2016年3月15日火曜日

交流キャラバンは宝の山だった

 経済産業省の主催による “ちいさな企業”交流キャラバン が尾鷲商工会議所で開催されたことが、朝日新聞など一部の新聞に記事掲載されていました。
 三重県のマスコミは国(中央省庁)が県内で行うことは何にせよ大きく報道する官尊的な姿勢なのですが、今回は遠隔地の開催だったのと、主催者代表が、中小企業庁の部長と中部経済産業局の局長という、やや軽量級の布陣だったこともあって扱いが小さかったのかもしれません。
 “ちいさな企業”交流キャラバンの開催趣旨や課題については、以前もこのブログに書きました(はんわしの評論家気取り 「“ちいさな企業”交流キャラバン」が尾鷲市で 2016年1月12日)のでそちらをお読みいただきたいのですが、予想通りというべきか、中小企業の代表として出席していた東紀州地域(三重県南部の、尾鷲市、熊野市、紀北町、御浜町、紀宝町の2市3町からなる地域)の10名の経営者が陳述する意見と、それを受けての中小企業庁、中部経産局のコメントはなかなか噛み合わず、これはちょっとどうなのか・・・と思ったのが正直なところでした。
 断っておきますが、わしは、キャリア官僚としてそれなりに偉いこの人たちが、東紀州までやって来て、地域の経営者たちとひざ詰めで意見交換するという、この姿勢は立派だと思います。
 地方自治体の首長でさえ、芸能人とのトークショーとか予定調和的な有識者会議には喜んで出席するものの、予測不能な不規則発言が飛び出すかもしれない一般住民との対話集会には絶対に出てこない人がいる中で、この真摯な姿勢は評価に値すると言わざるを得ません。
 意見交換としては噛みあっていなかったものの、出席した経営者の生の声はやはり掬すべきものがあったと感じたのでメモしておきます。


 主な意見は次のようなものでした。

・6次産業化への挑戦として、高級ミカンジュースを発売した。地元の高校生のアイデアを募ってパッケージをデザインするなどしたが、農家はみかんは作れるが営業活動は難しい。

・今まで夫婦でコツコツと誠実に30年商売を続け、今では全国から、時には外国からもお客が来てくれるほどになった。先年、初めて補助金を申請して役に立ったが、手続きが煩雑。

・熊野の新商品としてサンマの加工品を開発した。非常に好評で販路も拡大しているが、近年はサンマが不漁で原料が手に入らない。なんとも歯がゆい。漁業の衰退は大きな問題。

・先ほど海は魚がないという意見があったが、木はたくさんある。木工技術では負けないが、販路確保では行政の支援が必要。後継者を育てるにも、この仕事で食っていけなくてはならない。

・東紀州で唯一、某有名百貨店に口座をもって直取引している企業である。それはマーケットインの姿勢で、ターゲットを見据えて商品開発してきたから。TPPが発効すれば東紀州は壊滅してしまうだろう。それに備えなくてはいけない。

・公共工事の減少で、地域を支えてきた建設業者は苦境に立っている。地域で雇用を確保することが地元企業の使命であり、新たな事業を始めて収益の柱に育てようと取り組んでいる。

・関西空港近くに物流拠点を構え、東紀州の食品などをアジア各国に輸出している。日本の産品は大きな支持を得ておりチャンスである。海外展開をぜひ一緒にやっていこう。

 これに対して、経産省側からは「失礼ながら尾鷲のような土地で、積極的な新商品開発や海外の話が聞けると思わなかった。非常に期待している。」といったコメントがありました。

 このあとフリーディスカッションになったのですが、ここで経営者の本音が次々吐露される状態になりました。

・経営者は時々このような会議にも参加でき、情報が得られる。しかし、中小企業を支えているのは経営者の奥さんたちであり、たとえば託児サービス付きで、このような働く女性が経営のことや補助金のことを勉強できるような機会を作ってほしい。

・ある補助金を使って試作品を作ったが、それを売ってはいけないと言われた。売って儲かったら補助金を返してもらうことになると。試作とは売れるか売れないかを試すものであって、売ってはだめだと言われたらマーケティングにならない。

・補助金は充当率が2/3なので残りの1/3は自己負担しなくてはいけない。零細企業にはそれが厳しい。全額の補助金にしてもらいたい。

・新規事業立ち上げのために第2創業の支援制度を申請しようとしたら、尾鷲市は創業支援事業計画を国に申請していないので、市内の事業者はその制度は使えないと言われた。残念である。

・TPPに加盟したということは、日本国は農業を捨てたということである。生き残りのために国は能力のある中小企業を支援してほしい。

・地域に必要な「産業」と「観光」を一体化して進めるために、地元有志による団体を結成してグリーンツーリズムに取り組んでいる。域外の企業研修などに活用してもらえる方策が知りたい。

 これらに対しては、経産省側も返答の仕方がなく、「補助金には収益納付制度があるので・・・」とか、「補助金にはそれぞれ交付目的があるので、まずは補助要綱をよく読んでもらって・・・」とか、「ミラサポという中小企業向けのポータルサイトがあるので、くわしい情報はぜひそっちで・・・」などと答えていました。
 まあ、部長にしろ局長にしろ、キャリア官僚は実際の補助金交付実務は経験がないので、施策全般や制度の説明はともかく、細かい補助金の運用については中部経産局の担当官が代わりに答えてもよかったのではないかと思いました。
 わしだったら、補助金などなるべく使わないほうがいいし、特に国の補助金は小規模事業者にとって使い勝手が悪い ~金額が大きすぎる、手続きが煩雑、交付決定が遅い、検査が厳しい、etc~ので、せめて県の補助金にした方がまだマシです、と言ってしまったことでしょう。

 こんな感じで2時間半、意見交換が続きました。というか、司会者がつぎつぎ発言を振っていって時間を持たせた印象もありましたが。
 しかし、このような機会は本音が聞ける宝の山で、行政や産業支援機関、金融機関の関係者にとっても少なからず有益だったはずです。

 会議終了後、あとひきでそれぞれ参加者や傍聴者が名刺交換しながら立ち話していましたが、わしが聞いた、おそらく一番印象に残ったある経営者の言葉。

「私は今までにこのような会議に出たことが一回もない。今日は商工会議所からも頼まれたから出てきました。私が言いたかったのは、国や何やの支援も受けず、補助金ももらわず、ただ一生懸命に商売してきて、それでもお客さんは来てくれて商売は続いているし、子どもが跡を継いでくれることになった。こんな中小企業もいるということをお伝えしたかっただけです。」
 

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