2016年5月12日木曜日

伊勢志摩はこの程度では盛り上がらない件

 地元ではいま一つ、盛り上がりにかけているG7主要国首脳会議(通称伊勢志摩サミット)ですが、オバマ大統領による広島訪問の決定と、パナマ文書によってタックスヘイブンを使った課税回避への批判が強まってきたことで、ここに来てようやく世間の耳目が集まってきたように感じます。 

 先月末の共同通信社による志摩市民アンケートの結果では、サミットについて「盛り上がっていない」と回答した人が、何と半数以上にのぼりました。しかし、はばかりながら、このことはわしが以前このブログでとっくの昔に指摘していたことです。
 一方で、5月11日付けの中日新聞によると、伊勢市の商店街が主催した商店主向けのセミナーで、講師のブランド総研なるコンサル会社の社長が、「地元が盛り上がっておらず、おもてなしの精神が伝わってこない」などとコメントをしたそうです。
 こうした残念な人々が、なぜこのような勘違いをするのかは、地元住民以外にはわかりにくいことかもしれませんので、ごく簡単に説明しておきましょう。


 まず第一に、今回のサミットは安倍首相による伊勢志摩で開催したいという強いトップダウンによって三重県での開催が決まったものであって、ボトムアップによる盛り上がりがそもそもまったくなかったことです。
 首都圏や関西圏のように市民活動が盛んな地域であれば、人権問題への取り組みや経済成長至上主義への懐疑など、良くも悪くも、市民の声を各国の首脳に届けようという機運が盛り上がってくると思いますが、三重県のような日本の平均的な「地方」にはそういったパワーもコンテンツも不足しており、サミットも天から降ってきたイベントといった認識しかないのです。
 今、一部の熱心な住民が取り組んでいる「盛り上げ」の方法は、「花いっぱい運動」なんかです。これではなかなか理解が広まらないでしょう。

 第二に、三重県や志摩市などの自治体は、サミットの意義を矮小化し、国内外からの観光誘客のための千載一遇の知名度アップの機会と捉えて、そのための関連施策しかしなかったことです。
 しかしサミットは開催日がわずか二日間に過ぎない超短期イベントで、観光キャンペーンもいかにもパンチに欠けています。90億円という開催経費も、その多くは警備費用と道路の改修費用などで、純粋に観光地としての魅力が向上するインフラ整備(たとえば、高速道路の志摩市への延伸や、中部国際空港と三重県内各都市との直通列車の運行など)はほとんどありません。
 かつては伊勢神宮の20年ごとの式年遷宮にあわせてインフラが整備されてきた伊勢志摩地域にとって、この肩透かし感はハンパないものがあります。

 伊勢はすでに江戸時代以前から日本有数の観光地であり、鳥羽、志摩も戦前から観光開発は始まっています。長い歴史を有しています。観光キャンペーンなど官民によって無数に取り組まれてきました。
 伊勢志摩のネイティブから見れば、洞爺湖や沖縄などははるかに格下の新興観光地に過ぎません。観光プロモーション手段としてはサミットでさえワンオブゼムであって「なぜ伊勢志摩が今さらサミット・・・?」という感じが強いのです。(このことは、奈良や鎌倉といった国際的観光地の地方都市に住む方なら納得していただけると思います。)

 つまり、一言で言えば今まであった観光キャンペーンの一環に過ぎず、かつ中途半端な規模のものにしか映らないのです。これが地元が盛り上がらない理由です。

 一方で、共同通信のアンケートにもあったように58.7%は観光客増加や地域ブランド力向上などの面で、サミット開催に期待感を持っています。これもまたもっともなことで、今後も道路インフラの整備や観光関係者のスキル向上、観光資源の開発などに不断の努力を続ければ、世界的な観光地になるものと思います。
 しかしながら伊勢志摩サミットの世界的な関心は広島や長崎へと向かい、世界から観光客が増えるのもそちらのほうが多いでしょう。
 また、国内でも東京オリンピックがブームになっていくので、伊勢志摩は相当に投資し、人材も開発しなければ、優位性を持続するのは困難だと思います。

3 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

一県民です。今回のサミットは首相ー知事ラインで、知事の国政進出のために持ち込んだ企画ですよね。県民としては、三重県を彼の功名心のために食い散らかされたような気がします。
盛り上がらない背景にはそんな思いもあるのではないでしょうか?

匿名 さんのコメント...

初めてコメントいたします。半鷲様の書かれている内容に大変感心しました。私は現在は県外におりますが元は県南部出身です。連休で帰った時にあまり伊勢志摩サミットに親族も知人も興味がないようで不思議に思いましたが、観光PRの延長にサミットがあると捉えると地域住民の冷静さも納得がいきます。
ともかく無事に終了し、結果的に少しでも観光客が増えれば地域振興に貢献すると思います。

半鷲(はんわし) さんのコメント...

 コメントありがとうございます。
一県民さま
>三重県は当初、経済閣僚会議を誘致予定だったところ、急遽「地元財界からの要請があった」という理由でサミット本体の誘致に切り替えた経緯があり、このあたりから非常に不明朗でした。(安倍総理の強い意向だったことは後に知られるようになりました)
 このボタンのかけ違いで、行政や観光業者以外はほとんど蚊帳の外だったのです。県は財政状況もきわめて逼迫しており行財政改革は必須です。県職員の給与を減額する力技に出られるのか、途中で投げ出すのかは注目されるところです。
匿名さま
>わしも伊勢志摩出身ですが、行政と観光関係者以外、サミットを評価している人などほとんどいません。商店主などは警備のため大挙してきている警察官向けの物販などで恩恵を受けているし、観光客増加への淡い期待があるのでしょうが、大多数の住民は迷惑をこうむっているだけです。公共工事の前倒しで一気に需要が膨らんだ建設業者などは、あと5年間は日干しだ(仕事がない)と言っています。