2016年2月1日月曜日

民泊規制はTPP違反?

 自宅の一室を旅行者に有料で貸し出して宿泊させる、いわゆる「民泊」が話題になっています。
 外国人観光客が急増し、国内のホテルや旅館の宿泊予約が取りにくくなっている中で ~確かに、東京出張で ビジネスホテルを探してもほとんど空きがない~、今すでにあって、しかも余っている「自宅の部屋」や「マンションの一室」を活用するというアイデアは、当然の知恵と言えばその通りでしょう。
 この、「今あるモノを皆で共有して使う」ことは大きなビジネスにもなっていて、シェアリング・エコノミーと呼ばれ、全世界で急速に広まっています。民泊ならAirbnb(エアービーアンドビー)というICTを使った仲介サービスが有名ですし、やはりICTにより自家用車をハイヤーとして使うUberというサービスも、以前このブログで取り上げたことがあります。
 しかし一方で、民泊は旅館業法に抵触する恐れが強く、既存の宿泊業者の経営圧迫になることや、衛生面・防犯面で不安があること、閑静な住宅街に宿泊客がやってくる(そしてしばしばハメを外す)ことが近所迷惑であるなど、多くの懸念やトラブルが生じていることも事実です。
 このため政府では、これらの声にも考慮して、民泊を旅館業法上の簡易宿泊所と位置付けて規制を一部緩和し、現在のような無許可状態ではなく営業許可の取得を容易にする方向で検討が始められています。また、東京都大田区では国家戦略特区制度に基づいて、外国人の長期滞在者向けの民泊を認める条例がこのたび施行されたところです。

 しかしながら、このシェアリング・エコノミー、世界各国のように日本でも一般化するかはよくわかりません。
日本人は毎日使うお箸やお茶碗は、家族がそれぞれ自分専用のものを持っています。食器を「シェア」するのが当たり前な諸外国とは違って、自分のモノの領域には日本独特の感性があり、割と古くからあるカーシェアリングの仕組みが欧米ほど広がらないのも、日本独自の所有感、占用感がネックにあるのではないかという気はします。

 それはさておき。
 その政府のIT総合戦略本部が昨年12月に公表した民泊の規制緩和中間案に対して、世界最大のインターネット事業者団体である インターネット・アソシエーション が、新しい経済として急成長が期待できるシェアリング・エコノミーを阻害するものだとして、是正を求める意見書を日本政府に提出したことが報じられています。

 日経ビジネス(2016年1月25日号)にあった記事で、 意見書の趣旨は次の2つとのことです。

1)シェアリング・エコノミーはほとんどがICTを基盤にして成り立っています。インターネット関連の規制は国際的な視点が不可欠なことは当然ですが、中間案は日本独自のルールを規定するのみならず、それを海外事業者にも域外適用する仕組みであること。

2)消費者やユーザー同士の取引を仲介するに過ぎないプラットフォーム事業者(はんわし注:AirbnbやUberがまさしくそうです)に対しても各種の確認義務や責任を求めていること。これは未知の違法コンテンツなどを削除すれば責任を問われない「プロバイダ責任制限法」と矛盾し、混乱を生じさせる。

 同誌によれば、インターネット・アソシエーションとは、アマゾン・ドット・コム、グーグル、フェイスブックなど名だたる超大手ICT企業が名前を連ねる団体です。アメリカでは政界への影響力が大きい団体として知られ、彼らが最終的に持ち出すのは、この中間案の内容はTPP(環太平洋経済連携協定)の内容とも矛盾しているということではないかと憶測されています。
 すなわち、中間案で示されている海外事業者への参入規制等がTPPが禁止する「サービスの越境取引の制限」に当たり、今後国際問題に発展する可能性があるとさえ示唆されているのです。

 TPPは農業問題ではなく、日本にとっては意外に閉鎖的なサービス業こそが大きな影響を受けるものであることは、以前このブログにも書きました。民泊規制はまさしくその典型です。
 旅館業に関する規制ではありますが、ICTがあらゆるビジネスのプラットフォームとなってくると、それも対象に包含するような規制についてはICTの問題として論点が拡散し、誰も反論できない「グローバル化に逆行するネット規制」へと本質が転化されてしまいます。
 このようなケースは今後もどんどん出てくるのではないでしょうか。

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