2015年10月5日月曜日

公共建築に木なんて使っているの?

 京都新聞が、京都府内において全国的にも例が少ない高層建物を木造で建築する動きが広がり始めていると報じています。(10月4日付け 「木造高層建築、京都で広がる 府内産材で林業振興期待」)
 京都府向日市では阪急洛西口駅前に5階建ての商業ビルが計画されています。1階は鉄筋コンクリート造ですが2~5階は木造の2×4(ツーバイフォー)工法が用いられ、工事業者は「木造であれば、仕事が減りつつある大工の技術伝承につながる。二酸化炭素排出量も削減できる。」とコメントしています。
 また、京都市中京区でも京都木材協同組合が鉄筋コンクリート造だった京都木材会館を、特殊な工法により耐震性や耐火性を高めた木造4階建に建て替えるとのこと。設計事務所は「木造高層物の普及に向けた先進事例となる。林業の活性化につなげたい」とコメントしています。
 京都新聞によると、木造の大規模建築物は近年、保育所や体育館など低層の公共施設で広がっていますが、民間の高層建築物は関東では2×4工法の共同住宅などが数十棟あるものの、関西ではまだ珍しいそうで、京都府など行政の後押しもあり、今後さらに木造の高層建築物が増えそうだとまとめています。
 そう言えば、平成22年には「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」という法律も制定され、三重県でも「みえ公共建築物等木材利用方針」なる基本方針が公表されています。



 三重県はすでに平成17年、三重の森林づくり条例を定め、この中でも県の公共施設、公共事業等へ県産材の積極的な利用を促進することの努力義務があります。公共建築は高層とは限りませんが、いったい三重県ではどれくらいの公共施設が木造となっているのでしょうか。

 そんなことを考えたのは、先般、三重県は来年度(平成28年度)予算を調製するにあたり、公債費の増額などにより財政状況がひっ迫していることから、政策的経費を前年度比で3割以上カットするシーリングがかかるほか、「はこもの」と言われる公共施設についても原則として当面の間、新たな着手を見合わせることが決められたからです。
 ここ数年の放漫財政により三重県民に必要な事業が滞る可能性が高まってきたことは残念ですが、誰もがすぐに連想するように、はこものが着手されない、すなわち新築や増改築されないということであれば、これは県産木材利用促進の考え方とどう両立するのか、あるいは財政状況はいかんともしがないので木材利用の停滞もやむなしと判断するのか、その点がどう整理されているのかが問題になると思います。

 そう思って県ホームページ(三重県ウエブサイト)で「みえ公共建築物等木材利用方針」を検索したのですが、なんと ERROR 404: ドキュメントが見つかりません と表示されてしまいます。単なるホームページ管理の懈怠なのか、予算調製方針とつじつまが合わなくなったので隠しているのかはわかりませんが、林野庁のホームページからのリンクも三重県分は切れているので、このトホホな事実を見ても何だか嫌な頭を予感がよぎります。

 気を取り直して調べると、「平成26年度県有施設における県産材利用実績」は公開されていました。
 これを見ると、平成26年度は新築・増築・改築が7施設で、350.8m3の県産材が使われています。これが多いか少ないかはわかりにくいのですが、全施設数に占める県産材利用施設数の割合は17.5%に過ぎません。
 施設の具体例を見ても、高校のトイレ、公園のトイレ、駐在所などで、何か三重県産の木材が華々しく使われているイメージの建物ではありません。
 前年度の平成25年度も同様で、鳴り物入りで新築された県立博物館も木材は外壁など一部に使用されたのみで、博物館以外は、トイレ、駐在所、公園の休憩施設です。
 予算に限りがあるので仕方がないとはいえ、しかしそれにしてもあまりに貧弱な気がします。

 県産材を活用するというのは大変有意義なことですが、やはり官需頼みの、つまり公共施設に使用することだけを期待する需要は限界があると言わざるを得ません。それは、県産材を使って県民や施設利用者に木のぬくもりや森の恵みを実感させる、町並みも美しくする、という理念が基本的に欠けている ~供給側からの視点で作られている~ からのようにも思えます。
 本命は、京都府のように民間ビルや民間施設でも木造が増えることです。そのための施主とかテナントなどにとってのインセンティブも、今の体制では得にくいのではないでしょうか。

 繰り返しになりますが、このように今でも細々としている公共建築への県産材利用が、新年度にはさらに減少してしまう可能性が高いわけです。このあたり、一方では「地方創生」が声高に叫ばれて農林水産業を再生しようなどといった声も大きい中、どう両立させるつもりなのでしょう。難しい問題だと思います。

■三重の森林づくり   http://www.pref.mie.lg.jp/SHINRIN/HP/mori/index.shtm

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