2016年4月18日月曜日

紀勢自動車道のストック効果とは

 国土交通省紀勢国道事務所が、「道路の開通による整備効果」紀勢自動車道・熊野尾鷲道路のストック効果 なる報告書を公表しました。
 三重県東紀州地域の5市町(紀北町・尾鷲市・熊野市・御浜町・紀宝町)と国土交通省などで構成する東紀州地域高速道路整備効果検討会が、平成26年3月に全通した高速道路(紀勢自動車道)と自動車専用道路(熊野尾鷲道路)について、開通によって生じているさまざまなストック効果や地域変化をとりまとめたものです。
 ちなみにストック効果とは「整備された社会資本が機能することによって、継続的に中長期的に得られる効果」という意味だそうで、要するに、高速道路が開通してどれだけ経済的、社会的な利益が生まれたかを取りまとめたもののようです。
 効果の具体例として、移動時間短縮、観光客の増加、防災、医療・福祉、産業など13分野の事例が挙げられており、これを見る限り東紀州はこの2年間右肩上がりで、良いことばかり起こっているようです。


1)観光入込客数が過去最高を記録!  ~都市部から多くの観光客がわが町に~
 道路の延長とともに、東紀州地域の観光入込客数は平成24年以降、3年間連続で増加。熊野古道の世界遺産登録10周年もあいまって、平成26年は過去最高の観光入込客数を記録。

2)滞在時間が増加し消費額も増加! ~都市部からの日帰り観光圏域が拡大~
 名古屋市など都市部からの所要時間の短縮により、日帰り滞在時間・日帰り観光客1人当たりの消費額が約1.4倍に増加。その結果、夏期の日帰り観光客による消費額が約8億円増加。

3)キャンプ場の売上げが過去最高を記録!  ~大自然を求め予約困難な人気施設に~
 紀北町の「キャンプinn海山」では、高速道路の開通により岐阜・静岡・関西方面に来場圏域が拡大し、入込客数が平成17年と平成26年を比較すると約2倍以上、売上高も約1.7倍に増加。

4)陸の孤島からの脱却!  ~長年、地域を悩ませた大雨による災害~
 全線開通後の平成26年4月以降、延べ11回の通行止が発生してるものの、紀勢自動車道・熊野尾鷲道路が国道42号の代替路として機能を発揮。

5)津波から地域住民の“いのち”を守る! ~南海トラフ地震への備え~
 南海トラフ地震による津波被害の備えとして、高台に位置する高速道路の管理用通路等を緊急避難施設として整備。地域住民の命を守る。

6)“いのちを救う”医療サービスが身近に! ~高度医療施設との連携強化~
 開通により、紀南病院から伊勢赤十字病院への転院搬送時間は約19分短縮。搬送時間の短縮により、伊勢赤十字病院など第3次医療施設への転院搬送件数が大幅に増加。

7)病院の選択肢が増え安心して透析が可能に! ~雨量規制による通行止を回避~
 所要時間短縮により、熊野市から尾鷲総合病院への新規患者数が増加。同病院は県内の公立病院で最多の透析患者を抱えており、「大雨時でも通行止を心配せずに通院できる」と感謝の声。

8)企業活動・業績がプラス!  ~地域企業が開通効果を実感~
 東紀州の企業にアンケートを実施したところ、回答企業の7割以上が、開通により「業績にプラスの影響があった」と回答。

9)養殖ブリの海外販路拡大を支援!  ~安定供給ルートが実現し、民間投資が拡大~
 尾鷲物産(株)(株)食縁(新宮市)では水産加工工場への投資を行い、養殖ブリの海外輸出に取り組んでいる。高速道路が養殖ブリのブランド化や海外販路拡大など、地域産業活動を支援。

10)三重南紀みかんの海外販路拡大を支援! ~荷痛み軽減・安定輸送が実現~
 JA三重南紀は、近年「三重南紀みかん」をタイへ輸出しているが、高速道路開通により荷傷みが少なくなるなど安定輸送が実現し、輸出量が初出荷時から約12倍に増加。

11)地方の高い技術力で日本の住宅火災を守る! ~精密製品の安定輸送が実現~
 パナソニック エコソリューションズ電材三重(株)では高速道路開通により、精密製品の安定輸送が可能となり、品質確保が実現。新たに工業団地へ進出し、事業規模を拡大。

12)スポーツ交流宿泊者数が過去最高を記録!  ~スポーツ交流地としてのブランド化を推進~
高速道路延伸に伴い、スポーツ交流地としてのブランド化を推進している紀北町と熊野市では
スポーツ交流宿泊者数が平成17年と平成26年を比較すると約3倍に増加し過去最高を記録。

13)世界遺産で打ち上がる花火をゆっくりと!  ~交通分散により渋滞が大幅減少~
 熊野大花火大会は多くの観客が訪れる反面、会場周辺の道路では深刻な渋滞が発生。熊野尾鷲道路で交通分散を図る円滑化対策を実施したところ、渋滞長は大きく減少し、渋滞緩和に貢献。

 以上です。
 くわしくはぜひ、紀勢国道事務所のホームページから報告書をお読みください。(リンクはこちら。PDFファイルです。)

 この中でわしが特に注目したいのは、11のパナソニックの事例です。観光客の増加などは当然予測されていた効果ですが、東紀州地域に立地が少ない製造業企業が、道路開通によって事業を拡大しているというのは初めて知りました。
 QCD、つまり、品質、コスト(価格)、納期の3つを厳守することは製造業企業にとって非常に重要な命題です。一般的に考えて、製造の最終工程(組立工程)が集中する都市部から距離的に遠い地域では、特に納期(デリバリー)の確保が難しく、立地は不利な環境と言えます。
 これが高速道路や熊野尾鷲道路によって解決したとすれば、東紀州への新規工場立地や、現在ある製造業企業の競争力強化に役立つことであり、大きなストック効果だと思います。

 一方で、わしが実際に経営者(製造業を含め)から聞いた話では、
・熊野尾鷲道路と、紀勢自動車道の尾鷲北IC~紀伊長島IC間は無料なので利用するが、コストが厳しい中、有料区間はなかなか使うことができない。
・高速道路ができて雨による通行止めが減ると思ったら、実際には従来の国道(42号線)よりも高速のほうが早く通行止めになる。これでは意味がない。
 というものも複数から聞きました。
 特に通行止めのほうは、報告書の4では簡単にしか触れられておらず、実際にそのようなことがどれくらい発生しているのかについて、もう少し深入りした分析が必要かもしれません。

 また、当然ですが、高速道路整備によってストロー現象のような負の効果も必ず生まれているはずです。これについてもこの報告書にはまったく記載がなく、公平性を欠いています。
 このブログでは何度もこのように国土交通省(東紀州地域高速道路整備効果検討会)が道路建設の効果を検証しているのを取り上げてきましたし、その姿勢は敬服しています。ならば、そろそろ顕在化して生きているように思える負の効果も真摯に検証すべき時期なのではないでしょうか。

■紀勢国道事務所  http://www.cbr.mlit.go.jp/kisei/

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