2015年11月13日金曜日

成功事例から学ぶ!中小企業のイノベーション(その1)

富士市産業支援センター(通称f-Biz エフビズ)のセンター長である小出宗昭さんの講演会「成功事例から学ぶ!中小企業のイノベーション」に行ってきました。
 これは三重県中小企業家同友会の経営研究集会の一環として開催されたものですが、経営者はもちろん、行政や商工会議所、金融機関といった産業支援関係者や、行政による産業支援の是非に問題意識を持つ方などにも非常に参考になる内容だったと思います。簡単にレビューしてみます。
 と言いつつも内容の濃さから、前編と後編に分けざるを得ません。また、文責はすべてはんわしにあります。

 私(小出さん)はもともと銀行員だった。M&Aなどを担当していた41歳の時、静岡市などが立ちあげた創業支援施設「SOHOしずおか」にインキュベーションマネージャーとして出向を命じられた。
 そこで初めて公的な産業支援機関で支援に関わったわけであるが、民間企業の常識から見ると大変非効率に思えることをやっていた。
 実は、国(中小企業庁など)による中小企業の支援は、すでにさまざまな対策が行われており、すべてをやり尽くしていた感があった。中小企業支援に年間4千億円もの予算が投じられていたが、なかなか中小企業は活性化しない。


 その理由について、行政の担当者はよく「行政はやる気のある経営者しか支援しない」と言う。しかしこれは思い上がりだ。中小企業の経営者は多くは会社の債務を個人保証している。倒産すれば家屋敷をすべて失ってしまう立場。そんな人たちが「やる気がない」ことなどあり得るだろうか。

 また、こうも考えた。中小企業の経営者で課題を抱えていない人、問題意識を持っていない人などいない。どれほど順調であっても会社には必ず何かの課題がある。それならば、その課題に応える産業支援機関であったならば「行列」ができるはずである。そうでないとおかしい。

 中小企業の課題は様々だ。販路の開拓、新商品の開発、新分野への進出などなど。しかし、つまるところ課題の7割は「売り上げ」に関することである。いかに売り上げを増やすか。売り上げさえ立てば、多くの課題はそれによって解決する。

 ここまで考えて、SOHOしずおかは「どうすれば売り上げが増えるか」を経営者と一緒に考えること、そして、「具体的でわかりやすい結果を出すこと」の2つに徹することにした。

 SOHOしずおかの取り組みは大きな評判となった。その後、私はやはり銀行からの出向の形のまま浜松市(SOHOはままつ)へ移った。平成20年、出身地である富士市の市長から、新たに設立する支援機関(f-Biz)のセンター長に請われ、これを機に銀行を退職して専念することとした。
 f-Bizの相談実績は年間約4000件(平成26年8月~27年7月)。まさに行列ができる支援センターである。中小企業庁もf-Bizに注目し、f-Bizをモデルにした支援機関を全都道府県に設立することとした。これが「よろず支援拠点」である。

 さて、f-Bizが中小企業の売上アップのための支援を行って、結果が出たものを類型化してみたい。
 3つの重要なポイントがある。

1)自社の強みを活かす
 会社が続いているということは他に比べて何か差別化できる強みがあるはず。しかし、往々にして経営者は自分の会社に近すぎて、本当の姿が見えない。自社の真のセールスポイントは何かをf-Bizでは一緒に探していく。

2)ターゲットを明確にする
 成熟時代の今はもはや誰にでも売れるものは提供できない。誰に売るのか、ターゲットを明確にしないといけない。大企業もターゲティングを重視しているのはテレビCMをよくよく見ていればわかる。たとえば化粧品のCM。SK-ⅡのCMに出ていた桃井かおりは60歳からの肌に、と言っていた。小泉今日子が出ていたCMは「小泉今日子48歳」と自分で言っていた。CMに出てくる女優が年齢を言うなど十数年前には絶対になかったこと。市場が拡大していく中高年以上にターゲティングしているということ。

3)コラボレーションする
 お互いの弱みを補い合うということ。ただし、ただ単につながるのではなく、相乗効果、シナジーを生むコラボレーションでなくてはいけない。

 では、f-Bizでの具体的な支援事例をいくつか紹介したい。

(株)イトー (人材派遣業、製造業)
 紡績工場向けに、構内の綿ぼこりを除去する製品を作っていたが、紡績工場が次々と海外移転し、売り上げが激減していた。「下請けから脱却して、独自商品の開発を行いたい」とf-Bizを訪問された。面談の中で、イトーの強みは一度キャッチした綿ほこりは逃さないというオンリーワン技術であることがわかった。その時に、一般家庭の電気コンセントで、綿ぼこりが溜まったことが原因で火事になる事例が多発しているというテレビ番組のことを思い出した。一般消費者向けに、狭い場所専用の「綿ぼこり除去スティック」を開発してはどうかと提案し、伊藤社長と何度も試作を重ね、「ほこりんぼう!」というスティックを開発した。東急ハンズをはじめ、全国のデパートなどで取り扱われる大ヒット商品となった。(http://bylines.news.yahoo.co.jp/koidemuneaki/20150629-00046997/

(有)幸昭 (建築業)
 騒音の防音設備を工場向けに建築していたが、需要の低迷で売り上げが減少していた。一方で、ピアノ騒音でご近所トラブルになったなどの事例もよく聞くことから、一般住宅向けの防音工事はできないか提案したところ、幸昭の技術は大手ハウスメーカーによる防音と原理が異なっており、非常に効果が高いことが分かった。そこで一般住宅の防音にターゲットを絞り込み「救静主」と名付けた新サービスを開始した。
 売上高は2009年6月期の9千万円から2012年6月期の2億2500万円にとV字回復した。


■三重県中小企業家同友会   http://www.mie.doyu.jp/

■富士市産業支援センター f-Biz   http://www.f-biz.jp/

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