2016年3月29日火曜日

軽がると飛び越えればいい

 なんじゃコリャ!?、的なニュースでした。
 今日の中日新聞朝刊に、三重県南部のある市で「海女(海に潜って魚介を獲る女性の漁師)」の若手ホープとして、観光キャンペーンはもとより、定住促進や子育て支援といった市の施策PRにも海女のコスチュームである純白の磯着姿でよく登場していた女性が、このたび結婚して、新居を市外に構えることがわかった、という記事が載っていました。(3月29日付け「結婚・転居後も海女やりたい」)
 ご結婚はおめでたいことです。どうかお幸せに。
 しかし、まさに今ブームの「地方創生」の申し子よろしく、市役所や市観光協会、漁協なんかに重宝使いされ、メディアに露出しまくっていた、いわば海女の広告塔のような若手が、結局、故郷を離れてしまうということには一抹の無常観というか矛盾というかを感じないわけにはいきません。
 お断りしておきますが、わしはこの人を非難する気はまったくありません。
 わしも観光物産展なんかで何度か彼女と言葉を交わしたことがありましたが、明るくて元気がよく、大変好感が持てる人でした。市役所をはじめ、関係者がこの女性をキャンペーンに使いたいと思うもの無理はないと納得するような素敵な女性なのです。
 見方を変えれば、この人を海女のスターに押し上げ、地方創生のキャンギャルに仕立てたのはオジサンたちの勝手な思惑の結果であって、むしろ、そんなしがらみに囚われず、ハズバンドと一緒に軽々と飛び越えてしまうようなこの方に、わしはシンパシーを感じるのです。

 最近わしはよく感じるし、実は多くの日本人も心の中ではそう思っているのではないかと思うのですが、今の地方創生、つまり市町村などの地方自治体が計画を作り ~そのほとんどは、移住者を増やすなどで将来にわたり人口を横ばいにするといった荒唐無稽な内容~、その計画が妥当なものであれば国がおカネを出し、そのおカネで自治体は、結婚相談所や婚活パーティーをやったり、都会にアンテナショップを出したり、プレミアム商品券を発行したり、子どもの医療費をタダにしたり、奨学金を出したり、新築する人に補助金を出したり・・・・・といった「対策」を講じています。
 ただしこれらはすでに過去何十年にもわたって同じようなことをやってきて、それでもほとんど成果がなく ~だから地方の少子高齢化は止まっていない~、単に看板を架け替えてまた同じことをやっても、やはり結果は同じだということが、この数年間の熱狂が少し冷めてきた今、皆の頭をよぎり始めているのではないでしょうか。

 地方で生まれ育ち、その地方特有の地場産業に従事していたとしても、若いうちに一度は外の土地での生活も体験してみたいと思うのは当然だし、結婚を機に故郷を離れることも何ら不思議ではありません。
 むしろ地方創生で作られたUターン奨学金のように、将来故郷に帰って就職すればよし、間違っても東京なんぞで就職しおったら奨学金は利子をつけて返済せよ、とカネで田舎に縛りつける方が不気味といえば不気味、型に嵌めてしまうだけタチが悪い。

 地方創生を3年近くやり続けても、中国の景気減速なんかで、やはりもう経済が成熟している日本は世界経済の潮流から逃れることはできません。地方なり、個人なりがどれだけ工夫しても頑張っても、なかなか先が見通せない中で、その不気味さ、タチの悪さが、だんだん鎌首をもたげてきているのです。
 
 故郷を愛してくれるのは大事。せっかく支援策があるならせいぜい活用すればよい。
 けれども、それを飛び越えていってもいいのです。
 それが若者の特権ではないですか。

(補足)
 中日新聞の記事は、その海女さんが市内(というか、彼女が加盟している漁協がある地域)から転居すると、その漁協の規約により漁業権を失うことになるところ、本人が海女漁やイベント出演を続けたいと希望していることから、漁協は漁期を限定した短期の漁業許可を与えることや、いっそのこと特例で、地域外居住者となっても漁業権を認めては、との声も出ているそうです。
 そういった、人治主義的なところが漁業の奥深いところです。
 後継者がいなくて困っている一方でそんな対応が可能なのであれば、意欲のある新しい漁業者を地域外から集めてきて、通いで漁業をさせたらいいのではないでしょうか。

3 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

「奥深い」っていうのが、奥ゆかしい表現ですね。

匿名 さんのコメント...

確かに人口が減るからと若い世代をその地域に縛り付けるのは考えもの。しかしこの海女さんは定住を市外に呼びかけるキャンペーンガールに親子三代で就任しています。その人が実は市外から通勤しているなんて、「語るに堕ちる」とはまさにこのことですよ。自分には半鷲さんの意見は理解できません。

匿名 さんのコメント...

そんなこと言ったら県がやってる移住キャンペーンビデオの出演者は全員県外在住。
だから試聴数が1万しかないのかもしれないけど笑
これで知事が定住しなかったら、最高のジョークビデオですね。