2016年2月21日日曜日

政府が「経営力向上計画」制度を創設へ

 日本経済新聞に、政府が今春、中小企業事業活動促進法を改正して新たに「経営力向上計画」の認定制度を創設することになったとの記事が載っていました。(2月21日付け「中小の税率3年間半減 固定資産税 政府が法改正案」)
 この制度創設は、経済産業省の中小企業政策審議会 基本問題小委員会が、中小企業の生産性向上について議論する中で具体化してきたもののようです。本年1月にはかなり詳細なディスカッションペーパーがインターネットで公開されています。
 これによると、
・少子高齢化等による労働力人口の減少や、国際競争の激化等が進む中で、中小企業の経営環境は厳しさを増しており、特に「少子高齢化等の社会の変化に対応する事業分野(はんわし注:医療、介護などに代表されるサービス業)や、輸出等によって国の付加価値を増加させる事業分野(はんわし注:製造業)については、生産性向上による効率化・競争力強化が求められる。
・しかし、中小企業の多くは生産性(はんわし注:従業員一人あたりの付加価値額)は低迷し、大企業との格差も開いており、人材確保や事業の持続的発展に懸念が存在している。
・このため、 中小企業の生産性を向上させ、労働の供給制約を克服し、将来の飛躍的な成長のための経営力強化を支援する必要がある。
 という理屈になっており、その具体的な支援方策が「経営力向上計画」になるようです。



 現在、政府で検討されている「経営力向上計画制度」とは次のようなものになるようです。

経済産業省「中小企業等の生産性向上施策の検討状況及び方向性について」中間整理案

1.まず政府は「基本方針」と、生産性を伸ばしている企業などの優良事例を基に、事業分野別に経営力向上の方法等を示した「指針」を策定する。
2.中小企業は、上記の「指針」に沿って、顧客データの分析を通じた商品・サービスの見直しや、IT(ICT)を活用した財務管理の高度化、人材育成等によって経営力を向上させるための事業計画(「経営力向上計画」)を作成する。
3.この計画づくりについては、商工会議所、商工会、金融機関、専門家などの、いわゆる「支援機関」がサポートを行う。
4.中小企業が、経営力向上計画を国に申請し、認定を得た場合には、固定資産税の減税(1.4%→0.7%)や、日本政策金融公庫による支援措置などが受けられる。

 これは、大まかな流れ的には、経営革新制度と同じような流れのイメージです。
 注意点としては、認定を受けても直ちに固定資産税が安くなるとか、融資が受けられるというわけではなく、制度を使うための資格を得られる、言うなれば「入場券がもらえる」ことに留まる点です。(ここが、補助金を受けるために作成が求められる小規模事業者持続化補助金における「経営計画」とは異なる点です。)
 なので、実際に融資が受けられるかどうかは事業内容次第ですし、固定資産税は市町村が課税する地方税なので別途減免の申請手続きなども必要になることでしょう。

 中小企業の生産性、その中でも特に市場が国内中心で、海外との厳しい競争が比較的少ないサービス業の中小企業の生産性が相対的に低いという問題は、このブログでも何度も取り上げてきました。(たとえば、こちらを)
 今回、その対策が法制化されるのは喜ばしいことだとは思います。

 ただ、シニカルな見方をすれば、生産性向上は今までも様々な施策が打たれてきています。またさらに屋上屋を架すような制度が設けられて、ただでさえ複雑な中小企業支援制度がいっそう見えにくいものになってしまう危険性は増します。
 国が定めるという事業分野別の指針も、高度、専門的すぎて、家族経営のような小規模企業には間尺に合うものなのかどうかも疑問なしとしません。

 一方で、今回は指針に反映される優良事例には、計画、実行、評価、改善というPDCAのサイクルも取り入れられるようなので、その点は期待できると思います。
 前述のように、現在でも経営革新支援制度のごとく生産性の向上を志向している支援制度は実はとっくに存在しています。しかし、それでも「中小企業の経営環境は厳しさを増している」という現状分析であるのなら、現行の制度ではどこに問題があって、どう改善しないと中小企業のイノベーションに繋がらないのか、という評価と分析の仕組みが、政府(行政)側にも、中小企業にも、さらに支援機関にもないのです。
 すべての問題は、このように政府による支援制度には「事後検証がない」という制度的な欠陥に由来している点は銘記しておくべきだと思います。

0 件のコメント: