2016年5月8日日曜日

問題の本質は「何人か」ではない

三重県移住・交流ポータルサイトより
 平成27年度における三重県の「空き家バンク」の成約数が79件となり,、前年度に比べて3倍も増えたほか、三重県外からの移住者も124人に上ったことが各紙で報じられています。(たとえばYOMIURI ONLINEはこちら
 中部経済新聞によると、空き家バンクとは「空き家を売却もしくは貸したい所有者」と「空き家を購入もしくは借りたい定住希望者」を結びつけるために、行政が地域の不動産事業者と情報を共有して取り組む制度であり、要するに、Iターン・Uターン希望者に対して地域の自治体がふさわしい空き家を紹介し、不動産業者が家主、移住者双方への生活上のアドバイスも含めて売買や賃貸借の斡旋をする、という制度のことです。
 三重県内には29の市町があります(はんわし注:三重県には村はないため)が、このうち18の市町が空き家バンクを活用しており、なかでも高齢化率が高い熊野市や尾鷲市など県南部の市町が積極的であり、空き家バンクの成約も7割は県南部が占めているとのことです。(4月28日付け)

*空き家バンクがあるのは、いなべ市、東員町、四日市市、鈴鹿市、亀山市、津市(美杉地域)、松阪市(飯南・飯高地域)、多気町、大台町、鳥羽市、志摩市、南伊勢町、大紀町、尾鷲市、熊野市、紀北町、御浜町、紀宝町の10市8町

 三重県は平成27年4月、東京・有楽町の東京交通会館にある「ふるさと回帰支援センター」の中に「ええとこやんか三重 移住相談センター」を開設しています。
 今年3月末時点で750件もの相談を受け付けたそうで、これを見る限り開設の成果は一定出ているように思いますが、県としては同センターの設置がどれほど移住に結びついているかを把握するため、今回初めて移住者数を調査したとのことです。

 このように県自身が成果を調査するというのは非常にいいことです。
 移住促進のような施策、つまり、地域振興系とかまちおこし系の施策というのは、誰しも事業の意義自体は否定できません。やらないよりはやったほうがいいに決まっています。
 なので多くの場合はそのことに安住してしまい、本当の定数的な成果については検証自体がされないことも多いのです。今回124件の移住という成果が明らかになったことは、これらの問題に関心を持つ人々皆で共有可能であり、さらに施策を有効に進めることに役立つでしょう。

 ただし客観的に見て、124人が多いか少ないかという問題はあります。
 実際に人口の統計を見てみると、三重県は平成27年から28年にかけて1年間で約4600人も人口が減少しています。(平成27年1月1日と平成28年1月1日の推計人口の比較)
 これには、転入や転出 ~空き家バンクが対象にしているような移住も含めて~ といった社会動態のほか、死亡と出生による自然動態も含まれていますが、自然動態による人口減少が量的に圧倒している状況では、表現は悪いですが、少々の移住があっても焼け石に水であることは客観的な事実だと思います。

 もちろんここでお断りするまでもないことですが、わしは、だから三重県への移住促進や空き家バンクに関わっている方々の努力を否定するものではありません。皆さん非常に努力されていると思うし、繰り返しますが、やらないよりやったほうがいいのです。
 なので成果評価の本質は移住が何人かではなく、費用対効果、つまりこの業務に従事している公務員の決して安くない人件費も含めて、投入したコストを移住によってもたらされた効果が上回っているか、という点と、空き家バンクをこれからも進めていくことでさらに地域は活性化するという展望が描けるかという二点です。

 残念ながら、コストに関しては報道は触れられていません。東京都心に事務所を構える家賃だけでも相当なものでしょうが、おそらく移住促進に必要な費用のほとんどは、国からの地方創生交付金として自治体に払われている財源が使われているので、国に対する成果報告(KPI)とは別に、本当の意味での自治体独自での事業の収支計算はされていないものと思われます。
 おそらく当然に赤字でしょう。
 この赤字が戦略的な赤字であって、長期的に見て18市町の活性化につながっていれば政治的に許容されることになるわけです。
 しかし、国の財源がなくなったら、空き家バンクが経済的に自立するビジネスモデルとして成り立つ市町はほとんどないでしょうから、そもそも施策として持続していくのかも疑問がないわけではありません。

 マスコミには、この点からもぜひ切り込んで欲しかったと思います。しかし地方支局の記者の多くは(わしが思うに)地方公務員以上にエモーショナルなので、地域を活性化する神聖な事業にコスト比較などを持ち込んではいけないという思い込みがあるか、行政についてのコストという視点そのものがそもそもないのかもしれません。

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