2016年3月23日水曜日

無知は罪

 先日、ある経営者の方と雑談していて、「わしなあ、驚いたことがあるんや」と話してくれたことが大変印象的だったのでメモしておきます。
 それは、東京の偉い人々が「地方」の「視察」にこの地方にやって来た時の話だそうです。オブラートに包まざるを得ませんが、東京の偉い人とは、政治への強い影響力や情報発信力を持つ、ある種の職業や立場の人とご理解ください。要は行政機関に対して、こんな政策を作れとか、これだけの予算をここに付けろ、というような意見を発することができる「権力」を持っている人です。
 アベノミクスの恩恵が行き渡っていない(と信じられている)津々浦々の「地方」は今どんな状況なのか、その中でがんばっている人々、なかんずく地域で付加価値と雇用を生み出している地域中小企業の経営者と意見交換し、それらに必要な政策作りに反映していくという目的で、その人々は「視察」にやって来ました。
 その経営者の方は、地域の産品を地域外の消費者に販売する卸売業、言うなれば地域商社的な事業をしています。農林水産品は豊富に獲れるものの、それを素材のままで売っても二束三文です。付加価値をつけるためには商品に加工しなくてはならず、商品化に当たってはまず都会の消費者の意見を聞き、専門家を使って消費トレンドや市場動向をマーケティングしてから開発や試作に当たることによってヒット商品を次々生み出すことに成功しました。
 これは10年ほど前にマスコミにも大きく取り上げられ、地方経済活性化の成功例として関係者の間では比較的有名な事業でもあったのです。

 しかし、今回「視察」に来た人々は、そのことをまったく知りませんでした。商品開発や販促活動に関しては国や県の支援制度も使い、高等教育機関ともタイアップし、いくつかの表彰も受賞しています。
 ただ、それは5年くらい前までのことで、事業が軌道に乗ってからは資金は金融機関から借り入れ、営業も開発も生産も全部自前でできるようになって「偉い人々」にあまり関わらなくても自立できるようになった、その途端、偉い人の視野からすっぽり抜け落ちてしまい、いつしか忘れられてしまったのです。

 そして、偉い人々が言うには
・この地方にもこのように頑張っている経営者がいて心強い。
・この成功例をぜひ全国の他の困っている地域にも横展開してほしい。
・行政や大学や金融機関も頑張っている人は助けるので、どんどん活用してほしい。
 などの感想を口々に述べ、この会社の商品サンプルを試食したり体験したりして大変満足そうに東京に帰られたそうです。

 しかし、経営者は言います。
・自分は確かに頑張ってきた。でもそれを認めてもらったから表彰されたのではなかったの?今さら感心されても・・・
・中小企業は売り上げが1千万、2千万の市場だからこそ商売になるし生き残れる。全国の手本だなどとおこがましいし、逆に全国展開したらすぐに大手に食われてしまう。
・補助金や助成金は麻薬のようなものだし、大学生は毎年新しい学生が来るのでこちらが先生のかわりに教育してあげているようなもの。
 つまり、地方の中小企業は常に弱く、常に強者の手助けを必要としているという思い込みがあるのだろうな、ということだそうです。

 反対の見方をすれば、かつて行政や大学の支援で事業が強く大きくなった企業であっても、数年インターバルがあくともう忘れられ、今度はこんな支援制度ができたから使ってみろ、こんな補助金ができたから受けて見ろ、と同じような話を何度も何度も繰り返している。
 一体何のためにやっているのか? それが経営者という合理的な思考の持ち主から見ると不可思議だということでしょう。

 わしに言わせれば、それはこのような「偉い人」は、地方経済が弱く、地方の中小企業は苦しくなければ失業してしまうからです。彼らは地域が本当に自立してしまうと自分たちの存在意義がなくなるので、どうでもいいことは一生懸命に支援しますが、本質的なことは支援しません。自分が商売人でも経営者でもないので、そもそも本質的なビジネス支援などできるはずもないのです。

 わしは思います。
 そろそろ地方の経営者も、こんな「偉い人」を当てにしてはいけないと。
 偉い人は、さも自分のカネみたいに威張りますが、そのカネの出所は税金、いや税金どころか、まだ生まれてもいない日本の将来の子孫たちに必ずツケが回る、国債や地方債です。
 偉い人の言うことを聞いて今の我々が何やかややればやるほど、可愛い子どもたちや孫たちは苦しむのです。
 景気回復だ、国際化対応だ、成長戦略だ、などと掛け声は色々ありましたが、結局何も変わらなかったではないですか。
 結局、頑張る中小企業など見えていないではないですか。


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