2015年10月22日木曜日

龍神村立体育館に行ってみた

 先般の連休、成り行きで和歌山県の龍神村に行く機会がありました。龍神温泉で有名な山村です。
 行政上は田辺市に属しているのですが、道路標識などには「田辺市龍神村」と書かれており、地元の人に、ここは田辺市と合併したのですか?と聞いても、「そう合併したの。だけど、ここは龍神村。」と異口同音にこういう調子で、要するに龍神「村」ということに皆さん誇りを持っていて、その名前は変えていないということのようです。
 それはさておき、先日このブログで、木造の大型建築のことに触れたのですが、龍神村には木造による大型公共建築の全国的な先駆例として 龍神村立体育館 という建物があるそうなので立ち寄ってみることにしました。


 龍神村立体育館は国道425号線沿いの運動公園の中にあります。まわりには高い建物はほとんどなく、かなり遠くからでも見つけることができます。

 (ほぼ)日本で最初の ~古い神社仏閣などは別として、現代の建築法令に基づいた~ 大型木造建築と聞いていたのですが、1階部分はコンクリート製だったのでやや拍子抜けしました。
 しかし、よく見てみると、2階のバルコニー部分は木造になっています。つまり、木造とRC造を合体した、ある意味で斬新なデザインです。



 建物の付近に、公共建築では必ずある銘板が建っていました。
 それによると、この体育館は昭和60~61年度の山村林業構造改善事業(いわゆる「林構」事業)により林業者等の健康増進施設として建設されたものです。林構事業とは、斜陽化が進んでいた林業を保護するために全国の山村にばら撒かれた財政支援措置で、木材の加工施設などの他にレクリエーション施設や交流(観光)施設にも使える、という、山村側にとってはうまみのある補助金・起債制度であったと言われています。(起債は簡保資金)
 龍神村立体育館が、実態は村民や児童生徒向けの体育施設でありながら、「林業者等の健康増進」をうたっているのもこのためです。
 それはさておき。
 銘板によると、建物面積は927.33㎡で、木造コンクリート造混構造。主要構造が龍神杉の集成材。竣工は昭和62年3月だったとのことです。

 わしが熱心に銘板を見ていたら、掃除していた方が「見学ですか?」と声をかけてくださいました。
建築マニアは多いのかもしれません。三重県から来ましたと言うと、今日は中は使っていないので、もし中が見たければ入っても構いません、とのこと。ありがたいお申し出で、お言葉に甘えて内部に入らせていただきました。

 2階から内部を見るとこんな感じです。天井が集成材によるトラスなのがわかります。大変印象的です。


 また、2階の壁面が格子状木造カーテンウォール(と言うのだそうです)になっています。


 確かに中に入ると、木造独特の温かみを感じます。
 今となっては、この種の木造トラスも決して珍しくはなくなっていますが、今から30年近く昔、これだけの規模のものを木造で建築したのは確かに英断だったのかもしれません。
 しかし、有名な林業地として、公共建築が木造であることは象徴的な意味を持つことは間違いありません。ここでスポーツをして育った子供たちにも、情操的にはきっと良い効果があるのではないかと思います。
 ただ、難しいのは、ネットで調べると、総工費が1億8500万円だったということです。これが高かったのか安かったのかも今となってはよくわからないのですが、直後の平成5年に竣工した龍神村役場庁舎が主に費用的な問題でRCになったらしいことを知ると、やはり費用対効果はよくよく検討し、そのうえで村の林業振興の姿勢や子どもたちへの効果も総合的に判断して構造を決定することが重要なのだと思います。


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