2015年11月25日水曜日

ドローン規制条例は何か国語に訳すべきか

 三重県は、来年5月にG7(主要国首脳会議)が志摩市などで開催される予定であること受け、主会場となる同市賢島(かしこじま)などの上空において小型無人機「ドローン」の飛行を禁止する条例を制定することが明らかとなりました。
 条例案の骨子によると、来年3月27日から5月28日まで、賢島の海岸から1.5kmの範囲と、別に知事が定めた施設の敷地から300mの範囲を飛行禁止区域とします。
 飛行にあたっては知事の許可が必要とされ、違反した場合は1年以下の懲役か、50万円以下の罰金刑が処されます。
 条例案は今月から開催される県議会に提出されて可決成立し、来年3月に公布・施行される見込みとのことです。

 ドローン自体は一種の無人ヘリコプターに過ぎず、コンセプトにしろ類似の製品にしろ、かなり以前からとっくに存在していました。しかし技術進歩により安定性や航続距離、自動操縦機能などが格段に向上したことから、物の運搬とか空中撮影、調査や測量など多くの可能性が新たに広がり、ドローンの製造や操縦、付帯サービスはこれからの経済成長を支える新産業として注目されてきたのです。


 産業界には、成長の期待が高いドローンに過剰な規制をかけることは発展性を削ぐものだとの批判も強いのですが、世界の要人が集まる伊勢志摩サミットの会場県として緊急措置的な、今回の規制条例の制定はやむを得ないでしょう。

 問題なのは、この「三重県ドローン規制条例」をどう国外の関係者に知らしめ、理解させるのかということです。条例公布にあたって、何か国語に翻訳して公表されるのでしょうか。

 言うまでもなく、サミット会場においてもドローンは必ず使用されます。警備する警察や海上保安庁にとっては、人による警戒が困難な区域を無人でパトロールできる貴重な機材になります。
 少しでも良い絵を撮って世界に発信したいマスコミも、ドローン使用は強く希望するでしょう。特に海外のマスコミ関係者の間では、ドローン撮影合戦が白熱するはずです。
 この機会に指導者たちにモノ申したい政治団体や人権団体、NGOなども多数やって来るでしょうから、当然ながら彼らもドローンは活用しようとするはずです。

 ドローンについては、すでに航空法が9月に改正されて、家屋密集地や空港の周辺での飛行は原則として禁止されています。賢島近辺はこのどちらにも該当しないので県が条例を定めるわけですが、この「独自規制」がそもそも外国のマスコミやNGOなどに十分理解されていないと、現場は混乱することになってしまいます。
 つまり条例の公布が日本語だけでは無意味なのであって、少なくとも国際連合の公用語(英語、フランス語、ロシア語、中国語、スペイン語、アラビア語)には訳して公表することが不可欠になるでしょう。
 知事の許可を取るための書類作成や申請方法についても、外国語による手引きの整備は必須です。これらの準備が不十分だと、規制を知らずに ~あるいは知らないふりをして~ 飛ばすケースや、繁雑な申請手続きを避けて違反を承知で敢えて飛ばす人も出てくるかもしれません。これは避けなくてはいけません。

 実は、地方自治体が定める条例を外国語にも翻訳して周知することは、長らく基礎的自治体である市町村では大きな課題と認識されてきました。
 福祉や教育、医療、防災、ゴミ出しなど住民生活に密接なサービスを行っている市町村は、外国人の住民にも制度を理解してもらうために、施策の内容とか、その根拠である条例(法律、規則)を外国語訳すべきだという意見が根強くあるからです。

 しかし、東京都武蔵野市のような一部の自治体を除いて、条例を外国語訳して公表している自治体はほとんどありません。もちろん三重県も条例や規則は日本語のみであり、観光案内だの、県営住宅や県立病院などでサービス案内が外国語で提供されているケースがあるに過ぎません。

 三重県でのG7サミットは、そもそも誘致された目的が、会場となる伊勢志摩を世界的観光地へと知名度アップさせることで外国人観光客を誘客し、主産業である観光業や漁業、食品産業などを活性化させることでした。
 このため地元の伊勢志摩地域を中心に、外国語ボランティアガイドの育成や、外国語表記の看板の増設などが進められています。しかし、これらの対策は「常識」の範疇の当たり前のことであって、目新しいことではまったくありません。
 そうではなく、外国人客を多く呼び、外国からの投資を増やし、場合によっては海外企業の誘致も進めていく、という地域のグローバル化を目指すのであれば、外国人が滞在しやすい、ビジネスがやりやすい、投資をしやすい、そんな環境を作らなくてはいけません。
 それには、規制(条例)や制度が、主役である外国人に理解され、ルールとして共有されなければ始まりません。行政サービスや、法務サービスの国際化 ~少なくとも多言語化~ はその小さな第一歩なのです。
 ドローン規制も含めて生活やビジネスのソフトウエアがグローバル対応化されないのであれば、サミットは単なる一過性のお祭りで終わってしまうでしょう。

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