2015年11月3日火曜日

干物ニューウェーブ

 昨日(11月2日)付けの日経MJに「干物(ひもの)ニューウェーブ」という記事が載っていました。
 魚の干物はかつて各家庭での朝食の定番でしたが、近年は消費者の魚離れもあって影が薄くなっていました。しかし、最近になって店舗や包装をスタイリッシュに一新したり、パンにも合う商品が登場したりと、干物のイメージががらりと変わる事例が注目を浴びているとのことです。

 わしが東紀州にいた頃も、もちろん干物は東紀州地域の主要産品であり、それぞれのお店が製法に工夫を凝らしたり、ボリュームゾーン向けの価格にこだわったり、反対に高級路線で販路を開拓したりと、さまざまな戦略が取られていた商品でもありました。
 また、最近は若い人が干物を食べなくなったとか、そもそもマンションには魚焼き(グリル)が台所にない物件も多く、何とか若い主婦や、子どもたちに食べてもらえるようにならないか・・・という悩みを多くの経営者が異口同音に言っていたことも思い起こされます。
 わしが知る限り、たとえば
・レンジで温めるだけで焼きたての干物が食べられる商品(ギョルメ舎フーズ/紀北町
・それを発展させた「骨まで食べられる」レンジ干物(マルキ商店/紀北町
・麦みそ風味の干物(はじ丸水産/熊野市
・調理済干物を切り身にして串を刺した「片手で食べる干物」(山藤/南伊勢町
 などがユニークなものの代表です。
 しかし、MJ紙面に取り上げられていた事例も、なかなか工夫が凝らされたものでした。


サスニンベン(茨城県ひたちなか市)
 創業110年の老舗干物店ながら、ガラス張りの店内にはジャズが流れカフェのような雰囲気。干物のサンプルは高級宝石用のショーケースに展示されており、画像つきのメニューブックも用意。購入した干物は帯をかけてお菓子のようにラッピングされギフトボックスに入れられる。
 サスニンベンは東日本大震災で全壊したが、磯崎威志代表らが「若い層にも干物を食べてもらいたい」と店をリニューアルオープン。三越銀座店にも期間限定ながら出店した。
 ◆http://www.sasuninben.info/

ヤマカ水産(静岡県沼津市)
 大正元年創業だが、従来の干物の概念を覆す「ペッシュール」シリーズを今年6月に発売。金目鯛やシマアジなどの干物がシトラスやハーブと共に真空パックされ、オリーブオイルやトマトソースとセットで販売される。フライパンにオリーブオイルをひいて焼く調理方法で、ワインやシャンパンに合う。調理が手軽でゴミも出ないことから若いファミリーなどにリピーターが多い。開発にはフレンチのシェフが協力(ペッシュールとは、仏語で漁師の意味)。
 ◆http://pecheur.jp/

下園薩男商(鹿児島県阿久根市)
 焼いたウルメイワシの丸干しをオイルに漬けこんだ「旅する丸干し」を発売。南イタリア風(トマト、ガーリック入り)、プロブァンス風(オリーブ、ハーブ入り)など全4種類。若い層が手に取りやすいよう洋風に仕上げ、チーズ焼き、フライ、パスタなど干物アレンジ料理にも使える。
 ◆http://marusatsu.jp/tabi/

 MJで紹介されていたのは以上の3つですが、実際にホームページを見ると非常に洗練された商品であり、相当な試行錯誤を重ねた自信作であることがうかがえます。
 留意が必要なのは、これらは干物だから「地域資源」である、というような狭い枠にとどまるのでなく、地域性を飛び越えたユニバーサルな視点からコンセプトが生まれ、商品化されたものである、ということです。

 わしのブログのテーマは一貫して、地域の活性化と、地域イノベーションということなのですが、言うまでもなくその有力なツールは地域の経済が活性化することです。
 この10年ほどは、国が地域資源活用促進法や農商工連携促進法、6次産業化支援法などの法律を作って地域産品を支援してきましたが、この競争はそろそろ決着がついてきており、事業者は次のステージを目指さなくてはならない立ち位置に来ています。
 その一つの解は、地域資源にこだわるのでなく、コアな顧客に届けられる「圧倒的に洗練され、差別化された商品・サービス」を生み出すことです。
 カフェや菓子店のセンスを取り入れる。フレンチシェフとコラボする。まったく新しいコンセプトの商品を作り出す。
 これらはみな、要素そのものは既存のもの、所与のものであっても、それらを新たに結び付けたり、つなげ替えたりした「革新」(=イノベーション)なのです。
 イノベーションとは新しい科学技術を研究開発する意味ではなく、「新しい結合」です。安倍政権の地方創生が限りなくバラマキ、横並び競争の側面を強めてきた今、地方経済において本当に必要なのは、この視点であることは銘記すべきだと思います。


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