2016年1月9日土曜日

誘拐映画の新しさ「白い沈黙」

 伊勢市にある名画座の、伊勢進富座に行ってきました。
 今年初の映画は、昨年秋に封切りされたサスペンス映画 白い沈黙(The Captive)というカナダ映画です。
 

 ストーリーとしては、いわゆる「誘拐もの」です。
 カナダの小さな街で暮らしている主人公・マシューと妻のティア。二人には9歳の娘・キャスがおり、夫婦は娘がスケート選手を目指して日々練習に励む様子を見守るのが生きがいでした。
 しかし、ある吹雪の日、練習場から帰る途中でマシューが買い物に立ち寄ったほんの数分の間に、クルマに乗っていたはずのキャスが姿を消していました。


 当然ながら、マシューは娘が誘拐されたと主張しますが、物的証拠や目撃情報は何もありません。警察は、若いころ非行で逮捕歴のあったマシューに疑いの目を向けます。妻も失踪の原因を作った夫を激しく攻め、夫婦仲は冷え切っていきます。
 誘拐から8年たったある日。妻・ティアがルーム係として働くホテルの一室に、キャスの乳歯とか、スケートで入賞した時のトロフィーなどが置かれている、という奇妙なことが続けて起こります。
 娘は生きているのか、死んでいるのか? 誰が何のためにこのようなことをするのか?
 夫婦、そして捜査官たちの間にも疑心暗鬼が渦巻き、意外な方向に話は展開していくのでした。

 とまあ、こんな話の流れになるのですが、ハッキリ言って進富座のホームページにあるような「極上のミステリー」という評価はやや大げさです。
 初めから犯人が分かっていたり、ストーリーの時系列が前後されて入り乱れて展開されるので観客は混乱させられますが、登場人物の個性や心理の描写はやや雑で、サイドストーリーも最後は何か本筋のタネ明かしにつながるのかと思ったら全然そうではなかったりと、見た後で「なるほど、これはやられた!」という感想を持つ作品ではありませんでした。

 わしが印象深かったのは次の2点です。

 一つ目は、これは大変シリアスな話ですが、カナダのような文明国でも子どもの誘拐が組織的に行われており、彼ら彼女らを虐待する行為(おそらく性的な)や、それを撮影したものが、商品、あるいはサービスとして提供され、ネットで拡散しているという事実です。
 誘拐され、8年監禁されていた少女・キャスは、幸いにも ~という表現がいかにも不適当なのですが~ 虐待される側ではなく、加害者の側、つまり組織の一員として働かされていました。
 アフリカや中東の紛争地域では、少年が大量に誘拐され、少年兵として「殺す側」にさせられています。恐ろしい話ですが、誘拐組織は大変巧妙です。

 二つ目は、これらの誘拐がネットを利用して拡散し、ビジネス化しているということです。
 予告編にも、被害者の母親が盗撮されている様子が出てきますが、パソコンは犯罪集団から簡単にハッキングされ、自宅の様子や家族の会話が筒抜けになっている怖さは再認識させられます。

 この映画「白い沈黙」は、必ずしも出来が良い作品ではありませんが、誘拐犯罪の陰湿さや、犯罪集団の巧緻さ・冷酷さ、そして、このような犯罪に巻き込まれると平凡な市民の日常生活など一瞬で崩れてしまうこと、さらに、あまりに多い子供への犯罪に、捜査する警察の側も疲れ切っている様子などが、妙に印象に残る映画ではありました。

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