2015年12月8日火曜日

熊野古道センターが入館者100万人に

 尾鷲市にある三重県立熊野古道センターの入館者が12月5日、100万人を突破しました。平成19年2月に開館して以来、8年10か月かかっての達成でした。

 100万人目となったのは兵庫県に住む公務員で、この方は10年ほど前から年に数回、熊野古道を訪れているそうで、この日も熊野市にある逢神坂(おうかみざか)峠に登ってきた後に偶然古道センターに立ち寄ったとのこと。
 岩田昭人市長らから花束と記念品が贈呈され、センターを県から指定管理により運営しているのNPO法人熊野古道自然・歴史・文化ネットワークの花尻薫理事長は、「これからも地域の皆さんと手をつなぎ、センターと熊野古道伊勢路が発展していくよう努力したい」と述べたとのことです。

 わしはこの熊野古道センターがオープンした直後に、仕事(東紀州観光まちづくり公社)でイベントなどにも関わらせてもらったことがあるので、個人的にも大変感慨深いものがあります。
 しかし、100万人を8年10か月、つまり約3200日で割ると、一日あたりの入館者は31人に過ぎないことになります。尾鷲市の町はずれにあるという立地条件ではありますが、入館料は無料、さらに建設費に約13億円かかっていることを考えると、31人という数字が多いか少ないかは意見が分かれるところでしょう。


 実際にわしも熊野古道センターに関しては賛否両論を聞きました。
・尾鷲ヒノキをふんだんに用いた大型木造建築であり、建物自体にも価値がある。
・ロケーションがよく、尾鷲湾と天狗倉山、そして尾鷲市のランドマークである三田火力発電所の煙突がそびえる景色が美しい。
・センター近くには海洋深層水のお風呂とランチバイキングで有名や「夢古道おわせ」がある。
・企画展はいつも工夫が凝らされ、貴重な資料が公開される。
・いろいろなイベントをやっている。
 などが賛意や肯定的な意見。

 一方で
・センター内にレストランや物販施設などがなくて不便。
・熊野古道とは全然離れた場所にあって、市外から来た人はがっかりする。
・展示内容が地味。また、いつ行っても同じ。
・企画展が高尚で難しかったり、マニアックすぎる。
 などが批判や否定的な意見。
 特に、わしがいた当時から、産業関係者からは、せっかくいいロケーションにあるのに、あそこにレストランなどを作らないのは施設の無駄遣い(死蔵)である、という声をよく聞きました。

 ただ、留意がいるのは、熊野古道センターが建設・運営された時期についてです。
 言うまでもなく、センターは、平成16年に「紀伊山地の霊場と参詣道」がユネスコの世界遺産登録を受けたことを記念して建設、開館したものです。
 もともと熊野古道自体が、長らく地元住民からさえ存在が忘れられ、長年歩かれなくなって原野や山林に戻っている状態だったものを、今センターを運営しているNPOの関係者が中心になり手弁当で発掘、伐採、整備を営々と行って、現在の美しい石畳がある昔ながらの光景に原状復旧したという歴史を持っています。
 少なくとも三重県内にある熊野古道に関しては、いわば住民主導で価値が再発見され、復元された経緯があるのです。
 また、センターが設立された時期は野呂昭彦氏が知事を務めており、彼自身が官と民の関係は相互補完的であるべきだという強い政治信念を持っていて、三重県政も市民活動を強くバックアップする姿勢であったことは銘記されるべきと思います。

 このためもあって、センターの運営はあえて熊野古道の復元や保全に関わってきたNPOに委託されてきたのであり、したがってある種、儲け主義的なビジネスライクな面は(良くも悪くも)持ち合わせていないという実態があります。

 わしは、このことが必ずしも悪いとは思いません。ビジネスに長けた人なら、熊野古道センターのロケーションや収蔵資料を活かしてもっと収益があげられるのでしょうし、確かにNPOの活動が継続されるに必要な経費は自ら稼ぐべきだとも思いますが、いわば住民のボトムアップによる運営も地に足が着いていて、悪いことばかりではないからです。

 いずれにせよ、現在の運営の良いところは伸ばし、悪いところは改めて、まずは地元住民に支持され、地元が持つ魅力でもって外部からも観光客を引き寄せるような、そんなやり方をこれからも進めていくべきだと思います。

■熊野古道センター  http://www.kumanokodocenter.com/index.html

※奇妙なことに、熊野古道センターのホームページには来館者が100万人になったというニュースが掲載されていません。(12月7日現在)
 このような情報発信意欲の低さとリテラシーのなさは、施設管理者として確かに能力不足を感じさせる部分ではあります。

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