆に記載するミスがあったと公表し、謝罪しました。
三重県印刷工業組合ホームページより
 伊賀タウン情報ユーによると、岡本伊賀市長は「三重県民手帳は、三重県がお出しになっているものです。その三重県が、基礎自治体の名称を取り違えることは、信じられないことです。伊賀地域に対する認識がこのようなものかとあきれるばかりです。」とコメントし県の姿勢を批判しました。(10月7日付け)
 三重県内には市町が29しかありません。県庁が監修する印刷物において、その数少ない県内の市町の表記を誤ることは極めて異例だと言えるでしょう。
 不思議なのは、県の職員なら生理的に理解できるように、南北に細長く、中部圏から関西圏にわたる三重県の地勢上、あらゆる県行政において全県のバランスを考えるのが県職員の習性です。にもかかわらず、なぜこんなことが起こったのか。


 たとえば何かで県が10の団体を表彰するとします。この時、北勢は4、中勢は3、南勢志摩は2、伊賀か東紀州で1、というふうに全県に均等に行き渡るかどうか、全体を俯瞰して地域ごとで不自然な凸凹がないかをまず真っ先に考えるのが県職員の思考回路なのです。北勢1、中勢3、南勢志摩1、伊賀3、東紀州2というふうにはあまりしたくないのです。人口分布、経済規模から見てバランスが取れていないように映るからです。
 言い換えれば、このバランス重視、全方位目配りという思考パターンから照らすと、今回の県民手帳の記載ミスは単純な見落とし、ケアレスミスであると強く推測できます。もちろん重大なミスは許されませんが、人間である以上ゼロにすることもできません。善後策として訂正シールを配布するとのことなので、現実的には妥当な対応策ではないかと思います。
 ただしかし、わしも我ながら二律背反することを書きますが、津市にある三重県庁にあって、伊賀地域の存在感が今一つ低いこと。これもまた事実ではないでしょうか。

 県庁ビルの最上階、9階からの眺めは最高です。晴れた日には、北は多度山、藤原岳から野登山に連なる鈴鹿山脈と、伊勢湾の海岸線沿いにコンビナートの煙突群や、鈴鹿、津の街並みを見下ろすことができます。南は津の市街地から、松阪、伊勢方面、さらに鳥羽市の離島である神島や答志島も大変よく見えます。これらの地域は旧国制でいう「伊勢国」であり、伊勢平野を中心に地理的な一体感と、古くから伊勢湾の海運を通じて愛知県と交流が深く、文化的にも名古屋圏と親近感があります。
 その一方、伊賀市と名張市は旧「伊賀国」であり、たまたま江戸時代に津の藤堂藩の領地だったため明治に三重県に編入されたものです。もともとは関東と関西の中間にある山国で伊賀独自の文化を持ち、現在は経済や文化は関西圏に属しているということができます。(ちなみに、三重県庁からは伊勢と伊賀を隔てる分水嶺・青山高原(布引山)の、ぺたーっと長い山状もよく見えます。伊賀はあの山の向こうです。)

 見える見えないで議論するのも乱暴ですが、しかし、このように住民の生活圏が、一方は名古屋圏(というか、環伊勢湾)、一方が関西圏なので、実質的に日常生活の接点や連帯感は希薄です。最近では伊勢湾側で伊賀のニュースと言えば、観光PRのために忍者協会だかを作った、というような程度のもので、実は地方財政制度や地方自治制度そのものに関わる政治的事象である名張市の固定資産税の超過課税問題についてはほとんどまったく報じられていません。地方財政は全国的にどの自治体も厳しく、名張市の問題はまさにそれを象徴する、日本の先行きを示すケーススタディであるにもかかわらずです。

 このような無関心というか、無知というかがお互いに横たわっているので、生理的には信じられないミスではありますが、ひょっとするとたまたま担当者の調子が悪く見落としてしまったのかもしれない、という推理は成り立ちます。(わし的には)
 このことは、たとえば、では同じように隣接している鈴鹿市と亀山市を取り違えるとか、松阪市と伊勢市を取り違えることが1%くらいしか考えられないとすると、伊賀と名張は3%くらいはあるかもしれないという印象です。
 補足すると、これと同時に県職員の無知による間違いもあり得るので、その例を引いておくと、川越町と朝日町を白地図上で間違える確率は25%、度会町と多気町を間違える確率は30%くらいあると思います。

 言い忘れましたが、このような「考えられないミス」が起こる重大な理由がもう一つ思い当たります。
 ありていに言えば、県行政に緊張感がなくなったことです。
 県議会には怖い議員がいなくなりました。みなスマートで、理解力の高い先生ばかりです。鋭い指摘はいただきますが、それをあげつらってちゃぶ台返しするような議員はまったくいないのです。実質オール与党なのは執行部にとっては緊張感を低下させる第一因です。
 もう一つは、かつての市民オンブズマンのような筋を通す県民もいなくなったことです。10年前だったら今回の県民手帳の誤植に対しても住民監査請求が起こされて真相究明がなされ、重過失が疑われれば住民訴訟が起こされたでしょう。今はその可能性はほとんどありませんし、事実発覚後1週間がたちますが、その気配は報道されていません。
 

1 件のコメント:

企業に勤める一県民 さんのコメント...

私も環伊勢湾に在住するものですが、私自身も伊賀地方が三重県という感覚は確かに薄いと感じています。地図では見れば近い距離かもしれませんが、交通手段が限られているため、伊賀地方へ遊びに行くのは、ちょっとした旅行気分です。
さて、一県民・一企業人の立場として、印刷の間違いに対して、訂正シールの配布が善後策と簡単には言い切れません。間違いに対し、その発行部数だけのシールを印刷し、配布となるとどれだけのお金が費やされるのでしょう。その金額はどれだけ売上を取れば解消できるのでしょう。委託した印刷会社がミスをしたのかもしれませんが、チェックは当然発行者である県が(担当者が)しなければなりません。委託先のせいにはできないのです。企業がパンフレットを作成する際は、一字一句チェックして当然ですし、複数の人の目を通して、読み合わせをして確認するのが当然です。県職員の無関心・無知からくる間違いの確率をはんわしさんは述べていますが、こんなことが起こっているとしたらナンセンスです。知らなかったら、自信がなければ地図を見たらいいだけの事。発行担当者(担当部署)の県職員としてのプライドはないのかしら、とも思えます。
ちょっとした間違いだから訂正で済む、などと軽はずみな考えはしていないと思いますが、一般企業であればどうなのか(その余分な予算を、そして自分たちの給料を捻出するために必死に売上をとる、経費節減の努力をしている)を考えることで、怖い議員に変わって公務員の緊張感につなげてほしいものです。