2016年7月19日火曜日

回りまわって笑えない話

 滋賀県立彦根球場の照明設備が1993年(平成5年)の設置以降、たった4回しか使われていないことが判明しました。
 滋賀県によれば照明は昼間の試合が延びた時の薄暮対応であり、ナイトゲームのように点灯を前提とする試合の際は地元自治会と事前協議するとの覚書が交わされているため、県としては夜間利用を促してこなかったとのこと。
 この照明は彦根球場が平成5年に約28億円でリニューアルされた際に6基設置されたもので、多額の税金を要した設備が活用されていない現状に批判が強まっており、県は解決に向け頭をひねっているそうです。(7月15日付け京都新聞) 
 記事によれば球場に隣接する住宅地は20~30メートルしか離れておらず、照明塔の設置を巡っては、県と地元自治会との協議が難航しました。そこで彦根市が仲介に入り、平成2年に県と自治会が覚書を交わして、やっと大規模改修に着手できたという経緯があったようです。
 念のためにグーグルマップで見てみると、緩衝となる緑地はなく、細い道路を挟んですぐに住宅が建ち並んでいます。これは照明の設置工事計画そのものに無理があったと考えるべきでしょう。


 利用が低迷していることについて6月定例会議で県議から対応を糺された三日月滋賀県知事は「長年にわたる利用制限は県民にマイナス。地元理解を得るため速やかに関係先と協議を進めたい」と答弁したそうです。
 京都新聞は、昨年度に照明球を最新型に取り換えた皇子山球場(大津市)は年間80日ほどのナイター使用があり、わかさスタジアム京都(京都市右京区)でも昨年度に計111日の利用実績があること。
 また、近隣住民への配慮に工夫を凝らす球場の例として、6基の照明塔を原則としてそれぞれ「半灯」や「4分の1灯」のように部分点灯している豊中ローズ球場(大阪府豊中市)の例や、地元向けイベントや日帰り旅行などを定期的に催し良好な関係づくりに努める紀三井寺球場(和歌山市)の例なども紹介しています。

 しかし、まあ、作ってしまったものは仕方がありません。難しい話かもしれませんが、地元の理解も得ながら試行錯誤して運営していくほかないでしょう。

 ただ、わしは同業者として、当時の滋賀県の担当者を笑うことができません。思い出してほしいのは覚書が交わされた平成2年は、バブル経済崩壊の直前であり、国や地方自治体の税収が急増し、いわゆる「バブリーな公共施設」の開発や建設が全国各地で進められていた時期であったことです。
 無茶とも思える照明設備の建設も、カネがじゃぶじゃぶ余っている中で、「まあ、作っとけば?」みたいな感じで、かる~く決まってしまったのではないかと思います。繰り返しますが、バブル景気の真っ最中のこと、官民問わず、万事このような感覚で物事は決まっていたのです。
 
 平成7年に株価が大暴落し、バブル景気の終焉が誰の目にも明らかになりましたが、しかしまだこのころ、多くの企業や地方自治体にそれほどの危機感はありませんでした。
 一方で、政府は景気対策の必要性から公共投資(普通建設事業)を増大させ、地方自治体に対しては補助事業はもちろん、起債(借金)による地方単独事業も強く要請するようになります。
 
内閣府  経済財政政策関係公表資料 今週の指標No.384
 彦根球場がリニューアルされた平成5年(93年)はまさに公共投資が急増してきた、その年なのです。
 しかしながら、公共投資の増加が景気を回復するにはほとんど役に立たず、日本は「失われた20年」に突入していきます。
 この時、冷静に「この照明設備は本当に必要なのか? 工事はムダではないのか?」と判断できた人がいたでしょうか。多くの国民も景気対策としての公共事業を歓迎しました。今、県の姿勢を追及しているのは県会議員ですが、おそらくこの当時、スポーツ振興と景気対策のため積極的に公共工事を推進すべきだ、と誰より強く主張していたのは、おそらく県民代表の県議会だったのではなかったでしょうか。
 つまり、彦根球場の現状は、誤った経済対策、地方財政対策 ~しかも県民が支持し、県議会も承認した~ のツケが回りまわってきた結果であって、今対応を迫られている県庁職員はお気の毒としか言いようがないのです。
 
 

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