2016年7月5日火曜日

2つのテロに通底する狂気

 バングラデシュの首都・ダッカの中心部で、現地時間の7月1日夜に発生したレストラン襲撃テロ事件の犯人が、高学歴で裕福な若者たちだったことが波紋を呼んでいます。
 日本人7人を含む20人が死亡したこの事件の実行犯は、20歳~28歳のバングラデシュ人の男7名。この中には一流大学を卒業した後、マレーシアの大学に留学した者や、授業を英語でする学費の高い地元校の卒業生もおり、テロ現場でも外国人には英語で会話していたとのこと。
 捜査当局によれば実行犯グループはバングラ国内のイスラム過激派組織「ジャマトゥルムジャヒディン・バングラデシュ」のメンバーで、現時点ではISやアルカイダなどの国際テロ組織とのつながりは不明です。
 が、ISでも、ヨーロッパ在住の裕福で高学歴の若者がシリアなどに密入国して戦闘員になる事例が後を絶たず、なぜこうした若者たちが卑劣なテロ行為に参画するのかは、世界的に深刻な問題となっています。
 しかし、わしと同年配の人間なら、ほんの十数年前、日本でも全く同じ事例があったことにすぐ思い至るはずです。
 批判者の殺傷事件や、松本サリン事件、地下鉄サリン事件などを起こしたオウム真理教を名乗る狂気の宗教集団(カルト宗教)の事件です。


 オウム真理教でも、「教祖」を名乗る首魁を取り巻く子分たちは高学歴者で固められていました。
 ざっとネット検索しただけで

・オウム真理教団外報部長(早稲田大学大学院理工学修士課程修了)
・オウム真理教団科学技術省大臣(大阪大学大学院理学修士課程修了)
・オウム真理教団法務省大臣(京都大学法学部卒・弁護士)
・オウム真理教団治療省大臣(慶應義塾大学医学部卒・医師)
・オウム真理教団建設省大臣(神戸大学農学部卒、大阪市立大学大学院修士課程修了)
・オウム真理教団厚生省大臣(京都大学大学院医学研究科博士課程中退・獣医師)
・オウム真理教団第二厚生大臣(筑波大学大学院化学研究科修士課程修了)
・弁護士一家殺害事件実行犯(京都府立医科大学医学部卒・医師)
・地下鉄サリン事件でのサリン散布実行犯(東京大理学部卒)
・地下鉄サリン事件でのサリン散布実行犯(早稲田大学大学院理工学修士課程修了)
 
 のようなデータが出てきます。もちろん、これは氷山のごく一角であり、この下には教団を形成している無数の「出家」信者がおり、そのうちの少なくない者は真面目に勉強していた学生だったのです。
 理学のように純粋に理論的な学問を修めた者が、なぜ善悪の判断もできず、常人ではなし得ないような残虐な犯罪を実行したのかは大きな衝撃をもって受け止められました。事件が明らかになった当時も、いわゆる一流大学や大学医学部の入試はあまりにテクニカルになり、勉学の基礎となるべき倫理観の育成が小・中・高でないがしろにされてきた結果だとか、大学教育においても何のために学ぶのかの根本を考えるような教養科目がない、とかが原因として指摘されていました。つまりは、日本の高等教育システムの構造的な失敗だったわけです。

 しかし、教団の幹部のほとんどが逮捕されると、わずか数年の間にオウム事件への社会の関心そのものが薄まってしまったことは否めませんでした。
 首魁が卑劣にも、一貫して罪状の認否も事件への関わりも、動機も証言しないまま裁判は結審してしまったため、真実がほとんど明らかにならなかったためもあるでしょう。(平成18年に死刑が確定)
 ただ、わしが思うに、多くの教育関係者も、なぜ高学歴者が社会的な義務を放棄し、良心を捨てて愚行に走ったかを徹底的に原因究明したようには見えません。ましてや十分な対策を講じたようにも思えません。
 もしこの時に社会で真摯に議論していれば、今回のようなイスラム過激派のテロ事件にも、日本は一定の知見を世界に提供できたのではないかと思います。

  

0 件のコメント: