2015年10月14日水曜日

こじれる土井見世邸譲渡問題

尾鷲市役所HPの資料より
 伊勢新聞によると、尾鷲市で初の国登録有形文化財である、大正から昭和初期に建築された貴重な和風モダニズム邸宅 土井見世邸 について、今年8月、所有者が尾鷲市に無償譲渡するとの合意が取り付けられていたところ、市は一転、財政難で維持費負担が困難などとして譲渡を無期延期する方針を固めたことがわかりました。

 土井見世家の末裔で、現在は市外に住む所有者の一人は、「合意書を一方的に破棄された。売却も考えた中、悩んだ末尾鷲のためにとの思いで無償寄贈を決断したのに、善意を踏みにじる行為」と憤り、当初の合意内容通り寄贈を望む一方で、訴訟も視野に入れていると明かしたとのことです。(10月14日付け リンクはこちら

 土井見世邸の主屋は昭和6年に清水組(現清水建設)が建築したもの。東に洋館、西に和風の居宅をつなげた構成で、洋館は細部の意匠にアールデコのデザインを用い、窓にはステンドグラスも設けられています。蔵などの付属する建物もまとまってよく残っており、山林経営家の風情あるたたずまいを今に残す貴重な建造物として国の登録有形文化財(建造物)に指定されました。
 所有者のみならず、尾鷲市民、いや国民にとって有用な建物であり、保存と活用について市民有志グループも交えて譲渡の合意に至っていただけに、急にこじれてしまったように見えることについて、関心を持ってウオッチしていたわしも驚きを禁じ得ません。

 市は今年8月20日、林業や文学など尾鷲の歴史、文化を残す邸宅を地域活性化に役立ててほしいという所有者の意向から贈与を受けることで合意し、その後内容を修正して9月5日には市役所で再度合意書を交わしていました。この合意書によると10月18日に市長室で目録贈呈を行うことが明記されており、岩田尾鷲市長も9月の市議会で寄贈を受ける意向を報告していました。
 ところが、突如10月13日の市議会生活文教常任委員会と全員協議会で、市長は修繕や維持管理費など取得後の負担が財政難で困難と説明し、「せっかくの無償寄贈だが、財政状況から今は取得すべきでない。所有者や保存会の皆さんに申し訳ない」と謝罪したとのこと。

 財政難は今に始まったことではなく、古い建物をもらえば維持費が莫大にかかることも分かり切っていたことで、今さらそんなことを言い出すのも何だかしまらない話ですが、尾鷲市政では昔からしばしばこの種の迷走が見られます。
 尾鷲市民だったわしも、このゴタゴタ自体は別に驚くことではなく(所有者にとってはめちゃくちゃな話に見えるでしょうが)、市にカネがなく、ないものはないわけだし、かといって今後いつまでにこうするという見通しも示せないので、もういい加減、市を当てにするのはよして、関心と熱意があり、せっかくの譲渡のチャンスを前向きに解決したいと考えている有志で対策を考えたほうがいいのではないでしょうか。
 今必要なのは、早急に現実的な対案を提示し、所有者、関係者と話し合い、合意に至ることです。市がどうのこうのといつまでもうだうだ言っていても、1ミリも前に進みません。

 わしが考えつくのは下記のようなものです。決してできなくはないと思います。

その1
 カネがなく、維持費や修繕費が出せない。ならば、どうしたらよいか、一般から企画提案を募集し、所有者や市民グループに審査員になってもらい、コンペを行う。
 企画提案できるのは市民に限らない。ただし、アイデアは出すが実行は誰かがやってくれ、という案は却下し、必ず、誰が、どのように、いつまでに、これをやる。という実行策がセットになっている提案でないと受け付けない。
 世界中から提案を受け付ければ、当然、利活用で収益を生みだし、それを維持費に充てるというアイデアもあるだろうから、宿泊施設、レストラン、結婚式場、超大金持ちに別荘として再リースする、などいろいろな案が出てくるはず。

その2
 企画提案ができたら、それを事業として取り組む人を決める。市民のだれかでもよいし、経営者を全国から公募してもよい。ただし、当分は無給。(それでも絶対にやりたい人はいる。)

その3
 ブラッシュアップしたうえで、クラウドファンディングで資金を募集する。1万円で邸内の見学会参加、5万円で1日貸切り、10万円出したら邸内で尾鷲節コンテスト入賞者によるプライベートライブをやる、100万円なら、というようにプレミアムを付けて資金を募る。
 これは、他者に土井見世邸の魅力や保全の意義を説得するトレーニングにもなる。
 目標金額は1000万円。
 と言いたいが、まずは最低必要な金額。(数百万円か? しかしこれも不可能な額ではない。)

 その1~その3は、おそらく小規模なものならすでに全国どこでも取り組まれています。古民家を使ってカフェを起業したい、古い農家を再生して民宿にしたい・・・などなど、実例は意外にあるのです。これを勉強したらよろしい。

 確認しておかなくてはいけないのは、「地方創生」という言葉は美辞麗句ではなく、自分たちがやらなければ誰も助けてくれない、という、ある種の余命宣告であることです。
 行政はカネは出すかもしれませんが ~尾鷲市みたいに出さないところもありますが~、結局はプレーヤーが絶対に必要で、それは誰か生身の人間がやらなくてはいけないのです。
 幸い、今はICT時代です。ヒトもカネも世界中から探せるのです。尾鷲でも誰かがその先鞭をつけなくてはなりません。応援する人はきっといっぱいいます。

3 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

文化的価値を放棄して市外へ出て行き、訴訟まで起こそうとする森林王の子孫とやらに報いるためには、寄贈など受けずに朽ちさせる、それこそ過疎の町がとるべき選択でしょう

半鷲(はんわし) さんのコメント...

 寄贈など受けずに朽ちるに任せる。
 そのような覚悟というか腹を決めるの大事かもしれません。
 しかし、報道を見る限り、皆が知恵を出し尽くしているようには思えないのですが。

匿名 さんのコメント...

知恵を出すなんて勿体ない。市が金を出せばいいんです。
だって、保護したら観光客がいっぱい来て市が活性化するんでしょ?