2016年1月16日土曜日

エンゲル係数上昇中

日経MJ より
 昨日(1月15日付け)の日経MJの一面には驚かされました。
 生活者の消費支出に占める食費の割合である「エンゲル係数」が、近年、我が国で急上昇しているというのです。

 エンゲル係数はその国の国民の生活水水準を示す指標によく用いられており、一般的には経済が成長して国が豊かになれば、エンゲル係数も下がっていくというのが一般的ですし、現に日本もそのような動向を示してきました。

 しかし、総務省が昨年末に公表した家計調査(2人以上の世帯が対象)によると、エンゲル係数は25.7%となり、7カ月連続で25%を超えました。日本では平成17年にエンゲル係数が最低となり、近年は23%前後で推移してきました。
 25%を恒常的に上回るのは約25年ぶりのことで、バブル期と同水準であり、ここ2年ほどで2%も急上昇した背景には、我が国の世帯では構成人数が減少したことに伴って個食化や外食化が進んだほか、消費増税や原料高が重なったことがあるようです。


 MJによると、家計調査によれば、食費に占める穀類、肉類、魚介類、野菜・海藻の割合は平成2年には47%もありましたが、平成26年には39%に減少しました。そのかわりに『外食」と「その他の食品」への支出割合が増えています。その他の食品とは、加工食品や総菜類のいわゆる「中食」です。近年の家計に占める外食費の割合はバブル期よりも1.5%近く、これは贅沢をしているわけでなく、共稼ぎ世帯の増加により、主婦(主夫)が食事を作る時間をなかなか取れないことが原因でしょう。
 また、世帯の構成人数が減ると食材のまとめ買いができません。家族が少ないほど一人あたりの食材やコストは割高になっていくのは当然です。世帯が4~5人を想定してビジネスモデルである食品スーパーが退潮し、一人暮らしでも対応できるコンビニが成長を続けていることも、消費者のライフスタイルが変化していることを表しているのでしょう。
 さらに、平成26年4月に消費税が増税されたこと、そして円安による原料高などによって食品の価格が上昇していることも間違いなく原因の一つです。

 日本の消費市場は、安倍政権による経済政策「アベノミクス」によって輸出型の製造業など一部の企業などでは賃金が増加し、株高や地価上昇などもあって、百貨店での高級品の売れ行きが好調なのは事実のようです。
 しかし、多くの流通関係者によると消費者は二極化しており、旺盛な購買意欲を持つ層の一方で、いっそうの安値を求める声は非常に強く、最寄品などは値上げが難しくなっています。
 MJが昨年12月に行った消費者アンケートでも、消費増税後の負担増を感じているのは回答者の9割近くにものぼっており、家計全体が苦しいと感じている人が数の上では圧倒的に多いことが示されます。

 興味深いのは、このような中で、「食品に対しては支出をいとわない」と考える、食へのこだわり派が前述のアンケート調査でも12.5%と、着実に増加している傾向が見られることです。健康や環境への意識が高く、多少割高であっても信頼できる店で、有機栽培や無農薬栽培の農産物を選ぶ。統計上は、このような消費志向もエンゲル係数を押し上げる要因になるわけです。

 また、消費者の新しい動きとして、家族関係ではなくとも、なるべく多くの人数が集まって食事をする「集食活動」と呼ばれるものがあります。
 東京・杉並区にある okatteにしおぎ では、午後6時ごろになると近くに住む人たちが食材を持ち寄り、思い思いに作った夕食をみなで一緒に食べる、という光景が見られるそうです。
 食費や光熱費は参加者の割り勘。誰がどんな食材を持ってきて、今日はどんなメニューにするかはネット上のスケジュールソフトで共有し、調理は早めに来た人が担当し、定期的に掃除会もやって設備の管理を行います。
 参加者は食費を浮かすということもさりながら、大人数で食卓を囲むことで実現する豊かな食生活に魅力を感じているとのことで、近年注目されているシェアエコノミーの一つと言えるのかもしれません。このような食卓のシェア=集食活動は、近いうちに三重県のような地方にも波及してくるでしょう。
 
 少子化、高齢化、そして生活全体の成熟化によって日本社会が新しいフェーズに突入したことはわしもいろいろな局面で実感することが多いのですが、過去の遺物だと思っていた「高いエンゲル係数」もこうしたなかで復活してきたのは驚きでした。MJには取り上げられていませんが、高齢者や障がい者、シングルマザー(ファーザー)などの貧困問題も、繁栄の陰に隠れた深刻な日本の課題です。このことも少なからずエンゲル係数に影響しているのではないでしょうか。

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