2015年11月17日火曜日

東京都の総合戦略に「共存」の視点が

 東京都が10月、まち・ひと・しごと創生法に基づく、まち・ひと・しごと創生総合戦略、いわゆる「地方版総合戦略」を策定しました。
 まち・ひと・しごと創生などと聞くと、人口減少や経済の停滞に悩む「地方」=「田舎」に関することであり、東京都にはあまり関係ないように思えます。しかし、東京にも離島や奥多摩のような地域はあり、都道府県はそれぞれの地域実情に応じた総合戦略を策定するように、まち・ひと・しごと創生法は定めています。
 都の総合戦略は、平成26年度に策定済の東京都長期ビジョンをベースにしたものだそうですが、時事通信社の地方公務員向け業界紙「官庁速報」によれば、(1)東京と地方の共存共栄、(2)首都・国際都市としての発展、(3)少子高齢化・人口減少社会への対応、の3つの視点から関連施策を盛り込んだ内容であり、特に地方創生が「東京VS地方」という構図にならないよう、「共存共栄」の視点が必要と強調したものになっているとのことです。
 そもそも安倍政権が主導する「地方創生」の眼目は、東京への一極集中の是正です。
 東京では出生率が全国平均よりはるかに低位なことから、比較的子育て環境が整っているとされる地方部への若者移住を促進し、夫婦を多く誕生させ、出生率を上げる。この前さばきとして、若者が定住しやすいように仕事(雇用先)を確保・拡大する、という流れがパッケージになっているのが「まち・ひと・しごと創生」の各事業であると理解できます。



東京都総合戦略 説明資料 より
 このように一見、「東京VS地方」というスキームになっていることは、東京にとっては迷惑なことかもしれません。
 東京に若者が多く集まってくるのは政策的な結果ではなく、経済のサービス化とグローバル化の力学的必然であるからです。
 むしろ、世界的には国家間の競争よりも都市間の競争が重視されており、一国の経済を牽引する大都市 ~シンガポール、上海、ソウル、ニューヨーク、ロンドンなどなど~ にどれだけ人口と投資とイノベーションを呼び込めるかは、非常に大きな問題となっています。
 東京VS地方の構図は、国内にいると理解しやすい絵なのですが、政策的に所得の再分配を進めることは結果的に東京の成長力をそぐ結果になり、グローバルな都市間競争に不利となり、ひいては日本全体に悪影響を及ぼすという見方も成り立つわけです。

 このため東京都総合戦略は、「東京と地方が共に栄える、真の地方創生」という章を設けています。

 これによると、
・東京への人口流入は、個々人の自発的な「選択」の結果であり、こうした流れを個人の意思に反して政策的に誘導することは困難である。
・そもそも、東京の発展と地方の繁栄は二律背反の関係ではなく、東京は食料供給を他の地域に支えられているが、生産地にとって東京は一大消費地といったように、本来「東京と地方」は持ちつ持たれつの関係にある。
・地方創生では、「東京対地方」といった構図に矮小化せず、日本全体の発展のために国と地方自治体は協力して何をなすべきかといった本質的な議論の下に、政策を検討し、実現していかなくてはならない。
・真の地方創生とは、東京と他の地域が互いに協力し合うことにより、共に栄え、成長することである。
 とのことであり、日本を持続的発展に導くために東京だからこそできる取組があり、それは、東京
に集まる情報、資金と、他の地域の資源、技術などが結び付くことによって、様々な産業振興につながっていくことに着目して、都が自ら、東京のみならず他の地域の発展にも結び付く様々な独自の取組を地方と共同して積極的に進めていくことを宣言しています。

 具体的な取り組みとして
○全国各地と連携した産業振興
○「東京と地方」の双方の魅力を生かした観光振興
○2020 年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機とした各地域の活性化
○「東京と地方」が連携した芸術文化振興の展開
○都内区市町村の取組・事例紹介 
 などが挙げられています。

 これは、わし個人としては非常に興味深い提言です。
 最近、道府県が他の県と「協定」を結んだり、知事同士が訪問し合ったりして、お互いに産業振興に取り組んで行こうとか、観光キャンペーンとか、不足する医師の獲得などに共同で当たっていこうなどと「連携」するケースが全国的に増えています。しかし、多くの場合、これらは単なる地元向けの政治ポーズや話題作りに過ぎず、首都圏や関西圏抜きである県とある県が「連携」しても、それは弱者連合でしかありません。ほとんど何のシナジーも生まないのです。
 そうではなくて、田舎の県こそ、東京都と組む必要があるのです。
 東京都は今まで、(特別区や市は別として)他の道府県と積極的に連携していくという姿勢が必ずしも明確ではなかったような気がします。しかし、都の総合戦略にあるように、東京の消費者市場は 地方にとって大きな魅力ですし、都がよりコミットすることで、各道府県が首都圏で取り組んでいる物産や観光のプロモーションの実効性が高まることは大いに予想されることです。

 東京都は、各道府県、各市町村に対して具体的な連携条件を提示するとともに、地方の側も、都が抱える地方創生の課題にどう解決策を提案して行けるのか、その企画力が求められていると思います。

■東京都 「東京と地方が共に栄える、真の地方創生」の実現を目指して~東京都総合戦略~
 http://www.seisakukikaku.metro.tokyo.jp/tokyo_senryaku/index.html
 

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