2016年7月2日土曜日

コピーキャットとしてのビートルズ

 昭和41年(1966年)にザ・ビートルズが来日公演をしてから今年で50周年に当たるということで、テレビやラジオ、雑誌などでさまざまな特集が組まれていました。
 その当時のプロモーターや実際にメンバーを取材したジャーナリスト、さらには史上空前と言われた大警備体制を陣頭指揮した元警察官僚まで、さまざまな立場の人が懐かしい思い出や、知られざる秘話を披露していたのをわしも興味深く見聞きしていました。
 それにしても、星加ルミ子さんや湯川れい子さんなど、今も活躍されているのを見ると、本当にすごいなと思います。わしが80歳になってポップカルチャーの話ができるような感性を持ち合わせているとはまったく思えないので、むしろこの人たちのバイタリティが印象深かった50周年でもありました。
 まあ、それはさておき。
 わしもすべてのメディアを見たわけではありませんが、ビートルズの音楽性とか音作りのルーツについて深く掘り下げた番組はそれほど多くなかったような気がします。ビートルズは間違いなく天才的な空前絶後のイノベーターだし、才能にも恵まれ、努力も重ねていたのでしょうが、必ずしも当初からオリジナリティに溢れていたのではなく、むしろ他のアーティストのナンバーを積極的にカバーしコピーする、コピーキャットとしての非凡さも注目すべきではないでしょうか。


 実際に、ビートルズの初期のアルバムには、カバーナンバーが数多く入っています。日本公演の時にオープニングナンバーとなった「ロックンロールミュージック」がまさにそうで、他にもチャック・ベリーやシレルズ、といった黒人ロッカーやR&Bグループの楽曲を多く取り上げています。
 また、白人の作品も多くカバーしていて、~なにしろ、彼らがロックを始めたのがエルビス・プレスリーに憧れたからなのは、メンバー自らが後に語っています~ カール・パーキンス、バディ・ホリーなど白人ロカビリーの曲はアルバムにも入っています。
 さらに独特なのは、カントリー&ウエスタンのような、角張ったロックンロールとはある種毛色の違う牧歌的なナンバーも取り上げていることで、中でもビートルズに強烈な影響を与えたのが、兄ドナルドと弟フィリップ(C&Wなので、もちろん2人とも白人)によるエヴァリー・ブラザーズだと言われています。

 多くの識者が指摘するように、ビートルズのコーラスワークはエヴァリー・ブラザーズを彷彿とさせるものが多く、アルバムに直接はカバー曲は収録されていませんが、やはり東京公演での演奏曲目としてトリビュート番組でたくさんかかっていた「ベイビーズ・イン・ブラック」はモロにその作風ですし、この写真に掲げたビートルズ通算4枚目のアルバム(昭和39年発表)である ビートルズ・フォー・セール は「エブリー・リトル・シング」とか「パーティーはそのままに」とか、まるでもうそっくりさんの世界です。
 
 しかし、このアルバム以降、ビートルズは次第にアーティスティックになっていき、ジョン・レノンの哲学的な詩の世界、ポール・マッカートニーの卓越したメロディーメーカーとしての才能がオリジナリティを完全開花させるようになります。
 その凄さが並大抵ではないので、ついついそういったカバー作品とか、トリビュートなのかパクリなのかといった次元の話は後ろに隠れてしまいがちです。
 一つ言えるのは、ありきたりな表現ですが、アンテナは感度を高くして全方位に向け、あまり型に嵌めこむのではなく、面白そうだと思ったものはどんどん取り入れていくセンスとか柔軟性とか、そんなものが大事なのではないかということです。

 このアルバム、ビートルズ・フォー・セールは、大道芸というか、クラブのダンス伴奏音楽としてのロックンロール・バンドの頃のビートルズが連想できて、わしは好きな一枚です。
 このあと、彼らはスーパーアイドル以上の、偉大な伝説のロック・アーティストへと踏み出していきます。ビートルズ・フォー・セールで感じさせてくれたような等身大の魅力は失われてしまったのでした。

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