2016年2月6日土曜日

鈴木三重県知事が給与の自主削減を撤回へ

 三重県内各紙は5日、県が公表した平成28年度一般会計当初予算案の内容を一斉に報じました。7366億円という予算額は昨年度に比べて実質60億円もの増加となっています。
 これと同時に、「日本一給料の安い知事」を選挙公約に掲げて平成23年の知事選挙で初当選し、実際に給与月額の3割、ボーナスの5割を自主削減していた鈴木英敬知事は、この知事給与特例を廃止して、条例で定める本来の給与額に戻すことも発表されています。
 現在任期二期目である鈴木知事の平成27年度の年収は約1390万円で、一期目を終えた際に受け取ることができた退職金約3620万円も受け取っていません。
 今回の自主削減廃止によって年収は約2170万円へと大幅な増額になる予定であり、現在47都道府県知事の中で最低の年収額は、全国20位台へと一気に上昇する見込みとのことです。
 自主削減を止める理由として鈴木氏は、平成26年末に県特別職報酬等審議会が「知事給与は削減前の本来の額に据え置くのが本来あるべき姿」と答申していたことを上げています。
 このタイミングでの自主削減撤回について、県議会最大会派「新政みえ」の代表をつとめる議員は「一期目の公約との整合性を説明してほしい」とコメントしているそうです。
 鈴木氏が初当選した際は、給与を自主削減する公約を支持した有権者も多数いたと思われ、ある意味で結果的な公約破りとなる今回の措置には反発の声も高まりそうです。
 わしの雑感をメモしておきます。


 そもそも三重県に何のゆかりもなく、自民党の公募で選ばれた無名の落下傘候補に過ぎなかった鈴木氏が知事選に当選したのは、当時の多くの報道がそう分析していたように、県政の最大勢力である民主党が知事候補の一本化に失敗したことによる敵失でした。
 あくまで国政選挙が狙いで、知事選は本命ではなかった鈴木氏は、若さと清新さを売りにするしかなく、今から見てもほとんど実現可能性がないか、制度持続性がない公約をぶち上げていました。その一つが「日本一給料の安い知事」だったわけです。
 しかしながら実際に当選してしまうと、私人としての生活もある中で、当然ながら1400万円足らずの年収ではやりくりが厳しいことにすぐに気が付きました。このため現職の三重県知事としては20年以上ぶりになると言われた政治資金パーティーを復活させ金策せざるを得ないことになったのです。昨年11月に開かれたパーティーでは一晩で2000万円以上もの資金が集まったと報じられ、このことが県議会で一部の議員から批判されたりもしています。
 何が言いたいのかというと、クリーンなイメージを売り込みたいがための公約であって、もともと何が何でも県会議員も含めた特別職の給与を適正化しようという熱意はあまりなかったこと、そして政治資金パーティーが政治家の資質に一定のマイナスイメージであることも考慮した、知事本人にとっては現実的な判断であったであろうということです。

 もう一つ見逃せないのは、今回、平成28年度当初予算案と合わせて、県職員の給与を引き上げるべきとした人事委員会勧告を完全実施するため約39億円を増額する内容の、平成27年度補正予算案も提出されていることです。
 三重県職員は今回の人勧実施によって昨年4月にさかのぼって給与が追給されることとなり、行政職の職員の平均年収は13万4千円のプラスになるとのことです。
 公務員の給与が高すぎるという批判は多いのですが、現在の法制度では知事、市町村長は人事委員会勧告を尊重する義務があります。リーダーシップが強く政治力もある河村たかし名古屋市長でさえ、市職員給与アップを答申した人勧をストップさせることができませんでした。ましてや政治力も、行政改革への熱い意欲も中途半端な凡百の知事や市町村長にとって、所属の職員を敵に回すことは命取りにつながり、ほとんど不可能なことです。
 
 つまり、三重県知事の自主削減撤回は、2大勢力である県会議員の給与見直し(削減)はしない、県職員の給与は引き上げる、というバーターで成り立つものであり、県議会からも県職員からもほとんど何らの批判は出ないことは明らかでしょう。政治資金パーティーを批判していた勢力に対しても大義名分が立ちます。非常に絶妙なタイミングであり、わりをくうのは有権者だけ、ということになりそうです。

(補足)
 このブログではたびたび書いてきましたが、人事委員会が勧告の根拠としている民間企業の給与には、生産性が高く、したがって相対的に給与が高い製造業も含まれています。これはおかしなことで、少なくとも公務労働と同じサービス業の企業の給与と比較すべきでしょう。
 

3 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

神経の図太さは顔に出ていますもんね、AK。
しかし、県民へ説明しないのは無責任。
さて、はんわしさんに質問なのですが、知事は年収1,400万で足りないというのはどういうことなのでしょうか。公務での付き合いでも、夜の付き合いは私費でかなり使ったりするのでしょうかね?

匿名 さんのコメント...

興味深く読みました。知事報酬増は県議会と労働組合への配慮であるとの論旨は伊勢新聞もそのよう書いていました。私が思うのは政府も今のタイミングで民間企業には賃上げを強く要請していることです。この情勢なら県庁職員を賃上げしても国策への協力だと言い訳できます。こういったことを考えると、鈴木知事もなかなか政治力はあるのではと思います。

半鷲(はんわし) さんのコメント...

コメントありがとうございます。
1.年収が足りないというのは、もちろんわしも詳細は知らないし一般論ですが県知事職としての公費負担基準以上、基準以外の交際費とか自分の応援組織(政治団体)の運営費にかなりの支出を要すると聞いたことがあります。人と会うので常に身なりも整えておかねばならず、背広代、クリーニング代なども一般人以上に相当かかるものと思われます。
2.わしが思っている「政治力」とは既得権など膠着した現状を突破する改革力というイメージです。情報を分析して調整したりうまく立ち回ることも、まあ政治力といえばそうでしょうが、果たして誰のための・・・という感じです。