2015年12月6日日曜日

伊勢志摩サミット「経済効果」1110億円!?

 三重県を基盤とする百五銀行のシンクタンク 百五経済研究所が、来年5月に開催されるG7サミット、いわゆる伊勢志摩サミットによる経済効果が、開催後の5年間の累計で約1110億円にのぼるとの試算を発表したことを県内の各紙が報じています。
 同研究所は6月にもサミット開催の経済効果を、三重県内で約130億円、全国で500億円を超えるという試算を公表し、話題となりました。

 今回はサミット開催後の「ポストサミット」効果が持続すると判断したようですが、その根拠は報道によると以下の3つです。

1)外国人観光客の増加
 三重県を訪れる外国人観光客数は、平成26年には年17万8千人だったものが、サミット開催後は約5倍の年90万人に増加。これにより、外国人観光客の消費額は年間131億円増加して、経済効果は年185億円となる。
2)国内観光客の増加
 県外からの国内観光客数が年240万人増加。この経済効果は年495億円であり、これは開催後1~2年持続する。


3)国際会議の増加
 サミットで三重県の認知度が向上するため、現在は年平均2.6件の開催実績しかない国際会議は、サミット開催後は年30件に増加し、この経済効果は年37億円となる。

 サミット開催時の効果510億円の内訳が、関係者の宿泊費や飲食費(74億円)、運営費や観光案内費(50億円)、物品購入費(33億円)、情報通信費(25億円)、建設関連費(20億円)など、一過性のものが多いことに比べ、1110億円のほうは「実需」だということはできるでしょうが、しかし、これは本当に実現するのでしょうか。
 2つの理由から、非常に疑わしいとわしは思います。

 1つ目の理由は、この試算は、発表した当の経済研究所自身が「この試算の実現には、国内外での情報発信や、受け入れ体制の整備を官民一体で進めることが欠かせない」と言っているように、現在では未確定な希望的観測に基づいており、しかも追加投資(対策費)が必須という前提になっていることです。
 最も期待される効果は外国人観光客(宿泊者数)の増加ですが、三重県は今年6~8月の調査で、外国人宿泊者数が対前年同期比で全国一の3倍の伸びを示しました。確かに伸びしろは大きいと言えるかもしれません。
 しかし、平成26年の調査では、三重県に来る外国人客は全国23位の18万人にしかすぎません。奈良県とほぼ同じ、和歌山県より10万人も少ないのです。

 左のグラフを見ると、年90万人の宿泊者数とは静岡県、山梨県とほぼ同じであることがわかります。空港や高速道路があり、首都圏に近く、キラーコンテンツである富士山がある両県でさえ、このレベルなのです。

 空港からのアクセスが悪く、外国語ガイドはおろか、看板や標識さえ多言語に対応していない三重県で、さらに、高速道路がなく、病院も少なく、外国人が買い物をするショッピングモールやデパートもない鳥羽市や志摩市で、外国人観光客が5倍になることなどあり得るのでしょうか?
 いや、そのために今後の対策が重要だと言うなら、具体的にどのような対策が必要なのでしょうか。志摩市まで高速道路を延伸することは大前提でしょう。

 では国内観光客の増加はどうでしょう。三重県、中でも観光の中心の伊勢志摩地域にある旅館、ホテル、民宿の宿泊者数収容定員は数万人と言われています。
 実は確たる統計は公表されていませんが、この中には施設の老朽化などで競争力がない、つまりは休眠状態の施設が少なくないとされています。また、この地域でも少子高齢化の影響で人手不足が深刻であり、仮に多くの観光客が伊勢志摩に来たとしても、平成27年度現在の今の受け入れ宿泊者数がほぼ限界に近く、これ以上増加しても他地域に流れてしまうか、サービス水準が低下してリピーターにならないだろう、というのは観光関係者の多くが異口同音に言うことです。
 国内は北海道新幹線の開通など交通インフラの整備や観光キャンペーンの拡大で地域競争が激しくなっています。サミットなどすぐ忘れられ、観光地の魅力やサービスそのものの自力で勝負しなくてはならないのは当然です。したがって、国内観光客数も伸び悩む(と言うか、一定水準以上は受け入れられない)可能性が高いのです。

 国際会議に至っては、もうお笑いというレベルでしょう。仮に自分が国際会議を主催し、多くの来賓を集めて会議を運営しなければならないと考えた時、東京や名古屋など交通インフラ、知的インフラが集積しているところを選ぶのが当然です。三重県に来る会議もなくはないでしょうが、受け入れ態勢がほとんどない中で、社会的に注目される重要な会議はあまり来ないでしょう。

 そうそう、1110億円が疑わしいもう一つの理由を忘れていました。
 これは簡単で、5年後に誰も検証などしない、ということです。なので、達成したか、達成しなかったかはおそらく誰にもわからないのです。

 政治や行政の世界はサメが泳ぎ続けないと溺れてしまうのと同じで、新しい政治課題(地方創生とか)のために次から次と、手を変え品を変え、目新しい施策に取り組んでいかないと有権者の支持を得られません。民間企業ではPDCAが重要ですが、行政は収益をいかにあげるかでなく、事業予算をいかに多く獲得するかしか関心がないので、サミットが終わったころには次のスローガンが掲げられ、~三重県なら平成30年の三重国体でしょうか~、昔のことを検証したりしているヒマも予算も人員もないのです。

 マスコミもこのことはよくわかっていて、発表の翌日には各紙に記事が載っていましたが、今はもうまともに取り上げているところはありません。昔は地元の大学の先生に、このような試算の検証やコメントを求める記事がよくありましたが、なぜかそのような記事も見当たりません。

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