2016年5月28日土曜日

宴は終わった、さあ働こう

 三重県志摩市を舞台としたG7主要国首脳会議が終了しました。
 ネットを見る限り、ニューヨークタイムスとかCNNといった海外のニュースサイトにおける通称「伊勢志摩サミット」の扱いは意外なほど小さなものでした。
 これは国内でも報じられているようにG7での経済財政政策やテロ対策などに関する合意が玉虫色で、内容に目ぼしいものがほとんどなかったことが原因でしょうし、何といっても世界史が大きく動く一コマを世界中が目撃したと言ってよい、オバマ大統領の広島訪問のインパクトがあまりに大きかったことも一因でしょう。
 抽象的すぎるなどという批判はあるにせよ、オバマ大統領が行った核兵器廃絶に向けた演説は感動的なものでした。また、これにまつわる多くの被爆者や関係者の発言も、世界平和に向けた揺るぎない決意と、それを想起させる「ヒロシマ」という都市のストーリーを世界に力強く印象付けました。


 これと比べて、Don't Think, Feel. のようにしか表現できない伊勢神宮の教義では、そこから醸される平和メッセージも曖昧にしか世界には伝わらなかったのかもしれません。
 また、尽力された方々にはお気の毒ではありますが、広島の「平和」に比べても、伊勢志摩サミットにおける風光明媚な景色だの、真珠だの、松阪牛やアワビを使った贅沢な晩餐だの、乾杯用の地酒だの・・・といった地域産品PRは、うすっぺらいお国自慢といった印象しか与えません。
 プロモーションとしても戦略性が見通せないような気がします。海外メディアに大盤振る舞いした結果として今後、諸外国から伊勢志摩には大なり小なり注目が集まることは確実ですが、「平和」が核廃絶という理想に向けた歩みを続けていくという展望がイメージできるのに対して、「お国自慢」では、次に何があるのかと考えると二の矢・三の矢が見当たらないのです。

 このため、三重県が提唱しているのが「ポストサミット」というコトバです。サミット開催で集まった注目を一過性に終わらせず、実際に大きな経済的効果が開催地で実感されるまでプロモーションを続けていこうという考え方で、これはもちろんその通りだし、それ以外には考えられないのですが、問題は、それを誰が主体になってやっていくべきなのか、ということです。

 ここで再確認しておくべきと思いますが、サミットの事業予算は約93億円にものぼります。このうち、国による財政支援は約39億円を占め、一般からの寄付金も約5億円ほどありますが、約49億5千万円は三重県が単独で負担しています。しかもこのうち一般財源は約11億3千万円なのに対し、借金である県債が約33億円、さらに県の貯金からの繰越金も約5億円が拠出されています。このため三重県の単年度収支は来年度には赤字に転落すると見込まれており、財政が危機的な状況 ~リーマンショックの時のような、とまでは言いませんが~ であることは5月17日に開かれた三重県行財政改革推進本部員会議でも明らかにされています。

 今後の地域振興、産業振興にとって重要な「ポストサミット」ですが、県が財政負担をして各種の関連事業を行う余裕はありません。
 ここで覚悟を決めてほしいところなのが、サミットという国や県の巨額財政負担によるイベントに乗っかってきた伊勢・鳥羽・志摩地域の観光事業者であり、運輸事業者であり、食品の生産者や加工業者といった商工業者です。

 厳しい表現かもしれませんが、伊勢神宮の遷宮にしろ今回のサミットにしろ、外部のイベントに乗っかるコバンザメ商法は脱皮すべきです。
 日本全国、さらには海外の観光地、名勝地と渡り合うには質の高いサービス ~「おもてなし」などといった独りよがりの徒労ではなく、実際にそれで稼ぐための接客サービスです~ と共に、新しい商品やサービスの開発、提供方法の開発、市場の開拓といったイノベーション(創新、革新)は不可欠です。
 伊勢・鳥羽・志摩の観光業が、今までに果たしてどれほどのイノベーションを起こしてきたでしょうか。明治時代に真円真珠の養殖法を「発明」し、事業化した御木本幸吉くらいではないでしょうか?
 
 今必要なのは、大げさかもしれませんが、第二、第三の御木本幸吉です。
 不屈の信念の持ち主であったと同時に、早くから産学連携や知財制度の重要性を理解し、マーケティングを駆使して市場を海外に広めた彼は、政治家や行政機関は最大限利用し、活用しましたが、しかし決して依存していませんでした。
 是々非々のスタンスで、官の不条理とはとことん戦ったのです。
 伊勢・鳥羽・志摩に必要なのは、そのような「企業家精神」ではないかと思います。アントレプレナーシップを持つ企業家が輩出してくるような地域づくりに取り組まない限り、またまた行政頼み、政治頼み、イベント頼みの観光地のまま、競争力は低下していくでしょう。

3 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

次のイベントとして菓子博が控えており、その他にも国際会議を誘致していくと言っている
時点でイベント頼みの誘客から脱するのは難しいような。

匿名 さんのコメント...

GW明けからは、全国ネットTVで伊勢志摩関連特集番組が数多く組まれていました。
このブランドCMは、広告換算すると相当大きな額になるでしょうね。
50億円の価値があったかどうかは、いずれ百五経済研あたりが算出してくれるでしょう。

地元業界は、修学旅行や団体客需要に胡坐をかいて転んだ記憶を忘れてないですよね。
濱田さんらのおはらい町作戦で、うまく個人客をリカバーできたとは思いますが、今回の「サミット風」を生かすも殺すも、ご指摘のとおり、更に新しい価値を出せるかにかかると思います。

観光でちょっと興味深いのは、全国の1万数千人の警察官の口コミです。
長期滞在宿(日頃必ずしも混雑してなさそうな旅館?)には情も移ったでしょう。
なかなか情報発信し難い立場とは思いますが、そこは体育会系のノリで、ぜひ家族や友人を連れて遊びに来てほしいもんです。
そのためには宿の方も、先の長い「常連さん」を掴む工夫が大事ですね。

また、伊賀の酒造業界も、この僥倖をうまく使えるか、すごく大事な岐路ですね。
個別に明暗はあったでしょうが、もともとレベルの高い酒を出している地域です。
灘、伏見にならぶ産地ブランドを定着させるには、嫉妬を捨てた団結力が試されると思います。

長々と失礼しました。

匿名 さんのコメント...

一県民です

サミットや他のイベントがAKの集票かと思うと、アホらしくて・・
みんな気づかないのでしょうか?