2016年4月19日火曜日

テスラは新しい価値観を売っている

 アゴラに、NPO法人Regional Task 代表であり「テスラ・シンドローム・ウオッチャー」を自称するNick Sakaiという方の テスラが日本の自動車・電機メーカーを破壊する日 という投稿が掲載されていました。
 日本では、昭和40年代の高度成長期から平成のバブル期まで、クルマは若者のあこがれであり、何よりも「新しいライフスタイル」も提案してくれる魅力的な商品でした。残念ながら今のコモディティ化した日本のクルマは生活用品ではあっても新しいライフスタイルを提案などしてくれません。
 これに対して、テスラは、「車(もの)」ではなくて「新しい価値観」を売っている、というのがSakai氏の見方です。わしにとって興味深い内容だったのでメモしておきます。




 次世代自動車の本命は、長らく電気自動車(EV)といわれてきましたが、トヨタがハイブリッド車を投入すると市場での人気が二分され、最近では燃料電池自動車(FCV)も量産が始まり、少なくとも日本で暮らしている限り、これらが三つ巴の戦いを繰り広げているような印象を持ちます。
 しかしSakai氏によると、米国テスラ・モーターズが4月7日に発売を発表した新型EV「モデル3」は2週間で40万台もの予約が殺到しており、アメリカで販売が不振なトヨタ・プリウスPHV(3月の全米売り上げは7台!)と好対照をなしているそうです。 

 テスラのCEOであるイーロン・マスクは、Wallという自宅設置型の蓄電池と太陽電池をクルマとセットにして100%電気の自給自足生活をアピールしています。
 太陽光で発電し、家の電池や車に蓄えて使うというエコな生活スタイルを「自動車でも家庭でもゼロエミッションってCoolじゃないか!」という消費者のエモーション(心情)をくすぐって、消費行動に繋げているのです。
 これは一種のブランディング戦略ですが、プリウスも発売された当時は先端的エコカーとして、レオナルド・ディカプリオといったハリウッドスターが「エコな自分」をブランディングするために競って乗った時代があります。これがなぜ凋落してしまったのか?

 Sakai氏によると、このテスラの戦略は、日本以外の諸外国では急速に普及しつつあるUberやAir B&Bといったシェアリングエコノミー型のアプリケーションと相まって、日本の自動車・家電メーカーに破壊的打撃をもたらすリスクを持っているそうです。トヨタをはじめ、今の日本の自動車メーカーは、アップルがiPodを売り出した頃のソニーの立ち位置に近いとさえ直感するというのです。

 その理由は、
1)「いいもの(音)を作れば売れる」という供給サイドの傲慢な思い込み
2)アップルはItuneという音楽配信システムを売っていた(iPodはそのシステムの端末に当たる)のに、CDを販売していたソニーは社内外や音楽業界の「しがらみ」、「規制」を打ち破れずシステム展開を果たせなかった
 ことにあります。
 これは今のトヨタも同様で、「もはやクルマ(モノ)単独でライフスタイルは訴求できない時代に入っている」のに車(モノ単品)に固執しており、テスラのような、全量太陽光発電で賄う、とか、家庭もひっくるめてのエコ化、のようなシステムを構築できていないのです。

 しかも、Sakai氏によれば、そうしたテスラの提唱するシステムさえ、実は先行していたのは日本企業でした。自動車と家庭や電力配電網を繋ぐシステム(V2HやV2G)などは、もともと日産が構築し、ニチコンという会社がずっと前から売っています。シャープも2年前に、ネットワーク上で情報を管理するクラウドサーバーと連携して、電気料金プランや季節・時間帯によって変化する電力使用状況に合わせたエネルギーマネジメントを実現するという「クラウド蓄電池システム」という商品を売り出しています。またNECも同様の製品を売っています。

 しかし、日本メーカーはこれらをあくまで「家電製品」とみなしていたため、製品の色味とかカタログ、ウエブサイトがダサく、消費者にわくわくを提供できるようなプロモーションになっていません。 一方で、テスラのWallは白と銀が基調でスタイリッシュ、近未来的でデザインに強いこだわりを感じさせます。
 価格もWallが40万円なのに対し、日本のものは350万円と約10倍もの差があります。電気料金メニューとの連動や、EVとのセット販売などもなく、快適・便利に関心があってもお客は買ってくれないでしょう。
 つまり、アップルにソニーが敗れたのとほぼ同じ原因により、日本のエコカー市場はテスラに席捲されてしまう危険性があるのです。

 ではどうすればよいのか?
 Sakai氏は、プリウスは不振であるものの、アメリカ国内でレクサスは販売が好調で、BMWとメルセデスを抑えて販売シェア首位に立っていることにヒントがあると言います。
 このあたり、トヨタの挽回に期待したいところですし、トヨタに限らず、自動車にせよ家電にせよ、製品の提案力というのか、暮らしの利便性向上のためのシステム化について、日本メーカーの発想の転換と奮起が求められています。

テスラが日本の自動車・電機メーカーを破壊する日 --- Nick Sakai

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