2016年7月3日日曜日

商標出願の10%は同一人物によるもの?

 群馬県太田市が、今年の秋のオープンに向けて現在建設中の市美術館・図書館の名称について、当初は「おおたBITO」という愛称を予定していたところ、今年1月になって民間企業がすでに「BITO」という商標登録を申請していたことが判明し、市は「おおたBITO」の名称使用を断念したことが報じられていたのをわしもかすかに記憶していた気がします。実はこの太田市の施設、ロゴマークをデザインしたデザイナーが、東京オリンピックのロゴの盗用疑惑が報じられたその人であったことから、やはり昨年の秋にロゴマークの採用を中止しています。商標にしろ、デザイン(意匠)にしろ、いわゆる知的財産権に関して、地方自治体の意識や知識は十分ではありません。太田市の例は極端な例でしょうし、事前に問題を把握したうえでとった対応としては、それなりに適確だったように思います。
 そんなことを思い出したのは、朝日新聞に「商標権のパテントトロール」とでも言うべき人物のことが書かれた記事を読んだからです。(7月2日朝刊 ニュースQ3 商標出願 1人が「乱発」て、あり?)
 この記事によると、1年で1万4786件の商標出願を特許庁に対して行った会社とその代表者がいるとのこと。この2者による出願は、国内の全商標出願数の約1割をも占めています。


 ちなみに、この会社(ベストライセンス(株))と代表者(上田育弘氏)は、「リニア中央新幹線とか「民進党」、「MIRAI」、「MY NUMBER」といった商標も出願しており、MOBILEとかWATCHの頭に、AからZまでを付けた数十種類の商標も出願しています。

J-PlatPat より
 太田市が予定していた「おおたBITO」も、特許情報プラットフォームによると平成26年3月3日にベストライセンスによって「BITO」という商標が出願されており(商願2016-023169)、先願者として現在特許庁の審査待ち状態であるため、この審査の結論が出るまで第三者がこの商標を勝手に使うことはできません。

 一方で、この記事によると、ベストライセンス社などは登録のために必要となる特許料への手数料を大半の出願で支払っていません。所定の支払いを行わないと出願は半年程度で取り消されますが、その間は審査待ち状態となるため、後続の商標使用希望者に対する一種の牽制となります。

 朝日新聞は上田氏に大量出願と手数料未払いの真意をインタビューしていますが、「将来自分で使う、他人に権利を譲渡する、先に出願しておくことで権利を仮押さえする3つが狙い」で、「商標権が欲しいという人が現れればビジネスになる」と売買目的も否定しなかったとのこと。手数料を払わないのも、「権利化してメリットがあるものだけを厳選している」ためだそうで、知的財産権制度の趣旨から見ると、やはり問題がある姿勢ではないかとわしは思います。

 特許庁もこの事態を重視しており、5月中旬にホームページで、「一部の商標登録出願人が、他人の商標の先取りとなるような出願を大量に行っているが、取り消される場合もなるので、商標が第三者によって先願されていても、自身の商標登録を断念するなどの対応をされることのないようご注意ください」」という内容の、異例の呼びかけを行いました。
 しかし出願そのものを法的に規制することは難しく、即効的な対策はないようです。

 このブログでは何度も取り上げていますが、地方自治体が建設する施設、開発した特産品、運営する事業やサービスの商標は、先の商標権を取得(出願)している者とバッティングし、権利の侵害となる場合があります。実際には、特許庁でも地方自治体などによる公益的なマークが出願された場合などは却下することが多いようですが、先願者といったんトラブルになると、時間も費用もかかることになってしまいます。

 この意味でも、先行する商標や意匠の有無といった知的財産権のリサーチは、弁理士など専門家の力を借りて十分に行っておくべきではないかと思います。

■特許庁  自らの商標を他人に商標登録出願されている皆様へ(ご注意)(平成28年5月17日)

■はんわしの評論家気取り  「湯〜トピア」は商標侵害(2015年2月20日)

0 件のコメント: