2016年4月26日火曜日

大阪市・修学旅行ものづくり工場見学ツアー

 時事通信社が配信している地方公務員向けの情報サイト 官庁速報 に、「修学旅行生に工場ツアー企画=大阪市」という記事が載っていました。(4月22日付け)
 かつて紡績業が盛んで、今も高い技術力のある企業が多く立地する大阪市大正区で、大阪を訪れる修学旅行生を対象にした同区の工場見学ツアーを本格実施する、というものです。
 大正区では、ものづくりのまちをアピールする事業(大正ものづくりプライド)を平成25年度から展開しており、平成27年度には修学旅行生向けの工場見学ツアーを試験的に始めたところ、福島県など7校から約350人が参加し好評だったことから、平成28年度からの本格実施に踏み切ったとのこと。
 中小企業の作業現場に学生・生徒に足を運んでもらい、ものづくりに関心を持ってもらうのが目的としているとともに、就職先に大正区を選んでもらい人口減少に歯止めをかけたい考えもあるそうです。
 工場など産業の現場を部外者に見学させたり、体験作業をさせるのは、「産業観光」とよばれるものです。


 一般消費者向けの食品などでは、作業工程を公開することで、消費者に会社や製品のファンになってもらうといったように、産業観光の手法は広く用いられています。しかし、中間財の製造業のように、直接には一般消費者に向き合うことが少ない分野でも、近年の人手不足とか、新規学卒者の就職ミスマッチの予防といった観点から産業観光を活用するのは、この大正区のように一定の効果が見込めるし、今後ますます進んでいくことでしょう。


 大正区のホームページによると、平成27年に施行した修学旅行生向けの工業見学ツアーは、県外の小学校1校、中学校1校、工業高校3校が参加しています。また、学校の先生向けのツアーも試行しています。
 これらのツアーの結果もホームページで公開されていますが、小学校なら大阪市港湾局でドックや防潮扉の見学など、でっかい!、かっこいい!的なアプローチの内容ですが、工業高校になると、制御盤の製造工場を見学し、普段の学校生活では見ることのないの工場現場を体感するとともに、社長からものづくりの難しさや社会人としての在り方・心構えを講演してもらうなどの高度な内容となっています。

 もっとも、工業高校レベルになると、(少なくとも三重県では)工場見学や経営者による講演会などにはけっこう取り組んでいるので、あくまでも青春時代の一大トピックとしての修学旅行においてこういう場を提供することが付加価値なのかもしれませんし、うがった見方をすると、参加している学校は北陸や東北が多いことから、工場の数が少なく、見学に適したところが見つけにくいという事情はあるのかもしれません。

 大正区が今春から本格開始する修学旅行ものづくり工場見学ツアーの受け入れでは、区内の約40社から協力を得て、全国の小学校から高等学校までの修学旅行を大正区がコーディネートします。
 大正区はまた、平成27年11月に、西日本では初めての開催となる「大正オープンファクトリー」を開催しています。オープンファクトリーとは、地域にとっての誇り(地域資源)である“ものづくり”を多くの方に知ってもらうために、区内のものづくり企業の工場見学と、区内の一般的な観光スポット巡りとを組み合わせたようなイベントで、先駆例として東京都大田区の「おおたオープンファクトリー」が有名です。 
 このように総合的に取り組めるのが市町村の強みであり、もっと言えば、大阪市内の「区」のような人口が多く、エリアが狭い中にたくさんの企業が立地しているという集積度の高いところでは、より効果が高まると思います。

 気になるのは、ものづくり企業、特に中小企業側の反応です。実際に学生・生徒を受け入れるのは、直接利益に結び付くわけではないし、アテンドする社長や社員の人件費、工場見学時の安全確保コストなどを考えると、負担は決して少なくないからです。
 この点についてはニュースサイトである The PAGE にルポが載っています(工場見学で大正知って! 区が全国初の修学旅行ツアー企画事業 2016.04.13)。
 これによると、要するに、企業サイドもこのツアーに協力するメリットは大きいのです。産業観光はこのように当事者がウインウインの関係になることが重要なので、この点でも大正区の取り組みは注目に値すると思います。

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