2016年6月16日木曜日

「ウナギ味のナマズ」が新宮市で養殖開始か

 紀南新聞ONLINEによると、和歌山県新宮市にある新宮港埠頭株式会社が同市内において、有路昌彦・近畿大学教授らが開発した「ウナギ味のナマズ」の養殖を計画しているそうです。
   現在開会中の新宮市議会で市当局から報告されたもので、計画の詳細についての発表は秋ごろになる見込みであるものの、現状の田んぼの土地を農地転用し、1.44ヘクタールの敷地で養殖事業の実施を目指すとのこと。
 新宮港埠頭(株)は同港での荷役を受け持つため昭和53年9月に設立された株式会社。新宮市が資本金の半分に当たる500万円を出資する、いわゆる「第三セクター」です。

 経営は順調で、平成27年度は1億2499万円もの利益を上げているとのことですが、さらなる地元貢献や雇用拡大を目指すために事業を多角化する方針であり、その中で近大ナマズ養殖が浮上してきたようです。

 「ウナギ味のナマズ」は、ヨーロッパウナギの輸入規制やニホンウナギ稚魚の激減などでウナギの価格が高騰していることを背景に開発が始まったものだそうです。


 近大の資料によると、日本産のナマズ(マナマズ)は種苗生産技術が確立されているため完全養殖が可能で、ウナギのような資源的問題はありません。しかし、食味はやや泥くさく、脂質もほとんどないため、味はウナギとは程遠いものでした。
 有路さんは、天然マナマズのなかでも産地によって脂質を多く含み、泥臭さが少ない個体があることを発見したほか、食味の調整には「餌のコントロール」と「水質のコントロール」の2点が重要であることを特定し、「ウナギ味のナマズ」の開発に成功しました。

 昨年11月には鹿児島県に「ウナギ味のナマズ」の養殖を行うベンチャー企業 日本なまず生産(株)が設立されていますし、今年6月からはLCCのピーチ・アビエーションで機内食に提供されるなど産業化が着実に進んでいます。

 新宮市議会では、議員から「米作りと競合するのでは」、「新宮港埠頭(株)の本来の姿ではないのでは」、「しっかりと事業計画を議会に示して議論すべき」などの意見が出るなど、明確な合意形成には至らなかったようですが、もし仮に事業がスタートすれば全国的に注目が集まりそうです。

 「ウナギ味のナマズ」の産みの親である有路さんは「臭わないブリ」も開発しており、新宮市内には有路さんが社長を務める輸出用養殖ブリ加工会社も設立されています。新宮市とは結びつきが強いことも、ナマズ養殖事業には強い味方のようです。
 課題は、予定地が農地のため、転用許可と農振農用地の解除手続きが必要なことで、今しばらく紆余曲折があるかもしれません。

 それにしても、完全養殖マグロである「近大マグロ」が大ヒット商品となっているなど、近畿大学の研究のユニークさ、産業化を確実に目指す実学志向は驚くべくものがあります。文科省から「知の拠点」に指定され、地方創生に寄与するなどと自称している大学(地方大学)は多いのですが、このような大成功を収めている例は極めて少数です。
 研究シーズもさることながら、研究継続のバックアップ体制や、産業化のための支援 ~ベンチャー業界で言うところの、魔の川、死の谷、ダーウィンの海をいかにくぐり抜けたか~ について、子細な検証と、横展開が必要ではないかと思います。

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